第十四幕 33 『受け継ぐ力』
神界にて、神々より加護を授かった私達。
そして更に……
「折角の機会だから、出来る限りの事はしないとですわね。何と言っても相手はどれ程の力を持ってるのかも未知数なのですから」
そう言うのは、魔法を司ると言われているシェラフィーナ様だ。
「あなた達の中で、魔法が扱える者には神代魔法の知識を授けましょう。もちろん、人間には得手不得手があるから全て使える訳では無いでしょうけど……時間の許す限り、ここで試していくと良いですわ」
私達の中で魔法を使えるのは、私、ミーティア、シフィル、メリエルちゃん、そしてシェラさんだ。
シェラフィーナ様からの加護……魔法の適性を引き上げるという『魔の導き』を授かっているので、使用できる魔法の幅もかなり広がってるはず。
シェラフィーナ様からは攻撃系統全般。
シャハル様、イクセリアス様から時間・空間系統。
オキュパロス様から支援・状態変化系。
パティエット様から幻影・精神系。
オーディマ様、ヘリテジア様から魔導具や魔法陣に関する術式の知識……
と言うように、それぞれが得意とする系統を学ぶことに。
魔法チート、ここに極まれり。
「ふむ、そうだな……では私は武術の稽古をつけてやるとしよう。ここは地上と時間の流れが異なるから、2〜3日程費やしても問題あるまい」
「ならば私もだな。肉体的には鍛えられぬが、技と精神は向上させることが出来る。みっちりと仕込んでやろう」
リリア姉さんとディザール様は武術の稽古を付けてくれるみたい。
以前、私とテオはディザール様に稽古をつけてもらったけど、かなり有意義な時間だった。
今回も期待できそうだ。
これにはルシェーラやシフィルが目を輝かせた。
彼女たちなら、厳しい修行も嬉々としてやり遂げるだろう。
「え〜と、私は……どうしようかしら……」
リル姉さんが迷ったように呟いてる。
何だか対抗心を燃やしてるような……
「如何に眷族たちとは言え、お前の力は人の身に余るものだろう」
リル姉さんは、かつては『魂の守護者』と呼ばれていた。
その力は魂魄に及ぶもの。
確かに人間が扱うには無理があるのかもしれない。
「でも……私だけ何もしないというのも……」
「気持ちだけでも嬉しいよ。加護も貰ってるし、異界の魂や魔族相手なら、それだけでも心強いと思うよ」
「そう言ってくれるなら……。じゃあ、私は皆の修行のお手伝いでもしましょうか」
私は転生したときに貰っていたけど、リル姉さんの加護『魂の守護』は即死系攻撃の完全無効化と言う、非常に強力なものだ。
それ以上、望むべくもない。
こうして、私達は神界時間で数日間だけ修行を行うことになるのだった。
ーーーー ステラ ーーーー
思いもかけなかった事に、私達は神様たちから修行をしてもらえることになった。
加護を授かっただけでも望外の事だったのに……
だけど、これからどんな敵が立ちはだかるのか分からない以上、大きな力となるのは間違いない。
ここで少しでも力をつけて、皆の足手まといにならないようにしなくては。
そう意気込んでいると、パティエット様が私に話しかけてきた。
……私のご先祖様に印を与えた女神様。
まさか、実際にお会いできる日が来るなんて……夢にも思わなかったことよね。
「ステラ。あなたに会えて嬉しいわ」
「わ、私も……お会いできて光栄です」
ちょっと緊張してしまう。
「ふふ……そんなに畏まらないで。私達は親戚みたいなものだから」
「は、はい」
親戚、と言っても……神々しいオーラを纏い、文字通り女神の美貌を前にすると、どうしても緊張してしまう。
カティアはよく平気よね……
「まあ、追々慣れてもらうとして……あなたには、私の印の本質についてレクチャーしておこうと思ってね」
「印の……?」
「ええ。あなたは、私の印の力についてどう思っているのかしら?」
パティエット様の印の力……それは、アダレットの代々の継承者から口伝で伝えられ、私もそれを聞いてるのだけど。
「ええと……幻想世界への扉を開き、その世界の存在を現実世界に具現化させる力……と、聞いてます」
実際に印の力で、プラタや私の弓を喚び出したりしてるし……間違ってないと思う。
「そうね。それも印の力の一端」
「一端……?」
と言うと、他にも……?
「ええ。私の印の力の本質、その究極は『あらゆる可能性の具現化』よ」
「可能性の……具現化?」
「これからあなたに、それを伝えるわ。直接イメージを刷り込む事でね」
そう言って、パティエット様は嫋やかな手を私の額に伸ばして……
そして私は……
自分の印の真の力……無限の可能性を識る。




