「悪天候」
男主人公、幼馴染、現代、バッドエンド、交通事故、全年齢
葵
男。学生。主人公。幼馴染の椛とは2人が産まれる前から家族ぐるみの付き合い。
椛
女。学生。葵の幼馴染。
ふと、窓の外に目をやると、雨が激しく降っていた。雨足は少し前に比べて強くなった様だ。
なんて、ニュースキャスターの様な台詞を紡いでいると、スマホに電話が掛かってきた。幼馴染の椛だ。椛の親と僕の親は、僕らが産まれる前から仲が良かったらしい。当然そのまま子の僕らも仲良くなり、生まれた時からずっと一緒で、まるで兄妹みたいだった。
「ちょっと!聞いてんの!?」
「あぁ、ごめん。もちろん聞いてるよ。やっぱり目玉焼きにはソースだよね。」
「そんな話してないわ!しあさっての夏祭りに着る浴衣。見せに今から行くからね!」
ツーツーツー···。どうやら椛が家に来る様だ。わざわざこんな大雨の時に見せに来なくても···。多分、こんな日でも俺と会いたいんだろうなんて考えてると殺されそうなのでやめることにした。そういえば、自転車で来るなんて言ってたな。この雨の中狂ってるんじゃないのか?行くべきは夏祭りなんかじゃなく精神科かもしれない。なんて椛が聞いたらじっくりことこと煮込まれそうな事を考えていると、椛が来た―――――なんて言いたいのだが、なかなか来ない。あいつなら自転車をスリップさせて3回転トーループでも決めそうだ、なんてトントンサクサク切り刻まれそうなことを考えていると、また電話が掛かってきた。
「まだ来ねえのかよ椛w」
「葵くん?椛のお母さんだけど」
その声からは動揺の香りがした。
「あ、お母さんだったんですね。ごめんなさい。どうしました?」
「あのね···椛が、椛が···」
その声には涙という不純物が混じった。
「どうしましたか?」
「椛が、撥ねられたの···」
椛が事故に遭った···。その言葉を聞いて、僕は意識が遠のく様だった。そして、搬送先の病院などの情報を聞くと、すぐさま兄に車を飛ばしてもらい、病院まで行った。
事故の経緯も聞く事が出来た。この雨で自転車で転んでしまい、運悪くそこに車が通った、との事だ。そして、今は集中治療室、と。
·········1時間か、2時間か。はたまたそれ以上か。そんなふうに感じられたが、たかが30分だった。集中治療室のランプが消え、扉が開き、担架に乗せられた椛が出てきた。看護師の様子からは、緊迫も、安堵も感じられなかった。結論から言おう。椛は懸命の手術も虚しく、この世を去った。
大雨は、椛の命も濡らしてしまった。そして、僕の心にも陰を落とした様だ。心の中は土砂降りだ。
ふと、窓の外に目をやると、雨が上がり、空は晴れ渡っていた。心の中とは相反し、皮肉にも雲一つ無い快晴だった。
最後まで読んでくださってありがとうございました!