咄嗟に出てきたのは、最強の技能でした。
ごーるでん
さて。
目の前には額に青筋を浮かべるコノカの姿。
そして敵の一人の顔面をじゃがいものようにボコボコにしている武蔵。
あと突っ立ってる俺だ。
「いやいやいや俺も流石になんかした方がいいか!?」
やっと我に返り二人に聞く。
当の二人は
「「こんなのは雑魚だから大丈夫」」
の一点張りだ。てか下手したら俺も巻き込まれる可能性すらあるな、これ。
俺がそんなことを考えていると、敵の集団の後ろにいたナルシストっぽい髪をした長身の男が前に出てきて言った。
「やぁ、派手にやってくれたね…まぁ今言われたが、こいつらは雑魚だ。それならそんな雑魚共ほっといて俺と殺し合わないか?」
不適な笑みを浮かべながら男はすたすたと近寄ってくる。
横を見ると、更に青筋が増えたコノカの顔があった。こわい。
「あぁ、ちょっと雑魚すぎて物足りなかったから丁度いいわぁ。一応言っておくけど功労社のルールでもあるからね。『正当防衛の場合は殺人を許可する』ってね」
その禍々しさは狂気を帯び、近くにいた武蔵は『あちゃー…』という顔をしている。
俺がコノカの方に振り返ると…戦いは既に始まっていた。
男は何故か折れたナイフを持ち、コノカに襲いかかる。コノカはコノカで攻撃を避けながら顔面めがけて蹴りを入れている。
「ふふ…そんな怒った顔しなくてもいいんですよ?」
コノカの蹴りを清々しい顔で避けながら男は煽る。当の本人は
「あーもう殺すわ」
売られた喧嘩を全て買って笑顔で返している。
にしても男が持っているあの折れたナイフは…
そう考えていると武蔵が耳打ちで教えてくれた。
「あのナイフはあれだな、【ユニーク:熟練物質】ってやつだ。物を使えば使う程その物の特性をより強力に扱える能力で、現にコノカの顔にかすり傷が付いてるだろ?それがあのナイフの攻撃力を物語っているわけよ」
襲いかかる敵をよそ見しながら殴り飛ばしている武蔵は言った。
要はコノカの防御技能を上回る攻撃力を持っているのか…多分俺が受けたら真っ二つだろうな…
と、真っ二つになる自分を想像したとき。そして武蔵が一瞬気を逸らしたとき。
敵の一人が勇敢にも突撃、何らかの技能を用いて武蔵の懐に潜り込み…
そのまま武蔵をスルー。そして敵が狙った先は…そう、俺だ。
気付いたときには敵と自分のタイマン状態だ。
「やべっ、危ない!!」
武蔵が前に出ようとするが、更に襲いかかる敵が邪魔をして俺を助けるには間に合わなさそうだ。
そう、これは殺るか殺られるかの世界。
強い武蔵は後回しにして、弱い俺は殺される。
しかし、だ。
俺だってこのまま何も出来ず死ぬわけにはいかない。
せめて。せめてなにか能力を使いたい。
俺は自分の技能一覧を思い出す。
…いや駄目だ、考えてる間に殺られる。
『技能を使う』という一つの目的しか頭になかった俺は咄嗟に一つの技能を発動させることになる。
その技能とは…
【技能:料理Lv.1】
そう、自分の使える技能の中で最も戦闘での必要性がない技能だったのだ。
うぃーく