表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

みらい

「・・直哉」


私は誰にも聞こえないような声で彼を呼んだ。彼は大きく目を開き、私を見ている。


「えっ・・俺の名前、なんで知ってんの。も、もしかして、華凛の友達?」


友達、

まあ、似たようなものだと言ってしまえばそれまでだけど。でも、それだと事態が悪化するかもしれないな。

私が黙っていると直哉が口を開いた。


「もしよければ、一緒に華凛を探してくれないかな?一人だとつらくてね」


「・・・・」


正直、面倒だと思った。でも何か行動しないことには、この世界から出ることはできないのだろうとも思っていた。

華凛を探すシーンは確かにあった。直哉が自力で塔の扉をこじ開けて、檻の中に閉じ込められた華凛を救出。

私は自分の記憶を再確認する。華凛はあの傘の中、頑丈な檻の中。


「あの傘の中・・」


教えたほうが早いと思った。


「ほ、本当に?ありがとう、キミ!」


直哉はポンポンと私の肩を軽く叩いた。

「じゃ・・キミも行こうよ。一人で女の子がこんな場所にいるの・・危ないよ。行こう。」


「・・・・いい」


「うんうん。良かった。じゃあ・・・・」


「そうじゃなくて・・・・嫌って意味よ。」


べつに自分が動かなくてもいいのかも。そのままシナリオ通り、二人がちゃんとハッピーエンドを迎えれば、きっと終わりよ。

私は、そう結論づけた。


「なんで?!」


「なんでって・・・・・・」


面倒くさい、と一言で済んでしまう簡単な質問だった。私は彼を《知っている。》なぜなら私はあのライトノベルの内容を覚えているから。彼は、直哉はこの街の生まれだ。華凛もそうだ。

その幼なじみが今、行方不明。心配に思う気持ちが大きくなるのは当然だろう。

ちなみに、あの傘の中には無数の罠が張り巡らされていて、二人は悪戦苦闘することになる。

だから私は一緒に行くことを拒んだのだ。

仕込みボウガンから、鉄の処女から、審問椅子まで描写されていた気がする。


「・・・・死にたくないから・・・・」


「・・・・そう」


意外な彼の反応に少し驚いた。てっきり彼のことだから、また冗談だと真に受けないと思っていたのに。


「・・でも、アイツとは幼なじみだし、やっぱり心配だから・・」


コツンッ


軽い、高い音が街に響いた。例えるなら『金属音』。

彼は辺りを見回してそれなしき物を手にとった。

その瞬間、


パシッ


私の取り、走り出した。あの傘の方へ。


「ちょっ・・何?なんなのよっ」


「いいから走って!」


彼は走りながら叫んだ。呆気にとられたような気がして何が起きたのかわからなかった。


「じゃないとキミ・・・・」


彼は言った。


「本当に死んじゃうよっ!」


と。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ