4話 謎の指輪
オーク襲撃から、次の日のことである。
「お兄ちゃん、今日は、ちょと外行ってくるよ」
「外?」
「オーク肉ばかりじゃ、飽きるだろうし、なんか食材でも買ってくるよ」
「おお」
ずっとオーク肉ばかりで、飽きてたところだから、正直ありがたい。
まずくは、ないのだけども、こう毎日だと、飽きるものだ。
「それに、お兄ちゃんに、渡したいものあるし」
「あげたいもの?」
「ううん、なんでもないの、それじゃあ、行ってくるね」
レイナは、骨の龍に乗り、飛び立っていった。
てか、あんな骨龍もいたんだな。
「さてと」
今日も、自分の仕事の薪割りでもやるとするか。
ん? あれは……
なんか、綺麗な指輪が、落ちている。
おお、ちょうど、ぴったりだ。
「あら、私、結構似合うじゃない」
なに馬鹿なことを一人で、やってるんだろう俺……
この指輪は、レイナの落とし物か?
それとも、昨日のオークの落とし物だろうか?
まあ、いいや、レイナが、帰ったら、見てもらうか。
「んっ?」
スケルトンか。
今日も、オークを運んでいるのか。
まあ、いつも見慣れた光景だな。
そう思い、見ていると、なにか、いつもと様子が、違った。
なっ!?
あのスケルトンが、運んでいるの、オークじゃなくて、人間じゃないか!?
なんで、スケルトンが、人間の死体を運んでいるんだ?
なんだろう、嫌な予感が、する。
ちょとついて行ってみるか。
スケルトンの歩行速度は、人間の速度と変わらず、追いつくのは、容易だった。
少し、距離を取り、跡をつける。
そして、小さな小屋にたどり着いた。
「ここか?」
スケルトンは、小さな小屋に入る。
中に入るべきか、待つべきか。
悩んだ末に、待つことにした。
3分経って、スケルトンが小屋から、出てきた。
さてと入るか。
だが、そこは、なにもない部屋だった。
さっきの人間の死体は、どこに消えたんだ?
スケルトンだけしか、出てこなかったが、はずだが。
「これは……」
床に、取っ手が、ある。
開けてみる、そこは、地下に続く、階段だった。
階段入り口に掛けてあったランプを手に取り、暗い階段を降りて行った。
そして、たどり着いたのは、拷問室のような部屋だった。
人間だと思われる、骨が、壁に手錠で、繋がれている。
テーブルの上には、さっきの人間の死体がある。
「なんなんだ、ここは?」
「誰だ?」
人の声!?
「誰かいるのか?」
「ここだ」
そこには、壁についた、手錠に囚われてる女性がいた。
格好から、魔法使いのようだ、目には、布で、目隠しされている。
足には、ナイフが、刺さったままになっている。
「あの、大丈夫すか?」
「誰だ?」
よかった、生きているようだ。
「このあたりに、住んでいるものです」
「この辺に住んでるだと?」
「あなたこそ、こんなところで、なにをしているんですか?」
「まあ、まず、この目隠しを外してくれないか」
「はい」
目隠しをはずと、緑色の目が、こちらを見た。
すると、急に、目つきが、するどくなった。
「おまえは、昨日、いた、あいつの仲間か!?」
「あいつ?」
「霧のネクロマンサーのことだ」
霧のネクロマンサー?
「まあ、いい、お前の記憶を見さしてもらうぞ」
「そんなことが、できるんですか?」
ちょとその足に刺さったままのナイフを抜いてくれ。
「そしたら、止まっている血が、出ますよ?」
「構わない」
ナイフを抜いた。
ナイフには、奇妙な魔法陣が、描かれていた。
「癒しの力、傷を癒したまえ」
すると、女性の足に、空いた、穴が、塞がっていった。
「すごい……」
「次は、お前の記憶を見させてもらうぞ、魔眼! 発動」
女性が、そう言うと、目の中に、魔法陣が、浮かぶ。
そして、魔法陣が、光りが、消えた。
「ほお、なるほどな」
こんなので、わかるのか?
「お前は、あのネクロマンサーのお兄さんで、何も知らないんだな」
「どういうことです?」
「おまえの妹は、霧のネクロマンサーと言われている、そして、人々を襲っては、殺しまわっている、極悪人だ」
レイナが、極悪人!?
「嘘だ、レイナが、そんなことをするはずない」
「あいつは、村の人達を連れ去り、そして、魔法の実験体にしたり、魔物の餌にしてきたやつなんだ」
「そんなはず……」
「それと、お前が、オークだと見ていたのは、人間だ」
「人間だと!?」
「お前には、人間が、オークに見える、幻覚魔法が、かかっている、しかし、拾った、幻覚飛ばしの指輪で、その魔法も解けたようだがな」
なら、俺が、オークだと思っていて、食べてたのって……
「元々は、その指輪は、幻覚魔法を警戒して、仲間のみんなが、つけていたはずなのに……」
「そうだ、あの人たちは?」
「死んだよ、私の前で、殺して、肉を解体しやがったんだ、あいつ……」
そう言うと、女性の目から、涙が、流れた。
俺も、泣きたい。
だが、この体からは、涙が、出ないのだ。
「今度こそ、あいつの息の根を止めて、みんなのために、復讐してやる」
涙をぬぐった、女性の目からは、強い意志を感じられた。
「レイナが、人を……」
レイナは、俺の妹だ。
この部屋の現状から、見るに、彼女が言っていることは、本当だろう。
罪もない人を、レイナが、殺すというのなら、俺の選択は……




