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シスエン~妹怨~  作者: 遥風 かずら
憎悪の先に在るもの…
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能力(ちから)の行方…


 刹凪……中犬人の中にあって、実体などありえない。この男の所業は許されることなど決してない。数多の妹たち。その残滓と共に、この男を更に苦しめるのが役目―― 


 うーん? 俺は何をしたのだろうか。未だによく、思い出せない。これも変な声のせいなのか?


 よく覚えていないが、俺はもの凄く病院内で暴れたらしい。普段俺が寝ている病室は離れにあるが、さすがに検査やら売店に行くときなんかは、一般の入院患者と廊下ですれ違ったりする。今回もそうした用事で単純に廊下を歩いていただけだった。


 そんな時に俺の頭の中はごちゃごちゃと何かを呟き始め、俺は理性を失った。それこそ何の関係も無い入院患者や、お見舞客に喚き散らした。そこを通りがかったミオ先生が腹を殴って止めようとしたら、真横の壁を破壊し、手に負えなかったということだった。


 ところがそこに偶然、金髪美女が現れて俺の体を回転させたと思ったらあっという間に床に転がして倒し、当の俺はあっさりと意識を失ったという話が今まさに、眠ったまま目を覚ましていない俺の耳はこの話をキャッチしていた。

 

「ケント君があんな恐ろしい力を秘めていたなんてね! ……ますます舎弟に欲しいわ」


「シャテイ? よく分からぬが、ケンはなぜここに入院をしておるのだ?」


「ケント君、仕事でこの近くに来てたんだけど、足を怪我したの。だからここに……って、ところであなたはケント君の何?」


「む? あぁ、そうであったな。ワタシはケンの妹じゃ。此度、ここへ参ったのはケンに会いに来たのじゃ」


 俺の妹? 金髪美女と出会った記憶なんて俺にはないはずだ。というか、俺はケンじゃなくてケントなんだが……ん? 何か昔もそんなやり取りがあったような。


「妹って、私が言うのもアレだけど、あなた明らかにケント君より年上よ? だから残念だけど、ケント君は相手にしないと思うわ。彼は姉じゃなくて妹萌えの変態なの。ほら、隣で寝てるあの女の子なんかはまさにザ・妹って感じでしょ。いくらあなたが妹と言っても、だが、断る! なんて言いそう」


 金髪美女は年上なのか。確かに範囲外だな……って、人が寝てる間に変態呼ばわりするとかヒドイな。


「確かワタシとケンは同じトシだったはずじゃ。しかし、今見るとケンは若返っておる? しかも今後も若返るかもしれぬ。そんな予感がワタシには感じられる」


 何でそんなことが分かるんだ? もしかしたら妹って、そういう意味での妹ってことか? 


「……何者なの? あなたも、ケント君も」


「まぁともかく、ケン! すでに起きていることはお見通しじゃ。早う目を開けぬか!!」


「は、はいっ! スンマセンした!!」


 もしかしてアリサ? ホームステイした時に出会った変わった女の子か。


「って、俺はケンじゃないってホームステイでも言ってたぞ! ケ・ン・トだ!!」


「相変わらず細かいの。すぐ分かったようで何よりじゃ。して、具合はどうじゃ? 怒りは収まったのじゃろ?」


「そ、そういえば何で俺、あんな暴れるくらいイライラしてたんだ? 何か俺の中から声がして、罪だ何だとごちゃごちゃ言って来て段々、ムカついてその後はよく分からないんだけど」


「ふむ……それは恐らく刹凪の仕業じゃな。刹凪は妹という思念でな、ケンの意識の中に棲んでおるんじゃ。実体がないから難敵ではあるが、なに、ワタシが来たからには心配いらぬ」


「刹凪? って、俺の中にそんなもんがいたのかよ。もしかして変な声とか聞こえたのはそいつだったのか。そう聞くと妹ばかりにこだわっていた俺にも責任ありまくりだな」


 妹たちが出るようになったのも自業自得なわけだが、まさか頭ン中にそんなもんがいたとはさすがに思わなかったな。しかし、アリサの奴は意識の中にいる刹凪というやつをどうにか出来るような口ぶりだが、アリサは俺を助けにわざわざ日本に来たとでも言うのか? 


「えーーと、美人女医が割り込んでごめんなさいね? で、あなたたちは妹と兄、それで合ってる? 全然似てないしそれ以前に国が違うわよね?」


「左様。ワタシはロシアの生まれじゃ」


「言わなくても分かるけど俺は生粋の日本人です。そんで、俺とアリサの関係は出会った頃はそうじゃなかったんだけど、今はそんなところです」


「そ、そうなんだ、はは……これはわたしというか医者がどうこう出来る問題ではないわね。ケント君、私……他の患者を診に行くから、よく分かんないことが終わったら教えてくれる? マジで面倒」


 そう言うと、ミオセンセーは病室を出て行った。無理もないな。ここから先は俺の戦いでもあるしな。


 ミオセンセー本音出てたな。でもまぁ、そうだな。妹関係のことは俺が何とかしないと。関係のない人たちを巻き込んじゃいけないことだよな。


 ミオセンセーが元ヤンとは言え、さすがに異能力の戦いには巻き込めないな。少なくとも、ここにはアリサ、朱里。そして俺の中にいる刹凪。普通の人間には関係のないことだ。


「して、ケン。そろそろセップクするか?」


「は? 切腹って刀で……? いや、昔も注意したかもだけどそれ、死ぬから! ってか、何で刀なんて持って来れてるんだ? そろそろも何も意味がわからないぞ」


「昔とは意味が違う。この刀はな、普通の人間には見えぬのじゃ。そして、この刀でケンの腹を切らねばケンは助からぬ。……刹凪がお主の中にいる限り、時は永久に戻らぬ」


「アリサは俺のことは全て理解している。それでここに来た、それで合ってるか?」


「うむ。ケンを探し当てるのは苦労した。お主のホームはすでに無く、途方に暮れておったのじゃが大学とやらに行ってミタラシという顔の薄い男に聞いたので事を得たわけじゃ。じゃが、嫌な顔をしておった。犬猿の仲というやつか?」


「御手洗にも会ったのか。あいつがよくまぁ、教えてくれたものだな。どうせ金髪美女だからだろうけどな。で、アリサは俺の腹を刀で斬るって? それってどうやるんだ? まさか本当に切腹するんじゃないだろうな」


「ふむ。今はまだ無理じゃな。夜が更けたらまたここに来る。それまで休んでおれ」


「ん? なんで……あ、あぁ、そうか、妹は深夜に力が増す。だったな」


 そういうことなら夜を待つか。どうやらアリサは襲う妹ではなくて、味方系みたいだし安心だな。


「ケン、お主は気付いておるか? お主自身が若返っておることに……」


「あぁ、もちろんだ。妹たちの能力を得ると同時に30歳から26歳に戻ったぞ。それがどうかしたのか?」


「お主は10年の時を眠り、体は30となった。じゃが、中身は20のままじゃ。それが何を意味しているか分かるか? このままではケンの言う妹モエ? とやらは叶わなくなる。最後の妹を倒した時、ケンは……」


「ん? どういう意味だ? 俺はずっと妹しか愛せない体になるはずだが……そうじゃないのか?」


 よく分からんが、もうすぐ10年を取り戻せるわけか。そう考えれば別に不安なことはない。アリサは神妙な顔つきのまま、病室を出て行った。それにしても随分と美人、いや、綺麗になったものだな。


 出会った時はまだお互いにガキだったからドキドキも何もしなかった。今の年齢で会って緊張するほど綺麗な姉さんになっていたとは正直驚いた。彼女の場合、妹と言うよりは姉の方が正しいだろう。


 待て、姉さん? 何で俺、そんなこと言ったんだ。俺は妹萌え。妹一筋だろうが! 間違っても姉などに萌えないはずだ。


 くっ、くそっ……まただ。また頭の中でごちゃごちゃ言いやがる! 深夜だから刹凪も力を戻した、そういうことか。うう……だ、誰か、誰かをこの手で消さないと、お、収まらないぞ。朱里、お前を消してやる。


 ううううう。駄目だ……制御、できない。俺は朱里の首に手をかけてしまっている。


「(兄様……ボクは兄様の手にかかるならそれでもいい。でも、ボクはやることがあります。……刺し違えても、呪術師の女を消さないと。そうじゃないと)」


 朱里、消してやる……消す! 刹凪の願い……アアアアアアアア!!!


「そこまでじゃ! ケン……いや、刹凪よ。必ずこの時間に現れると思っておったぞ。ケンの腹ごとたたっ斬ってやる――」


 キーーーンとした耳鳴りと同時に俺と、中の奴は意識を閉ざした。


 × × × × ×


「わたし、あなたのことが好きです。ずっと、ずっと好いています。だから、これからも一緒にいてくれますか――」


「ごめん、俺は妹がいるんだ。彼女よりも大切な存在。俺は妹しか愛せない……だから、ごめんな」


「尽くしたのにそれでも……私ではなく妹……? 許さない……一生をかけて壊してヤル――」


 これは刹凪の意識? でも刹凪と言うのは今の名前のはずだ。昔はどんな名前だったんだ? そしてこれは俺の声? いや、こんな告白はされた覚えがないな。


 昔、俺と似たような男がいたとでも言うのか。そしてそれで、現代でも同じことを繰り返している俺に憑りついたのか。何で俺なんだよ? 関係ない……いや、なくはないのか。


 今度生まれ変わったらそういうことをしないから、どうか成仏してくれーー


「おいっ! ケン!! 目を覚まさぬか!」


「……ん」


「しょ、しょうのない奴じゃ……こ、これでどうじゃ……」


「んぐぐぐ……ぷはぁっ!! って、アリサお前何してくれてんの?」


「も、もちろん接吻じゃ。ニホンでもあるはずじゃ。目を覚まさすには接吻で……」


「それは逆だ!! 男から女にキスしてって、な、何でアリサは顔を赤くしてんだよ。な、何だよ、俺も照れてしまうじゃないか……。と、年上にキスされても嬉しくも何とも――って、あれ? 朱里ちゃんはどこだ? ベッドで眠っていたはずなのに。どこ行ったんだ?」


「接吻すれば顔くらい赤くする。それが女子というものじゃ。む? シュリ? それは横で寝ていた子のことか? ケンは覚えておらぬか」


「な、何を?」


「ケンは刹凪に支配されてシュリとやらの首を絞めておった。そして、その直後にあの娘はどこかへ行ってしまったのじゃ。恐らく、ケンにやられる前に目的を成し遂げに行ったのじゃろうな……」


 朱里に手をかけていたのか。俺が。……何てことだよ。朱里一体どこへ行ったんだ? 


「さて、ケン。ワタシは刹凪を滅した。そして、ワタシの能力も共に消えた。つまり、お主は2つほど若返りを果たしたのじゃ。いよいよもって、覚悟せねばならぬ……」


「2つ若返った。……てことは今は24歳か。覚悟? 何だよそれ……」


「まず、謝らなければならぬのじゃが、ケンに能力を与えることが出来なんだ。ワタシは、いや、ワタシの刀そのものは実体のないモノを消す為だけの力。そして、ワタシにしか出来ぬことじゃった。ケンを守るためだけの能力ちからじゃ。それにこれ以上、能力を得ることは今のお主では負担が大きい」


「ちょっと待ってくれ。何で俺だけ? アリサは妹として現れただろうけど、俺と関わりは中学の……」


 ホームステイで関わったことがあるが、そこから運命が決まっていた? だとしたら、やはり俺と寧々子が初めて会った時から計画は動いていたということかよ。あの母親、いや、呪術師が全て仕組んでいやがったのか。そもそもあの母親に会わなければ俺は妹萌えになることはなかったんじゃ?


「うむ。呪術は長期に渡って潜伏していたわけじゃな」


「……で、アリサ。覚悟って何だ? 俺が若返るのと妹の能力を得ることに何か問題でもあるのか? 10年も眠っていたんだぞ。それを戻すことに何の問題があるっていうんだ!?」


「そう怒るでない。その腕輪を見てみるがよい」


 一体なんだ? アリサは何を言っているんだ。腕輪? 確か恥ずかしい刻印が……え?


「刻印が消えかかってる!? 確か恥ずかしい刻印。犬、ここに生きるって書いてあったはずだが。何でこうなってんだ? 出てくる妹を消して行けば自動的に外れるとかじゃなかったのか?」


「うむ、確かに腕輪は外れる。じゃがそれと同時に……ケンは」


「……何を知ってる? なぁ、アリサは最後にどうなるか知ってるんだろ? 教えてくれよ!」


「ケン、ワタシは今のケンと最後に会えて嬉しかったゾ。ケンの最後は自分で決めることじゃ。それに、薄々気付いているのでないか? 気持ちの変化に……」


 気持ちの変化? 何だよそれ、分かんねえよ。朱里もいなくなったし、アリサもこのまま帰るっていうのか? くそっ、さっぱり分からねえよ。オレはどうすればいいんだ。


「ケント、元気でな。そして、次にもし会えたら……いや、野暮なことは言うべきではないな。またの」


 アリサは笑顔で、いや、少し寂しそうに笑いながら病室を後にした。妹は残り4人か。その内の2人は、朱里と木葉。だが、恐らく近いうちに会えるはずだ。


 今回の事でアリサに久しぶりに会えた。そして、妹の能力として俺を助けてくれた。刹凪、そしてアリサ、結果として、俺は2つの歳を戻したが能力は得られなかった。俺の体力は若返ると同時に増えていたが、今また減っているような感じだ。それと関係があるのだろうか。


 俺は、治りきっていない足の怪我を、しばらくは大人しくしながら確実に治すことを決めた。足を治したら、警備に復帰して今度こそ、アイドルの現場に行けるように願うしかない。そこには間違いなく、寧々子がいるはずだから。

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