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シスエン~妹怨~  作者: 遥風 かずら
アフターストーリー編
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アフターストーリー1

    アフターストーリー【鈴音りんね


 「ケント君、また、わん君に会いに行くからね…それがわたし、鈴音りんねの最後の転生――」


 妹たちの中にあって、妹としての想いを抱いていたわたし鈴音りんねは、犬人けんと君に出会った。彼の呪いは『妹』への想いが尋常じゃなく強いところにあった。


 そんな妹としての能力ちからでもあった改変を彼に授けたわたしは、『妹』としての役目を終えて、想いと念を消した――


 彼からしたら、わたしの存在は無かったものとして記憶から消されているのかもしれない。でも、わたしには心残りがあった。


 幼馴染として遊んだ記憶も、彼には残されていなかったことになっていた。恐らく、残滓ざんさいの中において、無駄な記憶として消されたとしか思えなかった。


 鈴音わたしのもう一つの能力、転生――


 彼はわたしがいなくなったと同時に、この能力も無くなったと思っていた。だけど、転生だけは譲ること

の出来ない個人の能力。わたしは魂ごと移り変わったこの身体、この能力に頼り、最後の転生をする。


 そして、『妹』としてではなく、『姉』として彼とわたしは出会う――


 × × ×


 僕には公園で出会った幼馴染の女の子がいた。その時僕は10歳、女の子は11歳。女の子の名前は鈴音りんね。公園でいつも一人で遊んでいた子。


 僕は滑り台を滑っていたけど何度も滑っていたせいか、膝を擦りむいて泣いてしまった。1人でポツンと立っていた女の子は僕の所に来て、膝を優しく撫でてくれた。女の子は優しさに溢れていて、僕に話しかけてきた。


「キミは1人なの? わたし1人でいるのが好きだけど、よかったらわたしと一緒に遊ぶ?」


「僕、友達がいないから。でも、遊んでくれるなら遊んで欲しいな。えっと」


「わたしはりんね、これでもう友達!」


「お友達……僕は、けんと」


 僕とりんねちゃんは、同じ小学校に通っていた。学年が違うから校舎の中では会うことが無かったけど。それでも、登下校の時には、バッタリと道で会うことがたまにあって下校の時には一緒にそのまま公園に行ったりしていた。りんねちゃんは僕より一つ上のお姉さん。公園にいる時はりんねお姉ちゃんと呼んで慕っていた。僕はなぜか、わん君と呼ばれていた。


「わん君は、学校のお友達と遊ばないの?」


「嫌だもん。あいつら平気で虫とか捕まえるし、乱暴なんだ」


「そうなんだ。優しいんだね、わん君。りんねは、お話するのが得意じゃないの。だから、わん君と出会うまではここで1人で遊んでいたんだ。わん君が泣いてたからなでなでしちゃった」


「ううん、僕は嬉しかった。滑り台は楽しいよ。だけど、気付いたら膝が擦りむいててどうしようもなくヒリヒリして痛くて、我慢できなくて泣いちゃったんだ。でも、りんね姉ちゃんがなぐさめてくれて痛みもどこか行ってたよ」


「そっかそっか。わたしがお姉ちゃんなんだね。嬉しいな。わん君は毎日ここに来るの? だったらさ、明日も明後日も、ううん毎日ここで会おうよ。わたし、学校が終わったら公園にすぐ向かうから」


「うんっ! 分かった~僕、お姉ちゃんを待たせないように先に来て待ってるからね!」


 僕は学校帰りはすぐにこの公園に行くようになっていた。そして毎日のようにお姉ちゃんと会っていた。僕は一人っ子だから、お姉ちゃんがいればいいな。なんて思いながら、密かな恋心も抱くようになっていた。いつものように先に来て、りんねお姉ちゃんを待っていた。


 でも、いくら待ってもなかなか来ない。どうしたんだろう? 何か用事でもあったのかな。そう思いながら、公園を出てみると慌てて走って来るお姉ちゃんの姿が見えて、僕は周りを見ずに道路の向こう側に見えるお姉ちゃんの元へ駆け寄った。


「わん君、来ては駄目っ!!!」


「えっ」


 キキキーーーーードン!!!


 次の瞬間、僕の体は弾き飛ばされ、腕や足を擦りむいて血が出ていた。そして、りんねちゃんは僕の傍で倒れていた。赤く濁った血がりんねお姉ちゃんから流れて行き、顔色はどんどん青くなって次第に全身が冷たくなっていた。僕は僕は……


「りんねお姉ちゃん……お姉ちゃん……返事してよ! ねえ!! 死なないで!! 僕はお姉ちゃんがいないと駄目なんだ――」


 僕は目の当たりにした光景と、受け入れられない死のショックで記憶を閉ざした。僕のせいだ。僕のせいなんだ……わああああああああああ……


 りんねちゃんの死を思い出すあの公園には行けなくなり、通っていた学校も転校した。僕は小学校を卒業するまでは田舎のお爺ちゃんの家で過ごすことになった。


 僕の両親は日本にはいなく、海外で過ごしているということを聞かされていた。両親から貰った名字は記憶を思い出してしまう障害となり得た。


 僕はお爺ちゃんたちの名字を使うことになり、真野犬人まのけんととして過ごすことになった。


 ※


 彼が全ての妹たちの想いと、残滓ざんさいを消し、かつての彼女である寧々ねねこさんを取り戻した所で、けんとくんは私の知っているけんと君では無くなっていた。


 中犬人なかけんと君は、記憶を失い、体も記憶も10歳になってしまった。非情ではあるけれど、これがきっと、わたしと彼が出会う最後の機会。

 

 そして、鈴音わたしは、『姉』として犬人(わん君)に再び出会うことになる。


 かつて『妹』として出会った公園で、再び出会い、楽しい時を過ごせた。なのに、転生しても、『妹』たちの怨はわたしのしていることを見逃してはくれなかった。


 『妹』の時と同様に、『姉』の鈴音りんねは結局、犬人かれの心を傷つけ、彼は再び記憶を閉ざすことになってしまった。


 出会わなければ良かったのだろうか? 鈴音りんね犬人けんと


 閉ざしてしまった彼の記憶を、いつか誰かが癒し、その記憶を改変なおしてくれたら――


 鈴音わたしはきっと、救われる。

 

 かつて一緒に遊んだ初めての『姉』が鈴音りんねだったことをいつか彼が思い出してくれたら、きっと、わたしと彼は救われる――

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