八話
眠いです。八話目です。
「とりあえず、乗っていただけませんか、オミン殿」
旦那様は俺に落ち着いた口調で言ってきた。
「あ、取り乱してすみません。其れでは乗らせていただきます」
「どうぞ」
馬車の中に入ると、そこには何やら高そうなクッションとかで一杯だった。入って左側に上品な服に身を包んだ女の子が眠っていたのはついで。俺は空いている右側の奥の席に座った。
「位置的にオミン殿の隣に座らせていただきますが、よろしいですかね?」
「えぇ、どうぞどうぞ」
俺が座ると、隣に旦那様が座ってきた。
「其れでは、発車させましょう」
と言うと、旦那様は少し強めにドアをコンコンと叩いた。すると、馬車が動き出す。
「さて、何を聞きたがっていましたっけ?」
「そうだ!魔法ですよ!魔法!魔法のMの字から教えて!」
旦那様は思い出したかのように“あぁ”と言いながら、魔法の説明をはじめた。
「魔法というのは、体内に存在する魔力というものを使って発生させる現象の総称です。古い言い方をすると、魔術とも言いますね」
「おぉ!魔力って何?」
「魔力というものは、人が生まれながら持つ一種の力です。魔法で使う体力だと思ってください」
「なるほど、つづけて!」
「魔法を行使するにあたって、魔力を消費します。行使する魔法の規模が大きくなると、消費する魔力も其れに比例して大きくなります。反対も比例して小さくなります」
「うんうん」
「属性によっても、消費する魔力が変わってきます」
「属性?」
「似ている魔法同士を集めた集合体です」
「火とか、水とか?」
「はい、其の通りです。この属性も、人によって得意不得意が分かれます。例えば、火属性魔法が得意な人は、水属性魔法が苦手、というふうに。基本的には、其の属性の真逆の性質を持った属性が苦手な属性になります。もちろん、例外も存在します」
「例外?」
「えぇ。火属性も水属性も得意な人であったり、闇魔法も神聖魔法も得意な人だったりと、存在します。しかし、そういう存在は全くもって希有な存在なので、見かけることはあまりないでしょう」
「へぇ」
「簡単な説明でしたが、よろしかったでしょうか?」
「うん、もう本当に得した!」
俺が満足気に頷くと、旦那様が首を傾げた。
「しかし、魔法について何も知らないというのは、不思議ですなぁ」
今まで違う世界にいたんですよ、って言ったところで信じるわけでもないし、適当に誤魔化すか。
「まぁ、あまり深いことは聞かないでください。こっちなりの事情があるんですよ」
「わかりました。恩人のことを深く聞きすぎるのも、無礼ですから」
なんとか理解してくれてよかったと、俺は心の中でため息を吐いた。
誤字脱字、間違い等ございましたら、教えてくだされば幸いです。