妹EP【寧々子(ねねこ)】
妹EP【寧々子】END
わたしのことを可愛いと言ってくれたケント君は毎日欠かさず会いに来てくれた。それはとても嬉しいことだった。でも、わたしは心配していた。お母さん……彼女はとても恐ろしい人だから。きっと……ケント君に畏怖を与えてしまうに違いない。
そして、とうとう……目をつけられてしまった。わたしは隠れて彼女が言う言葉を聞いていた。
「キミがケント君ね。私と約束をして欲しいの。一生、あの子の兄でいてね。もし、あの子を悲しませて、疑問を持たせ、この約束を破ってしまったら……ううん、それは大丈夫よね。いい? 約束ね!」
「うん。僕、寧々子ちゃんの兄になるね。僕が守るよ!」
わたしはソレが何を意味しているのか分からなくて、ケント君がいなくなってから彼女に聞いてみた。
「ケント君に何を話したの?」
「あなたはもうずっと、1人じゃなくなるのよ。あの男の子がお兄ちゃんになってくれるから。そしてあなたは、あの子の妹として生きるの。それでも……もし、あの男の子とあなたが人間としての成人を迎えたら、あなたはあの男の子の彼女として生きられるわ。何も心配いらなくなる……ふふ……それは難しいこと」
「――彼女?」
「そう。人間として好きな人と一緒にいられる幸せを感じられるの。あなたはその時、自由になれるの。でも、もし……それが出来ない場合は、あの男の子には災いが降りかかる……そしてあなたの意識はどこかへ行ってしまう。そうならないように、お兄さんをきちんとしつけることね」
「意識がどこかへ……」
「ある程度あなたのことを印象付けたら、しばらくあの男の子には会わないようにしなさい。そのままの姿では難しいでしょうから、元に戻してあげるわ。どこにでも行きなさい……男の子が大学生になったら、ここへ戻ってきなさい。そして、約束を果たしなさい。それまで私は準備をしておくわ」
お母さん……いや、彼女はわたしに微笑みながら奥の部屋へ入って行った。彼女の言う通り、わたしは毎日来るケント君と遊び続け、妹としてのわたしの存在を彼の記憶に植え付けた。
しばらくして、わたしは元の姿に戻り、彼の前から姿を消した。そして――
大学生の彼と、大学生のわたしは再会した。形式上、彼氏、彼女としてお付き合いを始めた。
彼とわたしは兄妹として付き合った。あくまでも彼の思い込みで……
「俺、お前のことが好きなんだ! 妹じゃなくて彼女として……」
「本当に? 妹としてではないんだ……? そう……」
明日、わたしと彼は成人を迎え、正式に彼女として付き合うはずだった。彼の行動と、発言を聞いた辺りから、わたしの意識は誰かに取って代わられていく。あぁ……消えてしまうんだ。そんな、そんなのって……
「私……を、捕まえて……私をゆる……して……」
そこで、わたしの意識は寧々子から消えた。犬人君、会いたい――




