どうやら淡い恋心に目覚めてしまったみたいだ
私たち女子は小中学校の同級生の4人組で30代前半で独身で彼氏なし。
定期的に集まると言っても年に1,2回で今日はその日だった。
皆、仕事で忙しいのでなかなか休む機会がないので、年に1回でも会えれば良い方だと思う。
恒例の現状報告会。仕事の悩みなどを打ち明ける会でもある。
それぞれに話題が上がり、いよいよ私の番になった。
「実は年下の後輩が退職することになって何かプレゼントをあげようと思うんだけど」
「予算はどれくらい?」と聞いてくれる。
「1000円以上、2000円未満?よく相場がわからなくって」と私が悩んでいると
「それくらいが妥当だよ。だったら実用的なものは?例えばボールペンとか?」
「ハンカチとかは避けた方がいいね。別れを連想させて縁起が悪いから。そういえば彼女がいる?彼女が居たら嫉妬してしまうかもしれないから手元に残らない方がいいかな。」
「食べ物の好き嫌いはある?」次々とアイデアを教えてくれる友人たち。
「えっと、彼女は多分いるらしいです。市販のお菓子は好きみたい。あとお茶も。」と答えると
「お菓子か、高級なのはどう?百貨店に売っているような?」
「そうだね、それがいいよ。」
「では、よく考えてみるね。」
友人たちのお陰でこの日はお開きとなった。
月日は流れ、後輩も退職して次の定期的に集まる日が。
待ち合わせのカフェについて一番乗りだった私。数分もしない内に全員が揃った。
「そういえば、後輩のプレゼントどうだった?うまく渡せた?」
「うん、結局、無難な高級ボールペンにしました。なんとか渡せたよ。」
「そっか、プレゼント無事に渡せてよかったね。」と言ってくれた。
「どんな感じの人だったの?」
「背が高くて優しくて思いやりのある人、かな」言葉を慎重に選んで答えると
「写真は?持ってないの?」
「持ってないよ。」
「名前は?」
「個人情報だから言えない。」
「そうなんだ。写真見たかったな。」と明らかに残念そうな口ぶりだった。
この日もまた次に会う約束をしてお開きになった。
そして3か月後。定期的に集まる日が。この時、私は急な展開になることをまだ知らない。
この日も定期的な雑談などをしていた。そんな時、
「そういえば、優紀ちゃん男の人と歩いていたよね?あれって彼氏?」
いつの間に?と思っていると
「背が高くて、かっこいい人だったね。確か名前は大樹さんって呼んでたよね?」
その瞬間、飲んでいたお茶でむせた。なんと私の後輩の名前と同じだったから。
「もしかして実里ちゃんの後輩君だったりして?」
まさか、そうでないと否定してと思いながら優紀を見ると、顔を赤らめて下を向き黙ってしまった。
「まさか、そうなの?」どうして?という疑問符が出てくる。
「そうなの。実里ちゃんの後輩君とお付き合いすることになりました。」
「「おめでとう!!」」
「お、おめでとう」一呼吸おいてお祝いの言葉を述べたものの複雑な気持ちになった。
「どこで知り合ったの?」と他の友人が聞いてくれた。
「実はこの前、実里ちゃんが働いているお店に行ってみたんだよね。」と優紀が衝撃の事実を口にした。
「えっ?」
優紀が言うには私の後輩君が気になり、私のいない時間を見計らってお店に来たという。そして親睦を深めたということだった。
これには唖然として開いた口がふさがらなかった。私が沈黙していると
「いいの?私がお付き合いさせていただいても?告白するのならチャンスをあげるよ?」
と優紀に上から目線で言われた。後輩君が彼女がいなかったから優紀と付き合うことにしたのもショックだったがなにより私が淡い恋心を抱いていた後輩君と付き合っていたことを隠されていたこともショックだった。
「まだ、彼に未練があるんでしょ?」と畳みかけてくる優紀。
私は後輩君が退職してから会ってはいないがラインだけはしている。
気が付けば「うん、この想いを伝えたいから少し待って」と口走っていた。
事態を見守ってくれていた他の2人の友人もほっとしたような顔つきになった。
その日はどうやってかえったのかよく覚えていない。これが夢ならどんなに良いだろうと思った。
私は後輩君にどうやって想いを伝えようかと考えていて無意識にラインを開いていた。
そしていつもは使わない電話のボタンをタップしていた。