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【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!  作者: O.T.I
第二幕 転生歌姫と古代遺跡

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第二幕 7 『古代遺跡』

G注意…

 小川が流れる草原で小一時間ほどの休憩を取った後、再び歩みを進める。


 川に沿って上流に歩いていくとやがて草花は疎らになっていき、硬い地面に大小の石が転がる荒れ地となってきた。


 そして更に進むと…


「これは…遺跡…街の跡地らしき場所。ここですね」


 崩壊して僅かに壁の一部が残る家の跡らしきものや、割れてボロボロになっているが石畳が敷き詰められていたであろう街路などの遺構は、まさしく『街』があった名残りと思われる。


 【俺】の記憶にあるゲームで見た風景とも一致する。


「ええ、この街の遺構自体は以前から知られていて、調査もされ尽くされていると思われていたのですが、先日大規模な地下施設への入り口が発見されたのです。そこが今回の依頼の目的地ですわね」


 その辺の情報はスーリャさんに聞いたとおりだね。


「すごい…これはいつの時代のものなんでしょうね?ちょっと調べてみたい気も…」


 リーゼさんはしきりに辺りを見回して感心している様子。


「はっきりとは分かっておりませんが、おそらく神代のものではないか?と言われておりますわ」


「神代の…!これは益々楽しみです」


 やる気が出るのは良いんだけど、依頼はあくまでも魔物駆除ですからね…



「たしか、一番大きな通りを突き当たりまで進んでいくとあるんでしたよね」


「そうだな。さっき街の門の跡らしきものがあったから、この街路がメイン通りなんじゃないかな?」


「じゃあ、取り敢えずこの道をまっすぐ進むッス」


 そして、メイン通りと思しき街路をまっすぐ進んでいく。


 およそ10分くらい歩いたところで突き当りに至り、情報通り目の前には神殿跡らしき遺構があった。

 およそ5メートルほどの高さの基礎が築かれていて、十数メートルほどの幅の階段が設けられている。

 本屋は完全に崩壊してしまっているらしく、壁や柱の一部が僅かに残るのみで、殆ど瓦礫となって積み重なっているようだ。


 そして、その神殿跡の前には大型のテントが設営されている。

 ここに調査隊が滞在しているのだろう。




 と、テントから何人か出てきた。


 そのうちの一人がこちらに気付いて向かってくる。

 キャメル色のいかにも探検隊、て感じの服装をした中年男性。

 黒い短髪に無精髭を生やしているが、なんかワイルドな雰囲気でむしろそれが似合っている。


「あ〜、君たちはもしかして…」


「はい、依頼で遺跡内の魔物を駆除するためにやって参りました。私はカイトと申します。Bランクの冒険者です」


「はじめまして、カティアと申します。私もBランクです」


「ロウエンッス。同じくBランクッス」


「リーゼです。私もBランクです」


 と、一通り自己紹介する。


 あ、お嬢様はどうしようか、と思っていたら…


「こんにちは、ジョーンズさん。調査は順調ですか?」


「へ?あ!お、お嬢様!?な、なぜこのような場所に!」


「ふふ、偶々ですわ。今回はカイト様にお願いして冒険者活動に参加させてもらってるのです。あ、もちろんお父様の許可は取ってますわよ」


「は、はぁ…さいですか…」


 どうやらお嬢様は彼のことを知っているらしい。


「お嬢様、そちらの方をご存知なんですか?」


「ええ、彼はこの遺跡の調査隊の責任者でジョーンズさんと申しますのよ。私もお父様の政務の補佐をする事があるのですが、調査報告の場などでお会いしたことがあるのです」


「ええ、閣下とお嬢様にはいつもお世話になっております。それで、調査状況なんですが…正直芳しくないですな。何とか1階層は粗方確認出来たのですが、2階層以降はやはり魔物を何とかしないとまともな調査は出来ませんね」


「事前に聞いた話だと脅威度はCランク程度…スライム系とか、蜘蛛系とかが確認されているとの事ですが?」


「はい、確認出来たのは3層くらいまで、ですが。私も単独ならCくらいは対処できるのですけど、流石に無理はできないので…」


「そうですか…まぁ、私達が来たからには何とかしてみせますわ。ねぇ、皆さん?」


「あ、はい。それが依頼ですからね。お任せください」


「よろしく頼みます。…冒険者が来たら私も同行するつもりだったのですが、お嬢様がいらっしゃるならそれも不要ですかね」


「…?どういうことです?」


「ああ、無断で宝物遺物を持ち出されたりするのを見張るためですか」


 あ、そうか。

 そうだよね、何か発見したらくすねる人も居るだろうし、監視は必要か。


「ええ、まぁ…失礼かも知れませんが…」


「いえいえ、必要な事だと思いますよ。そっか、依頼元の侯爵家のお嬢様が同行されるからそれも心配無いってことですね」


「ふふ、カイトさま達がそのような事をなさる筈はありませんけどね。じゃあ、ジョーンズさん、早速ですが遺跡の中に入らせて頂きますね」


「分かりました。では入口までご案内します」




 案内されて階段を登って行くと、下からは分からなかったが一部の瓦礫が撤去されて通路のようなものが奥まで続いている。


 うん、やっぱりこのあたりもゲームと同じだな。



「これが地下への入り口です」


 瓦礫が撤去されて出来た通路を進んでいくと、地下へ続く階段があった。


 思いのほか大きな入り口で、5人横に並んでも悠々下っていけるほどの幅がある。


「あれ?なんだか階段の先が思ったより明るくないですか?」


「ええ、どうやら壁面の石材そのものが淡く発光しているらしいのです。石材自体に照明の魔法が付与されているのではないか?と今のところ推測しております」


「ふむ…照明の魔道具は現代にもありますけど…常時照らし出すとなるとなかなか難しいのでは…そうか、光量を抑えれば魔素の補充と消費魔力の釣り合いは取れるのか…そもそも通路を照らす程度ならそれほど明るくなくても良い訳だし…しかし石材そのものに付与とは一体どのようにして…」


 あ、また始まった。

 この調子だと何か見るたびに没頭してしまいそうだな…

 大丈夫かなぁ…?


「…まあ、リーゼは切り替えれば大丈夫だ。やる時はやってくれる。…はずだ」


 そこは言い切りましょうよ。


「ともかく、降りてみよう。リーゼ!行くぞ、切り変えろよ!」


「はっ!す、すみません!大丈夫です、行きます!」


「では、みなさんお気をつけください!」


 そうして一行はジョーンズさんに見送られて、地下への階段を降りていくのであった。











「…広い、ですね」


「ああ、想像以上だな」


 降りてきた先の通路は地下遺跡とは思えないほどの広さで、入り口の階段と同じく、5人が両手を広げて横並びになってもまだ余裕があるくらいだ。

 天井も高く、3〜4メートルくらいはあろうか。


「これならお嬢様の武器でも問題ないですね」


「ええ、私もそこは気になったので事前に確認はしてましたわ。念の為取り回しが良いサブウェポンも持ってきてますし」


 あ、そうなんだ、流石だな…

 そう言う準備がしっかりしているところはやっぱり閣下の娘さんなだけはあるね。


 そして、やっぱりゲームのときよりも大分規模が大きい感じだ。

 依頼としては最大でも5層対応すれば良いのだけど、それでも大分時間がかかりそうだ。

 やはり野営の準備をしてきて正解だったと思う。



「さて。確か第一層は問題ないんだよな」


「そうですね。構造も単純で中央のメイン通路と両側にいくつか部屋のようなものがあるだけ、だったはずです。二層への階段へはまっすぐ進むだけですね」


「わかった。じゃあ寄り道せずにさっさと二層に進んでしまおう」


 そうして一行は降りてきたところから通路をまっすぐ進む。


 上で言っていた通り、石造りの壁や天井全体が淡く青白い光を放っているようだ。

 若干薄暗いものの探索するには十分な光量だろう。

 その色合いも相まって、神秘的な雰囲気を醸し出している。


 両側の壁には所々に扉がある。

 その扉も石造りであろうか?

 随分重厚そうで、開けるには一苦労しそうな感じがする。



 4〜5百メートルほど歩いただろうか?

 第二層への階段が見つかった。

 通路の幅そのままに階段へと繋がっている。


「よし。ここから先は魔物が出るらしいから注意していこう。ロウエンさん、先頭お願いします」


「任せるッス!」


 斥候のロウエンさんを先頭にして私達は第二層へと降りていった。










 第二層におりるとすぐにロウエンさんが警告を発する。


「おっと、早速何かいるみたいッス。…げ、あれは!?まずいっ!カティアちゃん、見ちゃだめッス!」


 その警告は少し遅かった。

 私は通路の先でカサカサ動く不吉な黒い影をバッチリ捉えてしまった。

 あの動き、本能的に感じる嫌悪感。

 間違いない、ヤツだ!!


「ぎゃ〜〜〜っ!!!??出たぁ〜〜っっ!!」


 私の魂からの絶叫に皆がギョッとするが、そんな事には構ってられない。

 ほんの数メートル先には、ありえないくらい巨大な"G"が!


 いやっ!?

 何アレ!?

 50センチくらいあるんですけどっ!!

 それが何十匹も群れで…


 プツンっ!

 私の中のナニカが切れた。


「おのれっ、人類の天敵めっ!滅びろぉっ![灼渦]っ!」


「ちょっ!?それは大袈裟だろっ!?」


 私が発動した魔法によって、前方の床が灼熱の溶岩の渦と化す。

 またたく間に巻き込まれたヤツらは成すすべもなく、跡形も無く燃え尽きていく。


 グラグラと煮えたぎる溶岩はしばらくすると冷え固まってきたが、圧倒的な熱量がもたらした輻射熱によって通路は蒸し風呂のような暑さになっていた。


 我に返って落ち着いた私は、何事もなかったように…


「…[冷却]。ふぅ、悪は滅びた!」


「「「いやいやいや…」」」


「…私は[灼渦]を無詠唱で放てるのに驚きました」


「あ、普段は無詠唱できませんよ?あれは、まぁ、火事場の馬鹿力というか…」


「あ〜、カティアちゃんの天敵ッスからねぇ…きゃーきゃー逃げ回るだけなら可愛げがあるんスけど、とんでもない攻撃魔法をぶっ放したりするのはやめて欲しいッス」


 そうなのだ。

 【私】は死ぬほどあの黒い悪魔が大嫌いなのだ。

 私の中の【私】の魂がそうさせたのだ。

 【俺】だって好きじゃないけど、あれほどではない。


「…一応、家の中とかは手加減してるよ?少なくとも火系統は使わないし」


「いや、いくら火じゃないからって[絶凍気流]とか全然手加減になって無いッスよ…」


「だって、下手に手加減なんかしたらヤツらに逃げられちゃうじゃない。物陰に潜まれた日にはおちおち寝ることもできなくなるし。と言うことで、ヤツには広範囲殲滅こそが最も効果的な一手なんです!」


 熱湯?

 生ぬるいわ!!


「だめだこりゃ、ッス」


「…ロウエンさん、なるべく早く察知をお願いします。カティアが察知する前になんとかしましょう」


「そうッスね…なんとかやってみるッス」


「あ、確実にサーチアンドデストロイ、G・即・斬でお願いしますね!」


「なんだかカティアさんのイメージが変わりましたわ…」


「あははは…」


 なんだか皆呆れているような気がするけど、こればっかりは譲れないんです!





 そんな感じで第二層の探索が始まった。

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