十一話
雪が降りましたね。もう寒いです。昨日は歩くだけで汗ばんでたというのに、すごい気温差ですね。今度の冬は暖冬だったので、こういう寒さはなかなか感じられませんでしたね。十一話目です。
「こ、これは失礼しました」
「いえいえ、普通信じませんからね、あんなこと」
「…」
「…」
馬車には再び沈黙が訪れた。さっきと変わったことといえば、一人だけ顔色が青白くなったこと。さすがに俺も沈黙には飽きたので、ネタを探す。
「そ、そういえば、この馬車はどこに向かってるのでしょうか?」
俺がそう聞くと、青白いオースが答えてくれた。
「この馬車は、王都に向かっております閣下!」
「か、閣下?」
「はっ!」
これはおかしい。閣下ってなんだよ。元の世界でも言われなかったぞ?
「閣下ってやめてくださいよ」
「そんなことはできません!一度軍人になった者は永遠の軍人であります、閣下!」
うん?
「つまり、オースも軍人だったんですか?」
「はっ!ユーデン王国陸軍第6大隊12代目大隊長のオース=ヴァン=ホープマンであります!」
ここで驚きの事実が発覚。目前の美中年は元陸軍でした。しかも大隊長。
「大隊長ですか。つまり、中佐なんですか?」
「はっ!元先任中佐であります!」
いきなりのオースの変わりように驚いていると、エリューが尋ねてきた。
「お父様、どうしたんですか?」
「オミン大将殿が私よりも上の階級でしたので、それに相応しい対応をとっているだけであります!」
いよいよエリューにも軍人口調で会話してきた。
「落ち着いてください、オース殿。もう軍人じゃあないわけですし、そもそも所属国が違うじゃありませんか」
「いいえ!他国であっても軍人は軍人!階級は階級であります!上官であることは変わりありません!」
えぇ、今の発言、いいのかい?他国軍の軍人なのに階級が自分より高いからって従うって言ってるようなもんだよ?
「頼むから落ち着いてくれ、オース中佐」
「はっ!」
絶対こいつ落ち着いてないよ。一体何があったの?さっきまでの美中年を返して?ねぇ。こんなキレッキレの軍人嫌だよ。もう散々見てきたよ。
もうエリューときたら、すごい困惑した目で軍人に変貌した爺ちゃん見てるよ。
「エリュー様、なんか、すみません。お爺様がこんなんになっちゃって」
俺がそういうとエリューは困惑している目のままで、ゆっくり首を横に振った。これ絶対困ってるよ。絶対大丈夫じゃないよ。
俺がそう困ってると、なぜか馬車がスピードを落としてきた。気になって窓から外を眺めると、そこには高く聳え立つ城壁のようなものが見えた。
誤字脱字、間違い等ございましたら、教えてくだされば幸いです。
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令和二年師走五日:設定ミスがありましたので、修正しました。