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短編小説集  作者: Raa★
3/4

「-"PANDORA" Hearts-」

女主人公※、男主人公※、ファンタジー、バッドエンド、全年齢


ディズ

女。10→12→15歳。魔法使いの名門一家に生まれる。


ディズの兄。成人。魔法使いの名門一家に生まれ、王都の政府機関で働いている。


※途中から主人公がすり変わります。

「ファンタジニアム」と呼ばれる国があった。この国には、「ファンタシスト」と呼ばれる所謂(いわゆる)魔法使いが居た。ファンタシストはファンタジニアム中に溢れる「ファンタクス」と呼ばれる魔法物質を操り、様々な魔法を扱った。

そんな国に、とある一家があった。父、母、息子と国家クラスのファンタシストになった、名門一家だった。そして、そんな一家に新たに娘が生まれた。ディズと名付けられた。父母は、ディズをファンタシストにしようとした。この国の人間は、少し訓練をするだけでファンタクスを見、操れるようにはなる。その腕前によって実力が変わる訳だが······。ディズは、ファンタクスを操れなかった。いや、ファンタクスを見ることが出来なかった。ファンタジニアムにおいて、このような人間への呼称がある。【ファンタノウン】、ファンタクスを知らない者。所謂障害者の扱いだ。父は理不尽にも激怒し、ディズに暴行を繰り返すようになっていった。

ある日、ディズは家を逃げ出した。苦しみからディズは逃げようと、10才にして家から出ていった。父は手の平を返したようにディズを心配し、魔法で位置を調べあげようとした。だが、ファンタノウンの利点がここで発揮された。通常、ファンタジニアムの人間は体内に微量のファンタクスを保有しているため空気中のファンタクスを見たり操ったりすることが出来る。ファンタノウンは、ファンタクスが見えない者。つまり、体内にファンタクスを保有していない人を指す。魔法は、行使する相手の保有するファンタクスと操るファンタクスが反応し、魔法が相手へと行使される。そして、ファンタノウンはファタクスを保有していないのだ。魔法は行使できない。これこそがファンタノウンの最大の利点“魔法が効かない”だ。

さて、逃げ出したディズはと言うと、王都ジーニアへ歩いて行った。何百キロもある道のりを、何日も掛けて。途中で何度か人と会えば、色々な物をもらったりしながら歩いて行った。この時、ディズの失踪の噂は国中に広まっていた。が、探そうとする人、見つけても報告する人が出なかったのは、既に社会がディズの父に対して反対的に動いていたからであろう。そして、ディズはジーニアへと着いた。ジーニアには、独り立ちして政府機関で仕事をしている兄の家があった。兄はディズを受け入れ、匿った。兄は、ディズを学校に行かせることはしなかった。兄ほどの力がある人物なら一人の女子を学校へ行かせるくらい簡単なのだが。兄はこう考えたようだ。「ファンタノウンであるディズが虐められては敵わない」と。

父は、力があったが、ファンタノウンである事がわかった瞬間にディズを見捨てた。が、兄はそうでなかった。ファンタノウンであったディズも大事に扱い、育てていった。すると、ディズが成長し、中学校に通えるような年齢になった頃、兄はとある事に気付いた。ディズはファンタノウンである以上、ファンタクスを保有していないはずなのだが、保有していたのだ。それも、信じられないほど大量に。が、一定の周期でのある日を境に急にファンタクスが0となる。そして、そのある日に兄は、ディズを見張ってみた。すると、ディズは夜に家を抜け出していた。気になってついて行ってみると。······信じられないものを見た。膨大な量のファンタクスがディズの体から破裂する様に抜け出した。兄は、ディズの帰った後もそこに居座っていた······。

兄は気になって図書室でファンタノウンについて調べてみたが、やはり、普通、ファンタノウンにこんな事は起きない。が、気になる記載を見つけた。ファンタノウンと混同される存在として、ファンタクスバーンと言う現象を起こす人物、「パンドラ」が居ることを。その本によると、パンドラとはファンタクスを膨大な量保有できるが、それによりかえって操りきれず、よってファンタノウンと混同される。そして、ファンタクスバーンは、操れないために体内に溜まる一方のファンタクスが解き放たれる現象だという。つまり、“ディズはパンドラであった”。間違いないだろう。

兄は、ディズにこの事を話した。ファンタクスバーンの現象を知っている、君はパンドラである。そして、ある物を渡した。兄が仕事仲間から貰った「パンドラボックス」だ。パンドラについての章には「パンドラボックス」なるものの存在が書かれていた。パンドラボックスは、パンドラの保有する膨大な量のファンタクスを貯めておける装置で、パンドラボックスから体内にファンタクスを注入する事でファンタシストの様にファンタクスを操れる様になる。しかも、パンドラボックス内のファンタクスを操る事で、より安定して魔法を扱える。パンドラは、パンドラボックスに縋ることで強大な力を持つファンタシストになれるのだ。ディズは魔法を使える事を酷く喜び、魔法を多用した。ディズはファンタジニアム中にその名を轟かせた。名門一家の血筋と、パンドラボックスの力で、ファンタジニアム随一の力を手に入れた。




だが。兄は重要な事を見落としていた。ファンタノウンについての本、パンドラの章の最終部。『パンドラハーツ』パンドラボックスをあまりにも多用していると、貯蓄するファンタクスと一緒に自らの精神がパンドラボックスに流れ出してしまうという。精神の大部分がパンドラボックスに流れ出てしまうと、パンドラボックスに精神を蝕まれてしまう。そして······パンドラボックスに操られた精神を《パンドラハーツ》と言うと。もう、ディズは手遅れだった。パンドラボックスはこの世の全ての絶望を詰め込んだ箱。そんな箱にパンドラハーツを宿らされたディズは、ついに父母を殺してしまった。トップクラスのファンタシストを、手も足も出ない程までに圧倒して。パンドラボックスを使い、膨大なファンタクスを操れる様になったディズは、パンドラハーツによって感情を亡くした。兄は、情けなかった。最愛の妹、ディズをこんなバケモノにしてしまった事を。兄は、哀しくも。パンドラハーツの部に記されていた魔法を使った。ファンタクスを消す魔法だ。パンドラはパンドラハーツを宿らされてしまうと、パンドラボックス無しでは精神が崩壊してしまい生きていけない。そこを突くのだ。パンドラボックスも、パンドラの持つ膨大な量のファンタクスが無ければ機能しない。だから、ファンタクスを消すのだ。ファンタクスを消せば、パンドラボックスが停止する。パンドラボックスが停止すればパンドラハーツは消える。パンドラハーツが消えれば···············ディズは死ぬ。


―――――兄は、頬に雫を垂らしながら魔法を放った。魔法は美しいまでに白く輝き、ディズを白く染めた。ディズは、倒れた。パンドラハーツを失い、精神を亡くしたから。


ファンタジニアムに、ディズの死因は伝わらなかった。父母を殺したことは、ディズがその圧倒的な力に起因する権力で揉み消したから。ディズが変貌したことは、ディズの力によって権力を増した兄が隠匿したから。ディズは静かにこの世から去り、パンドラボックスは政府の方針により全て破壊されることとなった。共に、パンドラと、パンドラボックスについての記載も、書物からだんだんと消えていった。

最後まで読んでくださってありがとうございました!


また、作中の言葉を決めるにあたって使用したメモがあるのでここに投下させていただきます。(あくまでメモ書きである為書いてある言葉の意味等が正しいかどうかは保証しかねます)


〜おまけ〜

ファンタジニアム→ファンタジー(幻想的)+〜ニアム〈語尾詞〉

ファンタシスト→ファンタジー(幻想的)+〜シスト(《神聖的なものを》操る人)〈語尾詞〉

ファンタクス→ファンタジー(幻想的)+タクス(特に意味は無い)

ファンタノウン→ファンタジー(幻想的)+アンノウン(未知)

ジーニア→ファンタジー(幻想的)[抜粋]+〜ニアム〈語尾詞〉[抜粋]

ファンタクスバーン→ファンタジー(幻想的)+タクス(特に意味は無い)+バーン(爆発)

パンドラ>>神話にてパンドラの箱を渡された少女の名前。神話ではパンドラがパンドラの箱を開けてしまい、世界が絶望で満たされたとされる。

パンドラボックス>>パンドラの箱。この世の全ての絶望を神が封印した箱。箱の底には希望が入っていたとされる。

パンドラハーツ→パンドラ(先述の通り)+ハーツ(心)

ディズ→ディザスター(禁忌)[変形]

なお、禁忌→パンドラ

禁忌の箱←パンドラボックス

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