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風と火と、七色の魔法

作者: アマネ
掲載日:2025/11/22

noteマガジン「アマネノショート」からの出張短編です。本作含め1話完結の短編集です。


https://note.com/wise_nerine4753/m/m920a32bd329f


本作については魔法体系のみ設定済みで、ストーリーについてはほとんど手探りです。

機会があれば長編に書き直すかもしれません。

 目を閉じ、燃え盛る炎をイメージし、吐息のような小さな声で呪文を唱えると、フォイアの精霊がゆっくり集まってくるのがわかった。

 ジリジリとした熱を感じて目を開くと、目の前に立てた指先に、拳ほどの大きさの炎が凝縮されていた。

「……よし」

 はるか先にある、練習用の的を目掛け意識を集中し、指先を前に思い切り振りかざし叫んだ。

「ヴルカン」

 その瞬間、指先の炎はその場で大きな爆発音と共に、黒煙を吐き出し弾け散った。

 爆発の勢いで、少年は地面に叩きつけられように大きくうしろへ転がった。

 あたりは一瞬で煤でまみれ、遠くの的は今や遅しと少年を見つめているようだった。


「いつまでヴルカンにこだわるの」

 後方からめんどくさそうな声がしたかと思うと、煤を避けながら女の子がひょっこりと現れた。

「……痛え。まずは体を心配しろよな。くそ」

 少年は膝をついてゆっくりと起き上がり、体についた煤をパンパンと払った。

「お前んところはいいよな。血が優秀だからさ」

 女の子はそれを聞いた途端顔色がわずかに曇った。

 少年は少し焦って、先ほどの言葉をかき消すように咄嗟に続けた。

「ーーいや、血だけじゃないのはわかってる。俺の努力が足りないんだ。きっとそうだ」

 そう言って、軽くぴょんぴょんと飛び跳ね、体を整えてから、指を立て目を閉じた。

 今度は別の精霊たちが指先に集まってきたが、それは形になることなく、ふわっと七色の光を放って散った。

「フォイア以外だとさ、精霊たちが種族も無視して全部集まっちゃうんだ。こんな風に」

 女の子は不思議そうに散っていった精霊を見つめた。

「何、今の……綺麗。私初めて見たそんなの。

 綺麗なだけかもしれないけど、私は好きだな今の魔法」

 散った精霊を集めるように、女の子は指先で空間を回すようにクルクルと小さく円を描き、小さな声で呪文を唱えた。

 指先にはヴィンドの精霊が一瞬の大きな風と共に集まり、小石ほどの大きさに凝縮された風の渦が出来上がった。

「シルヴェストル」

 声と同時に、女の子は指先を空に向けて振り上げた。

 途端に小石ほどだった風が大きな唸り声をあげて、あたり一面の落ち葉や、溜まった煤を空に放り投げた。

「私の魔法ほどじゃないけどね」

 少年は不貞腐れた顔で、綺麗になったあたりを見回した。

「どうなってんだよ。相変わらずすげえなお前」

 女の子は自慢げな顔のまま、胸の辺りをポンポンと叩き「血が優秀だからね」とイタズラっぽい顔を向けてニヤニヤと笑って見せた。

 少年はバツの悪さを隠すようにフンと顔を逸らした。

「俺から始まる血だってあるんだよ」

 少年は自分の指先を見つめ、そのまま空を切って前方に投げる仕草をした。

「ヴルカン。いつか見せつけてやるさ」

 少年はにこやかに笑い空を仰いだ。

 その目は煤が飛んで行った空よりもはるか先を見つめていた。

感想などいただけると大変嬉しいです。

別作品連載中ですので、そちらも応援いただけら幸いです。

よろしくお願いします。

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