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痰カスと言う名のエッセイ

【痰カス】クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲について思ったこと

 ひっさびさに見たのですよ、あれを。



 それで、こう思ったのですよ。



 もしも、俺が物語の当事者だったとしたら、絶対にしんちゃんたちの味方はしてやれないなって。



 こんばんは、くちです。



 今回は、クレヨンしんちゃん映画史上最強の傑作について少しだけ感想を述べる。知らない人は、悪いけど自分の目で確かめてくれ。完全に視聴済みの人向けだ。



 さて。



 今、家族を持っている人はあの映画を見てどう思うのだろうか。やはり、未来を信じて先に進んだり、自分の子供や妻のために涙を流しながらも前に進む決意をするのだろうか。



 イエスタディ・ワンスモアに洗脳されてたとは言え、せっかく子供の頃に戻れたというのに。まだ大人になりたかった子供の頃の楽しみを、せっかく再び手に入れることが出来たのに。



 本当に、ノスタルジーから抜け出してヒロシのように過去を捨て去る事が出来るだろうか。



 そもそも、野原家があの万博に遊びに行った理由はヒロシとみさえが懐かしさを楽しみたかったからだ。

 ある種、現実逃避を求めて遊びに行ったワケで、大人たちはその魅力に取り憑かれてしまったからこそ街中の大人が洗脳されてしまったのだ。



 それだけの魔力が、過去には存在する。俺は、子供の頃とは違った視点で鑑賞してそう思ったワケだ。



 しかしながら、俺の過去にはそこまでいい思い出があるワケじゃない。友達は少なかったし、大人は信じられなかったし、勉強やスポーツだって得意じゃなかったし。



 何が楽しかったのかと言われても、特に明確な答えを持っているワケでもない。俺は平凡よりもずっと下の、しょーもないクソガキ時代を過ごしたしょーもない大人なのだが。



 それでも、絶対にしんちゃんの味方にはなれないのだ。



 その理由とは何か。



 ズバリ、未来への希望である。



 一つの答えとしてを、『何が起こるか分からない』という事が人生において唯一の楽しさなのだと俺は思う。



 大人になっても楽しそうに生きている人は、きっとずっと知らないことへ挑戦をし続けているのだろう。だから、生きていることが好きで過去を振り返らずにいられるのだろう。



 成功者がよく語るだろ?



 何事も挑戦だとか、やってみるまでわからないとか。これが、俺の提示する人生の楽しみの答え。金とか女とかはあくまで結果であって、還元して残る本質は『未知』の一言に尽きる。



 子供の頃ってのは、それがたくさんある。まだやったことのない事ばかりで、知らないことばかりで。味や感覚だけを取っても想像も出来ないような事がたくさんある。



 『何をすればいいのか』なんて考える暇もないくらい未知が広がっているのだから、それは楽しいに決まっているのだ。



 しかし、大人になればそうは思わない。



 何度も何度も負け続けて、周囲と見比べて自分の限界を決めつけて。それがいけないことだと分かっていても、今を守るためには挑戦なんてしてられない。



 『失敗を恐れるな』などとほざく奴は、失敗を恐れなくても済む環境で育った幸運の持ち主だけだ。『当たって砕けろ』だなんて、砕けない保険を持ってる人間にしかほざけない戯言だといい加減気が付けよ。



 友達がいて励ましてくれる。お金は親が補填してくれる。同情してくれる恋人がいる。たまたまキッカケを掴める。こういう積み重ねを得られたラッキーな奴だけが、人生において失敗せずに何度も挑戦出来る。



 そりゃ、好き勝手失敗できるわな。もう一回立ち上がって、『また頑張ろうかな』って思えるわな。



 だって、俺みたいな一人ぼっちは一つ失敗すればどうなるのかも分からない。



 満足出来ない人生を何とか肯定する作業を日々こなしているのに、これ以上下がって誰にも慰めてもらえないと考えるだけで頭がおかしくなりそうだ。



 もしも違うというのなら、それを手に入れるのが努力なんだと宣うのなら。お前が俺の友達になってくれるのか?お前が俺の失敗を救ってくれるのか?



 違うだろ?そんな恐怖を抱いたことすらないんだろ?



 だから、お前は恵まれてるってんだよ。反論したいなら、納得できる根拠を持ってきな。



 ……いや、今回は別にそういうラッキーな奴が悪いって言ってるんじゃない。オトナ帝国について語ってるんだよ。



 ガキの頃、何も考えずに隣町まで自転車で走っていってお巡りさんに補導されたこと。あれって、要するに隣町がどれだけ遠いのかも分からず、迷子になったら何が起こるのかも分からず。



 本当に、なにも分からないから無意味に走り出せたのだ。そこに意味がないことすら知り得ない、そんな無知こそが子供の特権でありノスタルジーの正体なのだ。



 今はどうだ?



 例えばわからないことがあったとしても、その先に何が待っているのかをある程度想像出来てしまう。女を口説いても失敗するだろうし、小説を書いたって誰にも読まれないだろうってな具合にな。



 本当の結果は重要じゃない、本人がどう思うかがすべてなんだ。



 つまり、『大人になる』という事は『知らないことが減る』という事なのだ。個人で大きな差はあるだろうけど、それは個人が歩んだ人生における経験が補完してくれる。広義で見れば一致する意見のハズだ。



 あいつは成功するだろう、俺は失敗するだろう。こういう考えに()()出来る経験の有無こそが、自分が大人になった証明なのだ。



 そんな楽しかった子供時代を、再び失うだって?



 無理無理無理無理。



 俺には、絶対に無理だ。野原家が必死こいて東京タワーを登るなら、俺は必死こいて彼らを止めるよ。もう二度と、希望を抱いていられる自分を失いたくないもの。



 しんちゃんは、未来のために鼻血を吹きながらも頑張るだろうけど。俺だったら、過去のためにションベン漏らしながら階段を登るね。



 そんな事を、ヒロシの葛藤を勝手に妄想して枯れるくらい涙を流したのでした。



 ……あぁ?結論?



 ねぇよ、そんなもん。出せる奴は、ある程度人生も上手く行ってんだろ。

知ってる奴も多いだろうし、今が楽しい人はどう思ったのか気になるからよかったら感想をば。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とてもわかります。 あの作品の主人公はヒロシなんですよね。 子供に戻り、懐かしさやなんの柵もなかった、父親の背中を漠然と眺めて、その向こう側に希望をみたり不安になったりする少年の無垢さ…
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