6話 結果
霧の中を歩いていた。
魔法使いの女性と共に。
「こっちに歩いていけば、町にいけるはずだ」
「そうか……」
「おまえは、これから、どうするんだ?」
「俺か……どうしたら、いいんだろな、俺は……」
このまま、死ぬか?
それとも、生きるか?
「生きるべきか、死ぬべきか?」
「なら生きるべきさ」
魔法使いの女性は、そう即答した。
「死ぬことなんてことは、いつでも、できる、なら、思いっきり生きてみるもんさ」
「でも、俺は、一度死んで、生き返った、ゾンビで……」
「ゾンビとして、復活したって、あんたは、ちゃんとした人間だ」
「人間……」
「まあ、なんだ、あんたは、私の命の恩人なわけだし、行くとこなかったら、あたしのとこにくればいいさ」
「……ありがとうございます」
「ふん、いいって、ことさ」
この魔法使いさん、いい人で、よかった。
さっきまで、仲間を殺された、怒りで、怖い人に見えたが、ほんとは、優しい人なのだろう。
「そう言えば、自己紹介が、まだでしたね、俺の名前は」
「しっ、自己紹介は、後だ」
魔法使いの女性が、杖を構え、戦闘態勢に入った。
すると、霧の中から、行く手を塞ぐように、スケルトン3体が、あらわれた。
俺も持ってきた、剣を構えた。
「俺が、前に出ます」
「うむ、後ろは、任せたまえ、あたしの魔法で、こんなやつら、一掃してくれるわ」
俺は、前に出ようと一歩踏み出した。
すると、剣が、魔法使いの女性の腹を貫いていた。
「えっ……」
魔法使いは、驚いたように、突き刺さった、剣を見る。
「なっ……」
なんだこれ!?
俺も、その突き刺さった剣を見て、驚いた。
魔法使いの女性を刺したのは、俺自身だったからだ。
「なんで……?」
そう言い、倒れる魔法使いの女性。
「いや、俺じゃない」
どういうことだ?
俺の意識とは、関係なく、体が、動いた?
スケルトン達は、止まり、こちらをうかがっている。
「おい、お前の後ろ……」
剣を刺され、苦しんでいた、魔法使いの顔が、なにかに怯えるような顔になった。
恐る恐る、後ろを見ると、黒いなにかが、いた。
人の姿をしているが、人と言っていいものだろうか。
「誰だ……?」
そう言いつつも、誰かというのは、わかっていた。
だが、予想とはずれていてほしかった。
「お兄ちゃん……」
それは、俺の妹、レイナの声だった。
「レイナなのか……!?」
「もうひどいよ、お兄ちゃん、妹を忘れちゃうなんて」
レイナは、いつもの調子で、話かけてくる。
「まあ急いで、生き返って、首をくっつけて、傷を塞いで来たから、見た目、ちょと悪いかもしれないけど、お兄ちゃん、どっか行っちゃうから、急いで、迎えに来たんだよ」
「レイナ、そんな状態で、大丈夫なのか?」
「うん、2,3日もすれば、元通りの、私に戻るから、心配しないで」
「なんで、俺が、魔法使いさんを刺したんだ?」
「それは、お兄ちゃんを生き返したのは、私だし、近くなら、お兄ちゃんの体を操ることなんて、簡単だよ」
「操る!?」
「でも、心配しないで、だからって、お兄ちゃんにエッチなことなんて、しないよ」
「化け物が……」
魔法使いの女性が、そう言った。
「あっ、逃げだした、魔法使いだ、新しい魔法習得のために、いろいろ聞き出すつもりだったけど、お兄ちゃんを誘惑して、騙すなんて、ひどいことして」
「ひどいこと? それは、お前だ!」
「でも、残念、お兄ちゃんは、私のなの、だから、連れて帰るね」
「おい、待て!」
魔法使いの女性は、立ち上がろうとするが、もう、立ち上がる力が、ないみたいだ。
「そうそう、あなたも、私達のご飯にしようと思ってたけど、お兄ちゃんに擦り寄る卑しい雌は、お兄ちゃんに胃袋に入れたくないから、お前は、魔物の餌ね」
レイナが、そう言うと、霧の中から、多数の赤い目が、こちらを見ていた。
「じゃあね~」
「おい、待ってくれ、レイナ、その人を助けてやってくれ」
「さあ、私達の場所に帰ろう、お兄ちゃん」
俺の足は、操られ、勝手に、動き出す、魔法使いさんを置いて。
後から、魔法使いさんの悲鳴が、聞こえたが、俺は、振り返ることも、戻ることも、できなかった。




