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020 ひひーん!


 北海道 日高門別町 日高ニワノ牧場



「まあ、私は妖精だからね! 神さまの次ぐらいには凄いよ!」


「ぶるる(神様かぁ、そういえばワイも転生する時に女神様に会ったなぁ)」



 お馬さんは20年以上前の昔を懐かしく思い出しているようであった。

 そのノスタルジーに黄昏ていたお馬さんに、妖精さんが答えを教えてあげた。



「それは地球を管理している女神様だね。私は別の世界からやってきたんだよ」


「ひん?(別の世界? ということは異世界?)」


「そう、異世界で正解だよ! リテアって呼ばれている世界だね」


「ひひ~ん(異世界かぁ、完全にファンタジーやね)」



 自分も転生というファンタジー要素を経験しているのであったが、いまいちピンとこないお馬さんであった。

 きっと、ファンタジー = 異世界という固定概念のせいであろう。



「地球も人類が知らないだけで、ファンタジー要素はあるんだけどね」


「ひん(そういえば、テレビやラジオから聞こえてくる声の中に、妖精がどうたらこうたらとかあったわ。その話題が妖精さんのコトだったんやな)」


「そうだね。たぶん私の話題だったんだと思うよ」


「ひひん(ワイの目の前に妖精さんがいるとなると、いよいよ地球にもファンタジーが到来したということなんやね)」



 うむうむと納得したようにお馬さんは頷いた。

 ミストラルプリンセスの競走成績、それ自体が既にファンタジーに近い伝説なのだが、自分の成し遂げた偉業がファンタジーとは微塵も思ってはなかったようだった。


 まあ、地球での出来事をファンタジーと考えるのは難しい注文ではある。



「それにしても、さすがに女神様の加護持ちは違うね」


「ぶるぅ(転生する時に女神様が加護を与えてくれたみたいだけど、ワイは自分の加護のことを詳しくは知らんねん)」



 お馬さんは妖精さんの言葉に首を捻る。



「LUCKの値がとんでもなく高いってことだよ」


「ひん?(LUCK値? なんやそれ?)」



 まるで、ゲームみたいだなと思いつつも、お馬さんは更に首を捻った。



「隠しパラメーター、隠れステータスみたいなモノだよ」


「ひーん(そんなんがあったんやな。今まで全然知らんかったわ)」


「当然、他のステータスも軒並み高いけどね」


「ひん(なるほど、ワイが強かった理由はステータスの高さだったんやな)」



 お馬さんは自身の図抜けた競走成績を振り返ってみて納得するのだった。



「もしかして、お馬さんは女神様にチートを貰えたから、調子に乗ってブイブイと俺TUEEEとかをやったんでしょうか?」


「ひん……(ま、まあ、多少はやったのかな?)」



 妖精さんにチートで俺TUEEEとか言われて、お馬さんは気恥ずかしくなった。



「まあ、女神様からの加護とはいえ、チートも自分自身の能力の一部ではあるからね」



 リテア世界に転生した直後の数百年前の出来事を思い出したのか、うんうんと頷きながら妖精さんは、チートも能力も自分の一部と肯定するように言葉を並べた。

 そう、数百年前には妖精さんも調子に乗って、ブイブイといわせていた時期があったのだ。


 もっとも、調子に乗りすぎて、女神様に怒られるまでがテンプレ、日常茶飯事になってはいたのだったが。

 妖精という種族はあまり賢くないから、女神様に怒られたとしても、しばらくしたらまた同じイタズラをして、また女神様に怒られるのであった。


 まあ、女神様に半分遊んでもらっていると思っているから、イタズラがなくならないとも言えるわけなのだが。

 リテア世界では、女神様が妖精の母親みたいな存在なのだから、きっと母親に甘えているだけなのであろう。


 話がそれた。



「ひひーん(サラブレッドは競馬場で走って好成績を収めないと生き残れないんだよ)」


「それは世知辛いですね……」



 お馬さんがサラブレッドの事情を説明すると、そのことに同情する妖精さんであった。

 しかし、サラブレッドという生き物は、飼い主である人間から見れば経済動物なのだから、仕方がない面もあるのかも知れない。


 いつの時代でも、他者の生殺与奪権は強者が握っているのだから。



「ひん(だから、人間だった頃の記憶と女神様に貰ったチート能力は正直助かったね)」



 お馬さんは笑顔でそう付け加えるのであった。

 まあ、馬の笑顔なんて見分けがつくのかどうか怪しいモノではあったが、魂から見れる妖精さんにとっては問題なかった。


 ちなみに、お馬さんが目を細めながら上唇を上げて、歯をむき出しにして笑っているように見える顔は、臭いとかに反応するフレーメン反応といって、べつに楽しいとか面白いから笑っている訳ではないのであしからず。



「ちなみに、ステータスオープンとか言っても、ステータスは見えないからね?」


「ぶるるぅ(そんなこと恥ずかしくて、よーやらんわ)」



 ちょっとステータスオープンと念じてみようかと思っていた、元人間のお馬さんであった。

 お馬さんは人間だった頃に、そっちの造詣も少しばかり深かったのである。


 だから、ステータスが見られないと聞かされ、少しばかり残念に思ったのも事実だった。



「ひ~ん(ところで、ワイに何か用でもあったん?)」


「うーん、特に用があったというわけではないんだよ。たまたまお馬さんを眺めてたら、面白い魂を見つけて声を掛けただけだからさ」


「ひん(なるほど、そういうことね)」



 カラ~ンコロ~ン♪



「ヒメ~! そろそろお家に戻るよ~!」



「ぶるぅ(お? サツキが迎えにきたようやな。色々と妖精さんに聞けて楽しかったわ。ありがとうな)」


「そっか、もう夕方近くだったね。それじゃあ私もそろそろお暇させてもらうよ」


「ひひ~ん(ワイも言葉が通じる妖精さんとはもっと話したいから、また遊びにくるんやで~)」


「うん、気が向いたらまた遊びにくるよ!」



 お馬さんにバイバイと手を振った妖精さんは、空高く飛び去っていったのであった。




「ひーん(あーあ、行ってしもたなぁ。まあ、そのうちまた会えるやろう)」



 しかし、妖精さんがこの牧場にまた遊びにくるのかどうかは未定だった。

 なんといっても、妖精さんは気まぐれで、なおかつ忘れっぽいのだから。




「ヒメ、誰か来てたの?」


「ひん?(サツキの位置からは妖精さんが小さすぎて見えなかったんかな?)」


「見通しも良いし誰かがいたら分かるはずなのに、おかしいわねぇ?」



 それにしても、妖精さんは次の目的地も特に決めてないはずなのに、一体ドコへと向かったのであろう?

 そして、気まぐれな妖精さんの行動というのは、女神様にも分からない難問なのであった。



とりあえずミスプリの登場はここまでw

再登場があるのかは未定…

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読ませていただいていましたがミスプリの作者だったのに今まで気づきませんでした! ヒメが故障もなくノンビリとした引退ライフをしているようで安心しました。
[一言] 宮様もクロスするかな?
[良い点] 妖精さんは今日も可愛い! [一言] なんか急にミスプリ言い始めてびっくりした。 よくよく見るとおおそといっきの作者だった。
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