016 魂の残滓?
今話は一人称と三人称のごちゃ混ぜの回w
わたしのこうしょうなものがたりをありがたくよむがよい。
東京都内 上空
雲一つない澄み切った青空の中、やることもなく暇を持て余していた妖精さんは、ぶらぶらと大空の散歩をしていた。
「うーん、今日はナニして遊ぼうかな? うーん…… 暇だ、暇だぞ。
保育園児や幼稚園児と遊ぶのも楽しいけど、結構疲れるしなぁ」
オマケで、あいつら加減を知らないから、結構無茶なこともしてくるし……
とかのボヤキも聞こえてきた。
妖精という存在は、ほぼ永遠に幼女以上少女未満という外見なのである。
だから当然ながら、肉体年齢相応に精神年齢というのも低いのであった。
つまり、幼稚園児と遊ぶのは、妖精さんの魂が求めている行為とも受け取れる。
そんなこんなで、ふよふよと大空を漂いながら、あーでもないこーでもないと、ナニをして遊ぼうかと思案する妖精さんであった。
「ふむ? 無意識で漂っていたら、どうやら秋葉原に迷い込んでしまってたみたいですね」
どうやら今日の妖精さんの空中散歩は、オタクの聖地でもある秋葉原に無意識でたどり着いてしまったらしい。
もしかしたら、妖精さんの魂の中にある残りカス、前世の魂の残滓が引き寄せられた結果なのかも知れなかったが。
「秋葉原といえばオタク。オタクといえばアニメ?
アニメといえば深夜アニメかぁ」
オタクに対して、ステレオタイプの偏見を持つ妖精さんであった。
しかし、オタクというのは、ジャンルが細分化されすぎている分野なのである。
そう、些細なことで、相手の好きな分野を否定し揚げ足を取り攻撃をして、ネット上で戦争をしていることなど日常茶飯事なのだから。
寛容なオタクとは、それこそマイノリティの少数派なのである。
「でも、アニメを見るのも飽きてきたしなぁ」
そう、最近のアニメはイマイチなのばかりで、私の琴線にビビビッって触れる作品が少ないのですよ。
昔に比べて、クリエイターの質が落ちてると思うのは私だけかな?
つまり、原作に対する愛が、リスペクトが足りない気がするんだよね。
私の偏見かも知れないけど、アニメ制作が惰性の作業になってしまっていて、
『俺が手掛けたこの作品で視聴者を楽しませ感動させるぞぉぉぉ!』
とかいう、プロの気概が感じられないのですよ。
まあ、1クール12話か13話の製作委員会方式で作られる、低予算の深夜アニメに期待するほうが間違いなのかも知れないけどさぁ。
でも、なんだかなぁ。もうちょっと、なんとかならないモノかね?
1クールという短い期間にも関わらず、中間に前半の総集編を入れたりして、手抜きをしていたりもするのだから、まったくもって何をか言わんやですよ。
しょせん原作のラノベは、テレビの深夜枠を埋める為に存在する、替えの利く使い捨ての代用品なのかも知れないな。
「私の感性に合った、もっと私に刺さる作品が何処かにないものかなぁ」
きっと私の感性が先進的すぎて、現代の日本人とは合わないのかも知れませんね。
web小説でも読むのは、ランキング上位の小説よりも、低ポイントの作品をスコップして、そこから良作を探し当てることに無上の喜びを感じますし。
それと、前世で私が書いていた小説の評価がイマイチだったのも、きっと世間が私の尖った先進性に付いてこられなかったのが原因なのでしょう。
たぶん、おそらく、きっと、めいびー。
けして、私の小説が駄作だったとかでは断じてない。ないったらない!
私のレベルが高すぎて、その作品の高尚さを無知蒙昧なる、世間の一般人が理解できなかっただけなんだからね!
「おや?」
独り言と併せて、脳内でグチグチと愚痴をこぼしてい妖精さんであったが、ふと視界に入ってきた文字に目を止めた。
【妖精さんフィギア入荷しました!】
「うん? 妖精さんフィギア? 私も妖精さんだけど、フィギアとな?
これはちょっと気になるから、ちょっくら覗いてみましょそうしましょ」
妖精の単語に釣られるように、ふよふよと宙を漂いながら、一軒の雑居ビルの一階の店舗へと妖精さんは入っていった。
※※※※※※
「いらっしゃいま…って妖精さん!?」
店の出入口付近にあるレジにいた青年Aはお客が入店してきた気配を感じ取り、適当に挨拶をしつつ顔を上げた。
そして、青年Aの視界に映ったモノは人間ではなく、妖精さんだった。
「こんちわ~。はい、妖精さんがいらっしゃいましたよ」
妖精さんはレジにいる店員の青年に、愛想よくニッコリと挨拶をしてから店内へと入っていった。
「え? マジで妖精さん!?」
「おい、アレが妖精さんに見つかったら不味いんじゃないのか?」
「ああ、確かにアレは不味い気がする……」
店内の別の場所では、妖精さんが来店したと気付いた、他の二人の店員がヒソヒソと小声で話し込んでいた。
しかし、妖精さんの地獄耳には当然ながら、その二人のヒソヒソ話は丸聞こえであった。
「お兄さん、お兄さん」
「ひゃい!」
妖精さんが転移の魔法を使い店員の青年Bの背後に突然現れ、耳元で囁かれたので青年Bは思わず背筋がシャキっと伸びてしまった。
いくら妖精さんが可愛いとはいえ、ちょっとしたホラーである。
「ナニがマズいんですかぁ?」
「そ、それは、えーと、あの……」
「ふーん、フィギアですか?」
店内のショーケースの中に陳列されている、数多のフィギアをキョロキョロと見回して、妖精さんは納得した様子だった。
「フィギアですね……」
「うん、日本人の業が深いということがよく分かった」
業が深い。つまり、そういうことである。
どういうことなのか詳しく知りたいのであれば、ググれば一発であろう。
そして、この場における業の深さとは、M字開脚の格好をさせられあられもない姿を晒しているフィギアであった。
それも、誰がどう見ても妖精さんのフィギアであった。
日本の少子化に一役買っているのは、間違いなく二次元や2.5次元の可愛い女性キャラクターのはずである。
もっとも、性犯罪率の低下にも貢献しているのだから、痛し痒しではあった。
その分、無駄に大量に放出されるナニかと、ティッシュの消費量は増えているのだが。
サブカルチャーが一般大衆文化として世間に認知され、ほぼ受け入れられた影響なのかも知れない。
私の小説が書籍化しないのは世の中が悪い!(キリッ