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短編小説集  作者: Raa★
4/4

「窓の外の広葉樹」

男主人公、現代、バッドエンド、交通事故、全年齢


“僕”

男。“君”と出かけていた。


“君”

女。“僕”と出かけていた。

朝日が差し込み、日光に照らされるベッド。その上に"彼"は起きた。今日は"君"と出掛ける予定が入っている。彼はベッドから降り、服を着替え、君との待ち合わせ場所へ向かった。


まだ君は来ていないようだ。音楽プレイヤーから伸びるイヤホンを耳に当て、君を待っていると、5,6曲流れ終わった当たりで君が来た。

「送れてごめん!」

別に構わないのだが、人というのはやけに謝りたがる。それじゃあ行こうかと言って、近くにあった喫茶店へと向かった。


喫茶店は日曜日の朝というのもあって、そこそこ混んでいた。十数分程度待った(のち)、席に座る事が出来た。僕はメニューに大々的に載っていた期間限定らしいメニューを頼んだ。別にどれも美味しいだろうから、何かをわざわざ選ぶ必要などないだろう。そう思っての選択だ。ようは選ぶのが面倒なのだ。それに対して、君はうーんうーんと唸りながらメニューと睨めっこしている。こういう所がまさに僕と対照的な所だと僕は思う。逐一喜び、怒り、悲しみ、悩み。そんな他愛もない事が楽しい、と君は言うのだが、僕には(いささ)か共感出来ない。僕はよく無感情な人だと言われる。クールだと言ってくれる人もいるが、結局はただの仏頂面(ぶっちょうづら)だ。こんな僕なんかと週末を過ごしていて、君は楽しいのだろうか。なんてそんなことを考えている所が無感情だと言われる所以(ゆえん)だろうか。


カフェで昼食をとり、服屋などをまわっていると、かなり車通りの多い交差点に来た。どうやら君は道を挟んだ向こう側に気を引く店があったらしく、走り出して行った。

その瞬間、信号機は赤く光った。車が再び往来する。君の華奢な身体は無機質な金属製の乗り物に打ちのめされた。気が遠くなり、呆然とする中、周囲からは悲鳴と救急車のサイレンが鳴り響いてきていた。


気がつくと、白い床と壁に囲まれた室内にあるソファに僕は座っていた。視線を上げると、「手術中」のランプが静かに光を放っている。すると、ドアが開き、君を寝かせたベッドが現れた。僕は義務的に治療の結果を聞いた。

「命に別状はありません。」

「ただし、著しい脳の損傷により、遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)に陥りました。」

時が凍った様だった。遷延性意識障害。俗に言う、"植物状態"である。君は病室に運ばれ、僕もその後をただ呆然と着いて行った。


陽光が差し込み、日光に照らされるベッド。その上に君は横たわっている。その目は何かを見ている様で、何も見ていないのだ。

窓の外に、広葉樹の葉が見えた。"植物"人間となった君を揶揄しているかの様に。


緑が目に、眩しかった。

最後まで読んでくださってありがとうございました!

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