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【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!  作者: O.T.I
第七幕 転生歌姫と王都大祭

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第七幕 39 『武神杯〜準決勝 奇剣vs奇策』

 準決勝第二試合は両者互角の戦いを繰り広げ、一進一の攻防が続く。


 広大な間合いを持つイーディスさんの攻撃を、彼が捕捉しきれない程のスピードで掻い潜って双剣を叩き込むものの、堅牢な防御を崩すに至ってはいない。


 そんな事が何度も繰り返されている。


 だが、徐々にスピードに慣れてきたのか、蛇剣の迎撃のタイミングが少しずつ合ってきている気がする。


 それが分からないティダ兄じゃないだろうし、あの一見単調な攻撃も何か狙いがあっての事だとは思うけど…




 キィンッ!!



 あ!?


 何度目かの攻防を経て、遂に蛇剣がティダ兄の動きを捉えた!


 直撃こそ剣で弾いて防いだものの、完全にタイミングが合っていた。




『おーーっと!?イーディス選手!遂にティダ選手の動きを捉えた!!』


『ああ、何度も繰り返されて目が慣れたな』


『ま、まだまだよ〜!』



 キィンッ!


 キンッ!


 キキィンッ!



 …もう完全に掴んだみたいだね。

 懐に飛び込めなくなったよ。


 ティダ兄…ここからどうするの?

 何かを確かめているみたいだけど…



「…もう動きは把握した。今度はこちらが行く」


 !

 イーディスさんが何か仕掛けるみたいだ。



 ティダ兄の姿が再び消える。


 そして…!


「双蛇咬牙」


 前後から挟み込むように双蛇剣がティダ兄に襲いかかる!!


 「!!」


 キィンッ!!


 前方の攻撃は剣で弾き、後方の首筋を狙った攻撃は身体を捻ってギリギリで躱すが…



『…掠めたな』


 ダメージは無いけど、確かに僅か皮一枚掠めたのだ。



「双蛇旋牙」


 今度は直線ではなくティダ兄を取り囲むように斬撃が襲いかかる!


 完全に囲まれる前にかいくぐってその場を脱するが、またも攻撃は掠めている。



「双蛇波斬」


 波打つ斬撃は弾き飛ばすのが困難だ。

 これも皮一枚ギリギリで躱した。



 完全に攻撃の主導権は入れ代わり、イーディスさんが一方的に攻撃、ティダ兄はそれをギリギリで躱すという図式になった。




『さあ!攻守が入れ替わりました!!イーディス選手の攻撃が徐々にティダ選手を捉えてきています!』


『むぅ〜〜〜っ!!』


『むくれんな。だが、あいつがこのままってこたぁねぇな。多分何か狙ってやがる』


『ダードさん、それ言っちゃだめよ〜!!』


『いや、当然イーディスだって警戒してんだろ』


 父さんの言うとおりだね。

 ティダ兄のこれまでの戦いは多分、あくまでも下準備のような気がする。


 そして姉さんの依怙贔屓には誰も突っ込まなくなったね。

 慣れってコワイね。




 そして、再び攻防は続き、一見してイーディスさんが優勢、ティダ兄は何とか皮一枚で躱す…と言うように観客も思っているだろう。


 事態が動いたのはそれからしばらく経ってから。




 これまでと同じくイーディスさんの攻撃を紙一重で躱し…

 いや!貫いた!?


 と思った瞬間、ふっ、とティダの姿が掻き消えた!


 残像を残して超高速で躱したのか!



「そっちか」


 それも目に捉えていたイーディスさんは冷静に剣を振るうが…


 ティダ兄の停止と加速、緩急を織り交ぜた変幻自在の動きを捉えきれない。


 ティダ兄は縦横無尽に残像を残しながらイーディスさんの懐に近づいていく。


 あの残像…超高速の動きによるだけじゃ無く、闘気や魔力を瞬間的に発することで、より人の目を欺くようにしてるんだよね。

 たしか『残影』と言うスキルだ。



「双蛇結界陣」


 もはや捕捉は困難と察したイーディスさんは、双蛇剣で自分の周りを二重螺旋で囲って、攻防一体の防御陣を敷く!



「それを待っていた!![隆地]!!」


 えっ!?

 まさかティダ兄が魔法を!?


 地面を瞬間的に隆起させる初級の地魔法だ。

 ティダ兄が魔法を使ったのは驚いたが…なるほど、イーディスさんが防御体勢になって足を止める瞬間を狙ってたんだね。

 やはり魔法は門外漢ということなんだろう。

 確実に当てられるように策を練ったんだ。



 それが功を奏する。

 突然地面が隆起したことによってイーディスさんは足を取られてバランスを崩し、鉄壁と思われた防御陣に綻びが生じた!


 その僅かな間隙を縫ってついにティダ兄は懐に飛び込む!


 しかし、真正面から繰り出された斬撃は篭手で防がれた!


 だが…!


「秘剣…朧月影!」


 正面の一撃が防がれたときには既に残像を残して体ごと背後に回り込んで、そのまま首筋の鎧と兜の隙間に本命の一撃が叩き込まれた!!


 ザシュッ!!


 初めてのクリーンヒットは致命の一撃となり、戦闘不能判定となったイーディスさんは、舞台外に弾き出された。




「そこまで!!勝者ティダ!!」



 ウォーーーーーッ!!!


 きゃあーーっ!!

 ティダ様ーーっ!!

 ステキーーーっ!!



 歓声が爆発する!!






『ティダ選手、一時は劣勢かと思われましたが一気に形勢を逆転し勝利しました!』


『きゃあーーーっ!!ティダーーっ!!やったわ〜!!ステキよーーっ!!』


 姉さんも大喜びだが…解説なのに依怙贔屓が酷すぎる…


『でも〜、ティダが勝ったのは嬉しいのだけど〜…身の程知らずのメスどもがいるわね〜』


 あ、あれだけ牽制してたのに黄色い声援が上がったものだから…姉さんが黒くなってるよ。

 やめなさいよ…会場中がドン引きしてるじゃないの…


『おいこら、不穏な発言は止めねえか……しかし驚いたぞ。あいつが魔法を使えるなんて知らなかったが…アネッサ、あれはお前が教えたのか?』


『そうなのよ〜、初級だけだけど〜ティダは凄いのよ〜!愛の力で覚えたのよ〜』


 私もティダ兄が魔法を使えるなんて知らなかったけど…姉さんが教えたんだね。

 初級だけでも攻撃の幅が広がるし、大きな武器になるだろう。

 愛の力はよく分かんないけど。




 場外に弾かれていたイーディスさんが再び舞台に上がり、ティダ兄に声をかける。


「見事だ」


 そう言いながら、イーディスさんは兜を脱ぐと…

 現れたのは三十代前後くらいの男性。

 シブい声から想像していたとおりの美丈夫だった。


『な!?に、兄さん!?』


 アネッサ姉さんが、イーディスさんの顔を見て驚きの声を上げる。

 …兄さん?



「兄さん…?あなたはアネッサの兄なんですか?」


「…ああ。本名はイースレイと言う。…ここでは何だから決勝が終わった後で話をしよう」


「…はい」



 おお…何だか意外な展開だ…


 アネッサ姉さんは駆け落ち同然にティダ兄についていったとは聞いてたけど、家族の話は聞いたことがない。

 これは気になる…私も妹分としては話を聞いておきたいところだ。



『え、え〜と…何だかよく分かりませんが…』


『準決勝は終わりだ。プライベートの話は気にしないで、取り敢えず進行したらどうだ?』


『そ、そうですね…さあ!これで準決勝第二試合は決着が付きました!!素晴らしい戦いを見せてくれた両選手に盛大な拍手をお願いします!!』


 ワァーーーーッッ!!


 パチパチパチパチッ!!!


 

 こうして、準決勝第二試合はティダ兄の勝利で終わった。

 ちょっと気になる話もあったが…

 休憩を挟んだらすぐに決勝だ。


 相手はティダ兄…気心が知れている相手とは言え、試合となれば本気でやるよ!

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