部長はトイレに行きたくて【文芸_コメディ】
ジャンル:文芸_コメディ
タイトル:部長はトイレに行きたくて
https://ncode.syosetu.com/n1197io/
◇作品紹介◇
私は絶望を覚えていた。
危機に瀕したプロジェクト。システム開発部との組織的な軋轢。連日に渡る長丁場の会議と、責任の所在を押し付け合う同僚たち。会社中に緊迫した空気が流れる中、私にとって喫緊の課題はただ一つ。
――トイレに行きたい。
私は子どもの頃、まさかミケ猫先生の短編小説集を枕にして寝るような少年であった。擦り切れるほど読んだ『吾輩は猫じゃニャいです』には、私の人生哲学が全て詰まっていると言ってもよい。この主人公のように、人のために真っ直ぐ行動できる男になりたいと思って生きてきたのだ。人生で悪いことなど何一つしていない。だから。
――今、トイレに行かせてほしい。
昼食に食べた牡蠣フライカレーがいけなかったのか。突き刺すような強烈な便意に、私の額には脂汗を浮かび、背筋にはゾクゾクと悪寒が走っていた。
【投稿日】2023/12/23
【URL】https://ncode.syosetu.com/n1197io/
(シリーズの「まさかミケ猫 全ジャンル傑作選集」リンクから全ジャンル踏破企画の全作品を辿れます)
※以下、作品のネタバレを含みます
みなさんこんにちは、ホッケと熱燗で一杯やるだけの飯テロ動画がSNSで流れてきたのをブクマして、たまに夜中に見てます。まさかミケ猫です。
今回は「文芸_コメディ」というジャンルの傑作を書いてまいりました。人にウケるかは全く分からないんですが、書いた自分はゲラゲラ笑ってましたね。推敲しながらあれこれこねくり回すのも楽しいジャンルでした。
◆発想のきっかけ◆
前回の最後でジャンルのルーレットをした時に、実はビビッと頭に浮かんでいた作品がありまして。むかし書いた自作なんですが。
●勇者「俺に回復魔法を使うな」
これは私が小説を書き始めてすぐの頃、修行のためにひたすら短編を量産してPDCAを回してた時代の作品なんですけどね。
内容としては「勇者がウンコを我慢しながら魔王と戦う話」という、それはまぁどうしようもないモノで、仲間から回復魔法を受けると新陳代謝が活発になってウンコ欲が促進したり、賢者の氷雪魔法がお腹に響いて脂汗を流したりしながら、傍目からは格好良く見えるように戦っていくという話になります。
読み返すと粗は目立つんですけどね。でも今の筆力だったら、ファンタジーで脚色しなくても面白い作品を書けるんじゃないかと思って、現代舞台で部長にウンコを我慢させようってなったわけです。ごめんね部長。
◆こだわりポイント◆
仕掛けとして、今回は構図の「競合」を意識して組み込んでみました。
少しだけ説明すると……作品の構図を思い描いた時に、キャラ同士の目的が相反するように意図して配置してみたんですよ。今回で言うとトイレに行きたい部長から見た時に「議論をしたい部下」「感謝をしたい女子社員」「会議を引き伸ばす他部署の部長」が全部敵になるって構図です。
これはたぶん、長期連載などで仲間キャラ同士の日常のワチャワチャを書く時にも使えるテクニックだと思うので、扱えるようになっておくと便利じゃないかなーと個人的に思っています。
ボケ役やツッコミ役を用意するドタバタ劇は本作ではしっくり来なかったので、今回はやめにしました。なので、わりと構図だけでコメディを書いた感じになりますかね。
◆苦労したポイント◆
今回はプロットを最小限に、むしろプロットに書かれていないオフザケをどこまで突っ切って遊べるかが苦労したポイントだったと思います。
作り方はSFに近いんですが、推敲モードの自分が「ここはもっとふざけろよ!」と命令してくる感覚はコメディジャンル特有の執筆体験だったかなぁと思います。コメディだって割り切って書いたからこそ、作品の随所であんな暴挙に出ることができたんだなぁと。楽しかったぁ。
個人的に得るものの多かった作品づくりだと思いますし、みなさんも「コメディを書く!」と割り切って一作品でも書いてみると、他の作品を書く時のぶっ飛び具合が強化されるかもしれませんよ。おすすめです。
◆「コメディ」の魅力◆
世の中、楽しいキャラっていっぱいいますよね。キリッとした顔で天然ボケをぶっかます子とか。ゆるゆるの会話しておきながら急にクレバーに斬り込んでくる奴とか。鋭いツッコミ力でボケの面白さを引き立ててくれる奴とか。
そういう楽しいキャラを主軸に据えて、どうやったら彼ら彼女らの面白さを読者に見せられるかなぁと考えながら。なにより作者が自分でゲラゲラ笑いながら書けるのって、すごく楽しい体験だなと思います。
私は今のところシュール系のSFコメディみたいになってしまう傾向があるので、色んな人の面白い作品を食べていろんなものを書けるように練習しようと思います。
★次回予告★
というわけで、次に執筆する作品のジャンルを抽選で選び、フィーリングでタイトルだけ決めて執筆していきたいと思います。
楽しかったとは言っても、いきなりコメディを引き当てたのはけっこうキツかったので、次は書きやすいジャンルが来て欲しいところです。頼みましたよ、小説の神様。ファンタジーとかお願いします。ルーレット、スタート!
ドゥルルルルルルルルル……。
テンテケテンテン、テンテケテンテン。
ジャン!
●ジャンル→【その他_その他】
なんでえええぇぇぇ……。
いやね、これ「詩」と並ぶくらいの強豪選手じゃないですか。そもそも「他のジャンルに絶対に分類できない作品」に仕方なく設定するジャンルなんですよ。最初から「その他」を狙って物語を作ったりなんかしないんです。結果的にどこに分類していいか分からないから「その他」を設定するしかないって作品を置く場所なんですから。
どうして難しいジャンルばっか引き当てるんですか。誰だ抽選なんて言ったの(←)
考えてもみてください。
恋愛をし過ぎててもダメ、ファンタジーをし過ぎててもダメ、SFをしすぎててもダメ、ヒューマンドラマでもコメディでも歴史、推理、ホラー、アクションでもダメな「その他」の何かを書かなければいけない。もちろん純文学とも差別化すると。
えー、改めて考えると、どうしようもないなぁ。
まぁでもね、やってやりますよ!
私の全身全霊をかけて「その他」ジャンルの傑作を書いてぶつけてやりますからね! 優しい気持ちで待ってろよ! 内容はこれから頑張って考えます。
あ、タイトルですか? 先に決めるのかぁ。
えぇ……どうしよう。もうえいやで決めよう。えいや!
【NEXT】
ジャンル:その他_その他
タイトル:霧島くんの捏造神話