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シスエン~妹怨~  作者: 遥風 かずら
アフターストーリー編
36/36

シスエン~妹怨~完結

           アフターストーリー 【妹尾姉妹せのおしまい


 【妹尾志久せのおしくサイド】


 私は女性警備員、妹尾志久せのおしく。年齢はヒミツ。普段、仕事以外で男性と出会う確率は決して高くない。それが、この仕事の欠点でもある。まして隊長、いわゆる上司は、とても年齢が離れていて対象には程遠い。


 出来れば歳の近い男性で話しやすい人が新人で入ってこないかな、なんて思っていたら、まさしく私の理想のタイプの子が入って来た。


 ちょっとやる気がないのか、ふてくされたような態度で気のない返事をしている。さすがにこれには九頭隊長も喝を入れるよね。あは、怒鳴られて態度が変わっちゃった。


 警備員は初めてかな? それはそうだろうけど、何だか年齢の割には随分と子供っぽい気がする。まるで大学生気分が抜けていないまま大人になったような。そんな雰囲気を持った人だ。


 こういう彼には私から積極的に話しかけないと駄目だよね。そしたら、気が合ったりしていつの間にか付き合ってたりしたり? 何て妄想やめよう。


「よろしくお願いします。なかさん。おいくつですか?」


 あ、しまった。初対面の男性に年齢を聞いちゃった。でも、いいのかな?


「え、あ~今の時点では28です。えっと、妹をよろしくさん?」


 何だかおかしな物言いをする人。今の時点で28歳だって。もうすぐ誕生日なのかな? って、やはり言われちゃった。昔よく言われてたあだ名を言って来た。でも、嫌な感じじゃない。


「ふふっ、よく言われるんですけど、私は妹尾志久せのおしくです。難しくてごめんなさい。これからよろしくお願いしますね」


 うん、感じは悪くない。もっと積極的に話しかけるようにしよう。そうすれば私にも”彼氏”が出来るのかもしれない。なんて、ただの願望だし、希望だけど。


 私は彼と時間が合うごとに、話かけることにしていた。


「それで、なかさんは年下好き? それとも年上がお好きです?」


 彼は何て答えてくれるのだろう? やはり年下なのかな? それだと私は最初から勝負も挑めないけど。


「あはは……何て言えばいいんですかね。自分より年下の子が好みです」


 彼は28歳って言ってた。やった! それなら大丈夫だ。うん、大丈夫。


「そうなんですね。それじゃあ私、中さんの範囲内です。きっと!」


「そ、そうですか。それは良かったですね」


 も、もしかして彼も同じ気持ちだったのかな? それなら嬉しいな。


「はいっ!! 中さん、これからもお仕事頑張りましょうね!」


「そうですね。はは……」


 緊張しているのかな? 彼は遠慮がちに答えてくれた。


 何だか最近、中さんが以前よりも若々しく見える気がする。確か28歳って言ってたけど、実はサバ読みしてた? だとしたら私は範囲外ってことになる。ううん、それは考えたくないな。


「なかさん、最近もしかしてエステとかに行ってたりするんです~? いい店知ってたら教えて下さいね」


 きっと気のせいだ。私は誤魔化すように、エステに行っているのかどうかなんてどうでもいいことを彼に聞いてしまった。


「え? そ、そうですね。所で妹尾せのおさんはこの仕事長いんですか?」


 あぁ、答えに困らせちゃったかな。はぐらかされちゃった。逆に私に質問が来るなんて……


「いえいえ、そんなことないですよ。それよりも、中さん、お休みの日にご飯行きません? 美味しいお店、知ってるんです。どうですか?」


 勢いで誘ってしまった。彼は何て答えるかな?


「まぁ、都合が合えば」


 無難な答えかな。それにご飯の誘いは私だけの意思じゃない。私の妹の意思でもあるのだから。


「実は会わせたい人がいるんです。私の名前のこと、妹をよろしくさん。だなんて言ってましたよね? 面白いな~なんて、最初思ってましたけど、あれってあながち嘘じゃないんですよ」


 半分嘘で、半分は強引な辻褄合わせかな。


「それはどういう意味なんですか? 妹さんがいて、俺に会わせたいんですか?」


「ええ、そうなんです! 私の妹、昔付き合ってたって言ってて、一緒に仕事してるって教えてあげたら、久しぶりに会いたいだなんて言ってたんですよ。彼女のコト、覚えてませんか?」


「……えっ? あ、あの……お名前は?」


 戸惑ってるみたいね。思い出したのかな?


「私の妹はみらいです。確か、中さんとは高校の時に付き合ってたって言ってました。確か未来が16で中さんが18の時です。年下がお好きなんですね」


「みらい? 高校?」


 あれ? 忘れてるのかな? 


「会えるもんなら会いたいもんですね。でも、すみません。実は俺、あまり覚えてなくて……。俺、確かフラれたはずなんですよ。フラれた時点で記憶から消去してしまうので、正直言って妹さんの事は面影すらも覚えていない可能性がありますが……それでもいいですか?」


 フラれた? そんなはずないんだけど。でも彼はそういう記憶の仕方なのね。これをあの子に伝えていいものかどうか……


「そ、そうだったんですね。……でも、一度だけでもいいので妹と会ってくれませんか?」


「分かりました。会います」


「ホントですか! 良かったです。では次の休みの日、空けといてくださいね」


 何の悩みも無くすぐに返事をしてくれた。忘れてしまっているから? それとも……?


「はい」


「中さんにお願いがあるんですけど、妹、未来の姿を見て驚かないであげてくれますか?」


 正直、あの姿を昔の彼氏に見せるのは辛いと思う。でも、彼女の意志は固いし……


「それはどういう意味です? 実は男になってたとか!?」


「そんなことあるわけないじゃないですか! あの子は普段、夜の仕事をしているので昼間はほとんど出て来ないんです。なのであの、そういう外見ってことで認識をお願いしますね」


 男になってたら、それならそっちの方がマシだったのかもしれないな。不謹慎だけど。そして彼はきっと、夜のお仕事という言葉に興奮しているんだろうなぁ。そうじゃないのに。


 ※


 ドアが開いた。約束の時間通りに、彼はお店にやって来た。私は思わず声を張り上げてしまった。


「中さーん、こっちです」


 かえって恥ずかしい思いをさせてしまったかな……


「あ、ど、ども。こんにちは……」


 私の妹、みらいは全身真っ黒な服装、サングラスを着けていた。それを着けないと生活できない体だからだ。夜の仕事なんてのは詭弁でしかない。


「中さん、この子が私の妹、妹尾未来せのおみらいです。可愛いでしょ」


「え、あ、はい。よ、よろしく。未来さん」


 可愛い、か。どう言えばいいのか私にも分からなかった。けど、そういうしかなかった。

 

「に、兄さんお久しぶり……です」


 は? 兄さん? 彼のことを兄さんですって!? どういうことなの?


 そしてこの子はサングラスを外してしまった。だ、大丈夫なの? 


「えっと、久しぶり。って言っていいのか分からないけど、実は俺記憶が……」


「……はい。知って、ます」


 え? 何? 彼と妹ってどういう関係なの? 彼の記憶が無いことを妹は知っているというの?


「中さん、何で私の妹に兄さんって呼ばせてるの? も、もしかして当時からマニアックな関係を?」


「いや、そういうわけでは。少なくとも志久さんが思っているような関係ではないはずです」


 怪しすぎる。記憶が無いってもしかして隠蔽なのかしら? マニアックな関係何て言うのもありうる。


「私は兄さんとの思い出、よく覚えていますよ。彼女として、妹として沢山、キスしてくれましたよね。何度も私の胸を。おかげでバストアップしましたし……愛してくれて嬉しかったです。でも、兄さんってそういうプレイがしたくて私と付き合ったんですか?」


 ええっ!? な、なにこの二人ってそういうことなの? キス!? プレイ!? 胸……は、恥ずかしくてこれ以上、ここに居ちゃいけない気がする。


「私のことを妹と呼び、私は先輩のことを兄さん、と。もしかしなくてもアブノーマルな関係を望んでいたんですか?」


「断じて違う! 俺はそんな邪な思いで君と付き合ったわけじゃない。俺は単純に……」


 こ、これは深すぎる会話。きっと聞いちゃいけない。


「中さん、あの~私、しばらく外に行って来るので、未来のことよろしくね! じゃっ! また」


 とてもじゃないけど二人の会話の中に私はいられなかった。それくらい、愛し合っていた…そんな関係だったに違いない。すぐに外に出てしまったけど、きっと彼には気付かれたかな。はぁ……


 外に出て、公園の辺りを散歩していた私は突然、胸の辺りが苦しくなる。ど、どういうこと……!? 息苦しい上に、体の中に何かが無理やり入り込んできている。そんな感覚が私を襲っている。


 「はぁはぁはぁはぁ……くぅっ、息が苦しい」


 そしてここで意識を失った――


 しばらくして、私は目を覚ました。確か公園を歩いていたはずなのに? 気付いたら喫茶店にいた。


「うーーん……あれ? 私どうして店内に? みらい? この子、どうしたの? ま、まさか中さん……」


「あ、いや」


 彼は口ごもって何も言えないみたいだ。その時、目を閉じていた未来が目を開けた。


「あれ、お姉ちゃん。どうしたの? 私、どうしてお店の中にいるの?」


 うん? どうしたんだろう? まるで記憶を失ったような言い方をしてる……


「何言ってるの。中さんに会いたくてここに来たんじゃない。高校の時の先輩が目の前にいるよ?」


「あの、どなたですか? 姉とはお知り合いなんでしょうか」


 何を言ってるの? あれだけ会いたがっていた中さんが目の前にいるのに! しかも、あんな深い会話までしていたじゃない。それなのにどうして?


「な、何言ってるの? あんたの元カレで、高校の先輩よ! あんなに会いたがってたじゃない」


「そう、なんだ。ごめんなさい。わたし、何も覚えてなくて」


 あぁ、中さんが泣いてしまった。私にも事情が分からないけど、どうすることも出来ない。


「泣いて、いるのですか? 何があったか分かりませんけど、元気出して下さいね」


「あぁ、大丈夫。ありがとう」


 せめてこれくらいは声をかけないと駄目だ。私が誘ったのだから。


「中さん、元気出してね。妹のこと、ありがとう。また仕事で会いましょうね! じゃあ、また」


 気まずい。もう、この場にはいられないわ。何よりも中さんが可哀想……


「なかさん? あのよく、覚えていないですけど、でもありがとうございました。では、また」


 やっぱり何も覚えていないのね。それでも去り際に、またなんて言葉をかけるなんて妹らしいな。


 しばらくして、中さんは現場で足を怪我したことを聞かされた。正直言って、妹のことがあってから顔を合わせづらくなっていたところに彼の入院。不謹慎だけど彼が入院を余儀なくされていたことは、今の私にとっては有り難かった。


 私は気持ちの整理をつけていた。そして彼は復帰をした――


 ※


「なかさん、戻って来てたんですね! お帰りなさい」


「た、ただいまです、妹尾さん」


「……足はもう平気なんですか? それに、病院では大変なことがあったみたいですね。妹のみらいも中さんのことを気に掛けていました」


「え? ど、どうして未来が俺のことを」


 そう、そうなのだ。彼の事をすっかり忘れているはずの妹が、彼のことを気にしているのだ。何か心残りでもあったのだろうか? それとも!?


「未来は中さんのことはやっぱり忘れているみたいですけど、でも、助けてもらったのは事実ですし、そのこともあってか中さんの事が気になってるみたいなんです」


「そ、そうなんですね。それは何というか、何とも言えないですね」


「何かその、ごめんね、こんなこと言って」


 中さん、また妹と会えるといいですね。私は応援しています――


 × × ×

 

 【未来みらいサイド】


 彼、中犬人なかけんとは、何だかすごく気になる人だった。たまたま廊下でぶつかった時、声をかけて来た時も感じていたけど、この人はとても変な、ううん、面白い人なんだ、と。


「きゃあっ!?」


 急いで廊下を走っていた。前をよく見ていなくて見知らぬ男子とぶつかってしまった。思わず声を出しながら、床に転んでしまった。


「悪ぃ、大丈夫か? さぁ、俺の手に掴まってくれ!」


「――え」


「どうしたかな。お兄さんは怖くないぜ? 遠慮なく、このお兄さんを頼りたまえ!」


「――は、はい」


「急ぎ? それなら俺に乗りたまえ! 超特急で運んであげようじゃないか!」


「で、でも先輩」


「ちがーーーーう!! 先輩などではない。俺の事は、お兄さんと呼ぶのだ!」


 あぁ、変な人だ。でも、きっと寂しい思いをしている人。私には姉しかいないからその感覚は分からないけど…でも、そんなことで喜ぶなら呼んであげようかな。


「に、兄さん。教室、急いで?」


「おおおおおおおお! では、俺に乗れっ! 早くっ!! おんぶしてやるぜ!」


 面白おかしくて優しい人。これが彼、犬人けんとさんとの出会い。


 私は、中先輩が卒業するまでの間、付き合うことになり、クラスのみんなからは、さんざん冷やかされた。時々、兄妹なの? なんて言われていたけどアレは普通の人には理解出来ない世界。


 私は、中先輩に会うたびに体を密着させていた。彼が私の頭を優しく撫でてくれた後の、優しいキスは心も身体も彼に預けているような感覚に陥り私は彼、兄さんに愛されている――そう感じていた。


 学校を卒業して大学か就職かを悩んでいた時、中先輩が大学へ行ったことを知った。その時点で彼との関係は自動的に消滅していた。でも、私も彼を追って、大学へ行こうかな? なんて思っていたけど、彼女がいることを知ってしまった。


 私はどうするべきなのか? 悩んでいると、突然中先輩は倒れ、原因不明で眠っているという噂を耳にした。


「――兄さん、私を見捨てないで」


 夢の中で何度も、兄さんとの思い出が繰り返された。朝、目を覚まし陽の光を浴びると、違和感に気付いた。部屋のカーテンから差し込まれるわずかな光でさえ、熱く痛みさえ感じる。

 

 医者ですら原因がよく分からないまま、私は昼間、太陽が出ている日中はそのまま外に出られなくなった。視力も問題なく、物が見えなくなったわけではないのに。


 夕暮れから夜にかけては問題なく、外に出れるのは夜ばかり。こうなっては大学に行くことは叶わないし無理だ。

 

 兄さんと別れてから10年の歳月が流れた。私の視界は相変わらずだ。そんな中、志久姉さんからあの人の話を聞かされた。


「えっ? それ、本当?」


「うん。私の職場に面白い新人君が入って来たんだけど、彼の名前、けんとくん。何だか不思議な感じのする男の子だね。イケメンじゃないけど、私のタイプかも」


「ねえ、お姉ちゃん――」


 もうすぐ兄さんに会える。待ちに待った時が再び、動き出す――


 そして彼に打ち明けて、彼の元へ能力ちからを返した。彼と最後のキスをした。そこから私は私じゃなくなった。思い出と共に、記憶が消去されてしまった。


 いつかまた、ケント君に出会えたら。いや、恐らくその時のケント君は子供になっているだろう。それでも、あの日助けてくれた男の子は紛れもなく、ケント君なんだ。


 わたし、妹尾未来せのおみらいは、見ず知らずのお姉さんとしてもう一度、彼に会いに行こう。

 今度はわたしがケント君を癒やしたい。そしてまた、新しい思い出を一緒に作っていけたら――



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