表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Two boys serving.

作者: 木長きねり

序章

校舎裏で両雄が対立している。

右にいる少年はデイヴィッド。テキサス出身の父を持つ生粋のカウボーイだ。

左にいるのはショウ。元暴走族の両親を持つ生粋の暴走族だ。

「「いくぞ!」」

牛に乗ったデイヴィッドと、自転車に乗ったショウが互いを目指して走り出した時、空から指輪が二つ降ってきて、それぞれ二人の指にはまった。

ボシュー、と音がして、辺りは濃い霧に包まれた。

その瞬間、二人は少女の姿になった。

「「なんじゃこりゃー!」」

指輪と共に落ちてきた紙には、功徳を積まねば指輪は外れないと書いてあった。

「ふふ、見ましたわよ」

校舎の屋上から、二人を見下ろす影があった。

そこにいた少女の名前はアリス。二人が通う高校の模範生徒でありトップである。

「あなた方、(わたくし)に付いていらっしゃい」

「なんでお前の言うことを聞かないといけないんだよ、ボケ」

「暴走族風情が私に楯突こうなどとは。何ともおこがましいですわ。いいですか、お二人は、牛や自転車に校内で乗るという校則違反を侵しました。実は、こっそりと録画していましたの。学校側にバレたら、退学ですわよ」

かくして、アリスに弱みを握られた二人は、アリスがメイド長を務めるメイド喫茶で、夏休みの残り二週間、働くことになったのである。


メイド日誌①

「Get out of here, you scumbag.」

「あなたのその野蛮な英語、お客様の前では絶対に使わないでね」

メイド服を着せられた二人は、メイドとして働くために、絶賛トレーニング中であった。

「俺の英語のどこが野蛮なんだってんだ、ああん?」

「Don't you realize that your English is just vulgar, you coming from Texas?」

「くそっ」

「イングランド出身のメイド長アリス様を甘く見ない方がよろしいですわよ」

「後、何で俺の名前がヴィクトリアなんだよ」

「あなた、日本人には見えませんし、見た目は女の子ですからね」

二人が加わったことで、メイド喫茶のメニューに二つ新項目が加わった。


【新メニュー1 萌え萌え決闘 1500円】

・勝ったご主人様には、メイド式カウボーイハットをプレゼント

・負けたご主人様からは、メイドへのご褒美10000円を頂戴!ただし、生きていたらですけどね!


【新メニュー2 萌え萌えデスレース 3000円】

・勝ったご主人様には、メイドとの20分ドライブをプレゼント

・負けたご主人様には、萌え萌えトウガラシ50本を10000円でお買い上げいただき、その場で完食していただきます


【萌え萌えスペシャルマッチ 5000円】

・萌え萌え決闘と萌え萌えデスレースの両方に勝利されたご主人様には、メイド長アリスとのスペシャルタイム!

・もしもご主人様が一回でも負けたら、アリスに20000円を支払っていただき、アリスからの折檻を受けていただきます


「すみませーん。萌え萌え決闘一つ」

「常連の鈴木ご主人様、ご注文ありがとうございます」

「アリスちゃん、いつも通り可愛いね」

「ありがとうございます、ご主人様。ヴィクトリア、萌え萌え決闘よ」

「了解。死ねぇ!」

「ぐはぁっ」

デイヴィッドが撃ったモデルガンの弾が命中して、常連客の鈴木さんは気絶した。

「ふふ。後できっちり、10000円をいただきますわよ」

「アリスたん、まじドSサイコー!」

何故か、店内の客たちは興奮していた。

「アリスちゃん、僕は、萌え萌えデスレース」

「またまた、常連の岸田ご主人様。どうもありがとうございます。ショウちゃん、出番よー」

「よし来た。岸田、外行くぞ」

ショウに首根っこを掴まれた岸田さんは、河川敷まで連れて来られた。

「お前は四足歩行で、俺は原付きで、100メートル先にあるゴールを目指す」

「そんな、僕がとても不利じゃないですか」

「だから、ハンデをやる。出発するタイミングに差を設ける。30秒だ」

「ありがとうございます!」

「よし、それじゃあ、俺が出てから30秒間、スタート地点でじっとしているんだぞ」

「そんな!」

笛を持ったアリスが、ゴール地点で手を振っている。

「それでは、始めますわよ。よーい、ピー!」

「ぶおーん」

岸田さんが四足歩行を始める前に、ショウはゴールした。

「俺の勝ちだな。じゃあ、約束通り、10000円払って、トウガラシ50本をここで完食しろ」

「ありがとうございますぅー」

その日の夜、口から泡を吹いて気絶している男性が、河川敷で発見されたという。


「それにしてもよ、アリス。こんなことしてて、問題にはならないのか」

「初歩的なことを聞きますのね、ショウ。お客様には、事前に同意書にサインをしてもらっていますから、大丈夫ですわよ」

「それはそれでヤベェ!」


メイド日誌②

「おかえりなさいませ、ご主人様。ご注文は、決闘ですか、それとも、デスレースですか」

「デスレースでお願いします」

デイヴィッドとショウは、働いている内に、メイドとなる時間にやりがいを感じ始めていた。

そんな時だった。

「アリス!」

背の高い西洋人のイケメンが入ってきた。

「アルバート!」

ここに来て初めて、アリスが動揺した顔を見せた。

「僕は、君の幼なじみとして、君をイングランドへと連れ戻しに来たんだ」

「そんな…」

「おうおうおう、店に入ったからにゃあ、何か注文して下さいな、ご主人様」

「ああ、分かったよ。それじゃあ、萌え萌えスペシャルマッチを頼もうか」

「そっか。じゃあ、死ねぇ、ご主人様ぁ!」

「ふんっ」

「ごはぁっ…」

「そんな、ヴィクトリアがやられるなんて。ならば、俺が負かしてやろう。河川敷へ来るんだ、アルバートご主人様!」

「ふん。何を言っている。もうここは、河川敷ではないか」

アルバートは、目にも止まらぬ速さで、ショウを河川敷まで連れてきていた。

「何っ…くそっ、じゃあ、始めるぜ。30秒間、そこで待っているんだな」

レース開始の笛が鳴った。ところが、原付きに乗ったショウは少しも進めなかった。

「くく。私が、お前の原付きを地面に接着しておいたのだ。ついでにお前の体を原付きにくっ付けておいた。そう簡単には離れられんよ。私が四足歩行でゴールするのを、ただ眺めているがいい」

「ちくしょー!」

「そんな。ショウまでやられてしまうなんて…」

「戦勝者には、君とスペシャルタイムを過ごす権利が与えられるんだよね。楽しみだな」

「…そうですね。それでは、こちらにおこし下さい」

アリスとアルバートは、ショウの視界から消えてしまった。

「待ってくれ、アリス。行かないでくれー!」

だが、返事はなかった。

「俺には、力が足りなかった。アリスを連れていかないでくれよ…」

一時間が経過した。

「何を泣いているのですか、ショウ」

「アリス!何でここにいるんだ」

「愚問ですわね。私が、メイド長だからですわよ」

「でも、それじゃあ、アルバートはどこに…」

「あら、見えませんの?私の下にいますのに」

「アリス、僕をもっと責めてくれ」

「私とのスペシャル折檻タイムで、すっかり被加虐性癖に目覚めてしまったみたいですわ」

「だから、椅子になっているのか」

アルバートは、メイド喫茶の常連になった。


終章

二週間の勤務を終え、見事、指輪を外すことに成功したデイヴィッドとショウ。

嬉しさ半分、寂しさ半分で、メイド喫茶を去った。

ところが、喜んでいられたのも束の間。

秋の文化祭で、二人が所属するクラスは、メイド喫茶をすることになっていた。

二人の指輪は、アリスが強引に預かっていた。

今、二つの指輪とアリスの目が光る!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ