再開
小鳥のさえずりで目が覚めた。
「んぅんーーーーーーここは?そうか実家か。懐かしいな。このにおい。この景色。帰ってきたぞー!ん!?気持ち悪い。声が高い。あーそーかーまだ声変わりしてなかったかー。はぁー」
「・・・・・・・・。」
部屋の扉の近くに一つの影があった。まるで不審者でも見ているかのような目線を送ってくる。そうこいつが俺の最愛の幼馴染高山ゆうひである。俺が通っていた千本浜中学の制服の紺色のセーラー服に身を包んでいる。紺色のセーラー服に髪は黒色をしていて肩あたりまで伸びている。体の線は細く胸はまあ中学生なので察してほしい。ふくらみかけである。顔は端正に整っている。なぜか自然と涙が出た。それは生を喜ぶ涙なのか。それともこれから起きる悲劇を悲しむ涙なのかはわからなかった。
「いーくんが壊れた?ていうか起きてるなら早く学校行く準備してよー。」
やっぱりだ。俺とゆうひはいつも一緒に中学へ通っていた。ゆうひが病弱なためだ。まぁいつも俺が寝坊するせいでゆうひにいつも起こしてもらっていただけだが。懐かしいその声に少し愛しさを覚える。そして俺はまだ慣れないいつもよりすこし高い声で返事をする。
「あぁ悪い。今準備するから下で待っててくれ。」
「うん!待ってるね!」
そういうとゆうひは階段を降りリビングへと向かうのだった。ああそうだ。いつもそうだった。いつも太陽みたいに明るく俺を照らしてくれてた。この温かさが懐かしい。
「さて準備をするか。」
俺は勢いよくカーテンを開ける。窓から明るく差し込む太陽と風に舞う鮮やかな桜吹雪が俺の戦いを
俺はクローゼットを開き懐かしい千本浜中学の制服に身を包む。黒色のブレザーに青ネクタイだ。
「ネクタイが青ってことは中三か。本当に17年前にタイムスリップしてる・・・・・。」
壁に貼られたカレンダーを見る。4月の13日までバツ印がつけられている。
「てことは今が4月14日だからタイムリミットまで一年弱か。俺がやることは2つ、鍵の欠片を探すこと、ゆうひを救う方法を模索することだ。絶対に救ってやる。過去を変えるんだ。」
そう意気込んで一階のリビングへと向かうのだった。
「おはよう。いーちゃん。ゆうひちゃんが待っているわよ。」
そう俺の名前を呼ぶのは海野南35歳。いぶきの母親である。スーツに身を包んでいる。南は近所の銀行で働いている。いぶきの父はいぶきが生まれて早々に離婚したためいない。ずっと南ひとりでいぶきを育ててきた。そのおかげでというべきかそのせいでというべきかはわからないが、32歳のアラサーになっても俺のことをいーちゃんと呼んでくる。マザコンと思われてしまうからやめてもらいたい。
「ああおはよう。ふぁーあ。」
「!!!!!」
「!!!!!」
出勤準備中の母となぜか人ん家で紅茶を飲んでくつろいでいるゆうひがなぜか驚いていた。なぜだ。ただ挨拶しただけなのに。あくびをしながらしたのがまずかったか?
「どうかしたか?」
「いや・・いーちゃんが挨拶してくれるのいつぶりかしら。驚いたわ。」
「いーくんやっぱ今朝からおかしい。」
「んんん?」
ああそうか俺今中三だった。ちょうど反抗期の時期か。ゆうひとの再会ですっかり忘れてたー。よし今度から反抗期を装おう。
「まあいいわ。早く朝食食べちゃいなさい。」
「ああ。うぉー懐かしいな。」
今日の朝食はバタートーストに牛乳のベーコンに卵焼きといういかにも朝食という感じの献立だった。しかし、いぶきにはとても懐かしく愛くるしい味に感じられた。というのもいぶきは大学から一人暮らしを始めはや十四年懐かしさを感じるのも当たり前である。おまけにいぶきは仕事に嫌気がさしていたので朝食も食べる気にならず出勤時間ぎりぎりに起き何も食べずに出勤というルーティーンが定着していた。そのためそもそも朝食が十四年ぶりなのである。
「どうしたのいーちゃん。なにか変なものでもあった?」
「いやなんでもない。」
「そぅ?」
「いーくん、早くしないと遅刻しちゃうよー。」
「おおう。」
朝食を口へと流し込み、俺といぶきは学校へと向かった。