復讐はなにも生まない!止めるんだ!
「俺の妹はお前に犯されて殺され山に埋められた。お前には妹以上の苦しみを与えてやる」
マサヒロは犯人に向けて刃物を構えた。マサヒロ!ダメだ!人を殺したらお前も犯人と同じ『鬼』になっちまう!お前は人を助ける医者なんだぞ!?俺は親友としてこいつを止めなければならない。
「妹さんは!ルリちゃんは復讐なんか望んでない!」
俺はマサヒロの目を見て肩に手をおいて全力で説得した。
「ルリちゃんはいつもお前の自慢ばかりしていた。『自慢のお兄ちゃん』ってな。ルリちゃんにとってお前はヒーローだったんだよ!」
「……うう。頼むよシンジ。俺を止めないでくれ」
マサヒロは明らかに動揺していた。もしかしたら本当に止められるかもしれない。
「お前の母さんだってそうだ!医者になったお前を『最高の息子』だって言ってた!人を殺したらお前は二度と医者には戻れないぞ!」
「……母さん」
「お前の人生はもうお前だけの物じゃないんだよ」
俺はマサヒロを抱き締めた。伝わってほしい。俺の優しさを。願いを。想いを。
「お前の言う通りだ」
「……マサヒロ」
メス?肺にコポコポコポと血が流れる音がする。俺は刺されたのか?
「シンジ。俺は被害者『たち』の無念を晴らさないといけない」
いつの間にか俺はなんの共通点も無さそうな老若男女に囲まれていた。誰だよお前ら。
「覚えていないか?お前に殺された被害者の遺族だ。そう。俺の人生はもう俺だけの物じゃない。この人達の物でもある!」
「ゲプッ!」
口から血が出てきて止まらねぇ。苦しいよお苦しいよお。なんで俺がこんな目に。ちょっとレイプしただけじゃん。暴れたり騒がれなければ俺だって誰も殺さなかったよ。殺したくなかったよ!むしろさぁ!
「俺だって被害者なんだぞ!」
「頼むからもう喋るな。シンジ」
「うるせえっ!おいっ!マサヒロ!お前のかーちゃんと妹とのセックスは最高だったぜ!ヒヒッ!あきぃっ!?」
両膝にメスを刺された!?息できねぇ。苦しい。立てねぇ。なんでだ?なんで何も悪いことしてないのにこんな目に?神様はいないのか?
「こいつはもう動けません。皆さん。お一人ずつメスをどうぞ。私の指示した所に刺して下さい。『致命傷にはならないが最大限苦しめられる』場所です。皆さんから協力頂いた輸血もありますし、死にそうになったら私が治療します。さぁどうぞ」
メスを持った集団が俺に近づいてくる。
やめろぉ。やめてくれぇ。
それから一週間後。やっと俺は死ぬことを許された。