わらじつき (連作狂歌)
活動報告に投稿した物に若干手を入れました。
【草鞋憑き】
はいかいのかいまく m(_ _)m
雪の降り積りたる或る日の事。雪上に草鞋の片ひとつ落ちてあるを拾う。
白雪に 紅の花緒の 黒草鞋
荒き毛羽立ち 燃え立つ焔
しらゆきに
べにのはなおの
くろわらじ
あらきけばだち
もえたつほむら
真っ白な雪の上に、紅い鼻緒の黒い草鞋が片足ひとつだけ落ちていた。解れて荒々しく思える程に毛羽立っている様子がまるで黒い炎が燃えているようにも見えて、なんとも言い難いあやしさである。
戯れて やをら柔らに 黒草鞋
揉めばしとどに 濡れそぼちたる
たわむれて
やをらやわらに
くろわらじ
もめばしとどに
ぬれそぼちたる
……訳も無く、黒い草鞋を拾い持ち帰って来てしまった。ふざけた気持ちで黒い草鞋をゆっくりやわやわと揉んでみると、水気をたっぷりと吸っていてぐっしょりと濡れていた。
撫でなぶる 匂いあやしき 黒草鞋
花緒捏ねくり 弄う先坪
なでなぶる
においあやしき
くろわらじ
はなおこねくり
いらうさきつぼ
……何故か興に入ってしまい、黒い草鞋を撫で回し、鼻緒を捏ねくり先坪をいじり回す。そうしている内に何とも言えない匂いを感じて昂ぶり、益々なぶってしまうのだった…………。
物狂い 吸い舐めこじる 黒草鞋
突き上げくじり 月は輝る夜
ものぐるい
すいなめこじる
くろわらじ
つきあげくじり
つきはてるよる
……私はおかしくなってしまったのだろうか?黒い草鞋に吸い付いて舐め回し舌先でこじり回す。狂った様に突き上げて抉っていると、いつの間にか月が煌々と輝く夜になっていたのだった…………。
つきづきし 付喪神憑き 黒草鞋
放つも難く 憑き重ね憑く
つきづきし
つくもかみつき
くろわらじ
はなつもかたく
つきかさねつく
……付喪神に取り憑かれるとは、正にこのような有り様なのだろう。もはや棄てる事ができない程に、黒い草鞋は幾重にも私に取り憑いてしまっているのだ…………。
括り吊り 打ち付け放つ 黒草鞋
深く憑き付く 壊さんとても
くくりつり
うちつけはなつ
くろわらじ
ふかくつきつく
こわさんとても
この物の怪から逃れるには、もはや壊してしまうしかない。そう思い、縛って吊るして乱暴に打ち付けて放り出すが、既に深く取り憑かれてしまっていた私には壊す事など到底出来はしないのだった…………
明けたれば 乱れあさまし 黒草鞋
しどけなきさま いとしいみじく
あけたれば
みだれあさまし
くろわらじ
しどけなきさま
いとしいみじく
……ふと我に返れば、夜が明けていた。差し込む日に照らされているのは私が滅茶苦茶にした黒い草鞋。その乱れきった有様に、どうしようもなく愛しさが込み上げて来るのだった…………。
明らみて 濡れて滑りて 黒草鞋
匂い叢立ち また憑き狂う
あからみて
ぬれてぬめりて
くろわらじ
においむらたち
またつきくるう
……次第に明るくなって来る。黒い草鞋はまだ濡れて滑っている。むわりと立ち香る匂いに、私はまたもや取り憑かれて狂ってしまうのだった…………。
つくもつき
つきくるおしく
かみつかば
つくもかみつき
かみつきづきし
付喪憑き
憑き狂おしく
神憑かば
付喪神憑き
禍魅つきづきし
しゅうまく m(_ _)m
ヲタク道とは乃ち此れ也!(嘘)




