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第48話《終わらない死闘》

「アディヒラス! お前を許さない!」


「ガキが。私に立ち向かえるとでも。思い上がるなぁ!」


  アディヒラスが二メートル以上ある巨体が飛び上がり、前足の爪で引き裂こうと迫る。


  フォティアはそれを斜め横に飛んで躱す。一瞬空中に浮かび上がるが、それを全く怖がらずに足を伸ばして着地する。


  後ろに回ったフォティアが尻を斬りつける。


「グギャア!」


  アディヒラスは振り向いて攻撃するが、その着座にフォティアは足の間に潜り込んだ後ろに周りこんで斬りつけた。


  黒い血が噴き出し、アディヒラスが獣のごとく吠えるが致命傷には程遠い。


(もっと深く斬らないと!)


  フォティアは自分から飛び込み、足を狙って斬りつける。

  そのバランスを崩したところを突き刺そうとしたのだが、腹部に槌を叩き込まれたような衝撃が貫いた。


  「ゴボッガハッ」


 槌の正体は悪魔の後ろ足だった。防御を捨てた所為でそれが見事にフォティアの腹を捉えてしまったのだ。


「全く、人間が手こずらせてくれますね。良いでしょう。ぐずぐずに肌を焼かれ骨まで溶けて苦しんで死になさい!」


  アディヒラスが溶解液をフォティア目掛けて吐いた。


  フォティアは避けることもできずにその汚泥の中に沈んでいく。


(熱い。身体中が焼かれてる。このままじゃ死ぬ)


  全身を溶かされ焼かれる痛みの中で、フォティアは右手に別の熱を感じた。


(そうだ。まだこれがある!)


  フォティアはそれを握りしめて剣を形作る。


  アストラの見ている前で、汚泥の塊から、希望の炎の刃が突き出した。


「あれは……!」


「なんだこれは?」


  困惑するアディヒラスの目の前で溶解液が炎に焼かれて消えていく。


  そこから現れたのは無傷のフォティアであった。


  だが、アディヒラスが驚いたのはそのことではない。


「人間。お前が右手に持っているそれはなんだ。人間の力とは思えない……まさか《可能性のカケラ》はお前が持っていたのか?」


  「俺は詳しいことは知らない。ただこれだけは言える。この剣はお前を殺す事ができる力だ!」


  フォティアが一気に距離を詰める。


  アディヒラスは前足で攻撃するが、フォティアの剣がその足を断ち切る。


  斬られた左前足は炎に焼かれ、切断面からも炎が登ろうとする。


「なんだこれは!」


  アディヒラスは自分でまだ無事な膝から下をちぎり取った。


  目の前でちぎり取った肉片が燃え尽きていく。


「何故体が再生しないのだ。こんなのはおかしいぞ!」


「あなたの負けです。アディヒラス」


「黙れぇ!女神め! 俺は《傲慢のアディヒラス》。誉れ高き、冥王の五指の一人だぞ。この私が負けるはずが――」


「彼から目をそらしていて良いのですか?」


  アストラの言葉を受けて、目の前で対峙していた人間の方を向いた。


 フォティアは隙だらけのアディヒラスの顔目掛けて炎の刃を上段から振り下ろす。


  アディヒラスはそれを避けるが、顔半分が炎の舌に舐められる。


「アアアアッ!私の顔が、誰よりも美しい私の顔が!」


  アディヒラスは残った前足をメチャクチャに振り回して逃れようとするが、その動きは緩慢でフォティアから見れば隙だらけだった。


  フォティアはその間をくぐり抜けて、体の下に潜り込み、その柔らかい腹にバスタードソードを突き刺す。


  炎が蛇のようにのたうち回り、悪魔の体内を駆け巡り、アディヒラスの口から出ていく。


「ガアアアアッ! 離れろ!」


  顔半分が焼け爛れ、前足を失い、内臓を焼かれたアディヒラスがとった行動は一つ、尻尾を巻いて逃げ出すことだった。


  だが、フォティアは敗走する仇を逃す気は全くない。


  飛び上がろうとする。悪魔の背中に飛び乗り、生えている蝙蝠の羽を斬りとばす。


「止めろぉおおおおっ!」


  飛ぶ手立てを失ったアディヒラスは、フォティアを背中に乗せたまま、墜落した。


  フォティアは直前に飛んで衝撃を吸収したが、アディヒラスはその巨体を硬い石の地面にぶつける。


「ガアアアアッ! 人間のくせにこの私に傷を付けて、ただで済むと思っているのか? 冥王様が貴様を八つ裂きにし……」

 

  フォティアは話しを最後まで聞く気は無かった。


「黙れ! お前は、俺の両親や村の人を無残に殺し尽くした。その報いを受けろ! 醜い悪魔め!」


  フォティアは正面に立つと、何か喘いでいるアディヒラスの頭に剣を突き刺し、力任せに鼻のあたりまで斬り裂いて、更に深く突き刺した。


  アディヒラスの体内に先ほどとは比べ物にならない大量の炎が、肉を骨を再生する間も無く焼き尽くした。


  アディヒラスが灰も残らず、焼き尽くされた後には、炎の剣を構えたままのフォティアが立ち尽くしていた。


  「父さん 母さん。みんな仇は打ったよ」


  彼の目から一雫の涙が落ち、焼けた石の上に落ちて音を立てた。

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