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シスエン~妹怨~  作者: 遥風 かずら
出会いの始まり
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1.やっぱり恋がしたい!


 どこにでもある大学でいたって平凡な大学生活を送っている、なか 犬人けんと

 そんな俺には彼女がいる。子供の頃に出会った、寧々ねねこ。それが俺の彼女の名前だ。

 偶然か運命のいたずらか、同じ大学にいたことが分かり人づてに聞いて再会を果たした。

 彼女は抜群のスタイル、性格、顔、全てがアイドル級だった。小さい頃から可愛かったが、今はそれ以上だ。事実、大学生でありながら本当にアイドル活動をしているくらいに可愛すぎる女子だ。


――常に傍にいて守っているのは残念な俺であり、俺曰く、立ち位置は彼女ではなく妹である。


 ※


 キャンパス内を歩く俺たちはいつものように話をしていた。


「私、何でいつまでも妹やってなきゃいけないの?」


「そりゃあ、お前が最初から妹だからに決まってるだろ! 理屈ではない! 確定なんだ」


「そんなの、ママが勝手に決めたことだしわたし、そんなの知らない……」


「……んなわけないだろ! 俺は間違いなく寧々子が好きだ。でもそれは妹に対する愛情みたいなもんで、細かくは設定してないぞ」


「何それ…。犬人君って、『妹』って言葉に憑りつかれてる気がする。それにその言葉でわたし自身に枷を付けられてる感じがしてなんか嫌……」


 寧々子の言ってることは何となく分かる。俺もいつからか執着するようになり、今に至っている。

 俺自身は、元々一人っ子だし現実には『妹』なんていない。元はと言えば寧々子の母親に言われた言葉が関係している。


× × ×


 近所に出来たパン屋さんにおつかいを頼まれた。パン屋に行くのに俺はまだ9歳になったばかりで、道もよく知らない上に、迷子になるスキルが高すぎる。

 案の定、迷ってしまう。何度も同じ道を回り、何度も何度も同じ家の前を言ったり来たりしていた。


「何度も何度も、ウチの前で何をしているの?」


 小さい女の子が、小さな体に見合わないエプロンを身に着けていて、微かにふわっとした甘い香りをさせていた。

 か、可愛い……。訳の分からない俺を疑う様な目で見ている女の子。俺はおつかいでパンを買いに来たものの、道が分からずにたどり着けないことを伝えた。


 俺の言葉に可愛い子は首を傾げたが、メモをエプロンのポケットから取り出して、欲しいものを教えてくれたら持ってきてあげると言ってくれた。


 どういうことなのかその子が戻って行く家を見上げると『パン屋』と書いてて驚いた。さっきまでは看板が無かった気がしたのに、ここだったんだ……


「じゃ、じゃあこれに書いてるパンを……」


「うん、分かった。ママにつたえてくるね」


 パタパタと小走りで家の中に入って行く女の子。パンを入れた袋を俺に手渡してくれたので、おつかいで渡されたお金を渡すと女の子は嬉しそうに笑ってお辞儀をしてくれた。


「ありがと」

「ううん、ウチのおみせがわからなくてごめんなさい」

「もうわかったからこんどはだいじょうぶ」

「うん」

「きみはここにすんでるこ?」

「そうだよ。パパとママのおてつだいをしているの」

「そっかぁ。またきてもいい?」

「パンをかいにきてくれるの?」

「ううん、きみにあいに」

「わたしに? どうして?」

「かわいいから」


 9歳の俺にしては素直に出た言葉で、最初のナンパでもある。それからはおつかいに関係なく毎日、何度いつ何度いつも道に迷いながら寧々子に会いに行っていた。


 そのせいか、顔と名前を寧々子の母親に覚えられてしまった。俺はとある日、寧々子の母親に声をかけられた。


「この子は一人で寂しい思いをしていたけど、あなたがお兄ちゃんになってくれたら寂しい思いをすることはなくなるわ」


 その言葉を聞き、褒められたと勘違いをして素直に俺は「うん、ぼく、お兄ちゃんになってずっと守ってあげる」と返事をした。


「一生、この子の兄でいてあげてね。そして常に、傍にいて『妹』を守って。間違ってもキミは寧々子にそれ以上を求めてはダメ。そして二人とも成人するまではその関係を崩さずにいてね」


「うん、約束するよ!」


「もし、この子を悲しませたり、疑いを持たせてしまったら……ううん、ごめんね何でもないわ。きっと大丈夫。約束、守ってあげてね」


 寧々子の母親が何を言っているのかこの時の俺にはさっぱり分からなかった。


 × × ×


「私たち明日、二十歳はたちになるね。何か、ふたりで記念……作ろっか?」


 夕方――


 太陽が沈みかけた頃、キャンパス内を歩き続けていた俺達。


 もうすぐお互いに成人を迎える。と言っても歳を一つ取るだけだ。歳を重ねる前に何かを残そうかという話になった。

 何となく時間帯の雰囲気にのまれていたせいか、俺は『妹』として接していた寧々子に彼氏らしい行動をとってみたくなった。


 勢いで寧々子に抱きつく俺。寧々子はいきなりのことなのか、細い肩をびくっとさせて動かない。寧々子の胸の柔らかな感触に感動しながら、そのまま俺は手を頬に伝わせながら彼女に唇を合わせた。


 これが女の子の! 俺の乾燥しまくってる唇と違って、瑞々しいというか驚くほど柔らかな感触に懐かしさと喜びが俺の心に流れ込んでくる。


「……寧々子。お、俺」


「……な、なんでそんなことを……? そ、それにキスも」


「雰囲気でというか。……そんな空気を感じてしまった」


「……どうして妹に、するの?」


「驚かせてしまって悪ぃ……」


 寧々子とキスを交わし、それまで押さえつけていた自分の中の感情と想いが溢れすぎてしまったのか、俺はかつての約束のことを忘れていた。


「……俺、お前のことが好きなんだ! 初めて会った時からずっと、ずっと好きだ!!」


「本当に? 妹としてじゃなくて、『彼女』として……?」


「おう! 最初からそうとしか見てなかった。だから、これからは――」


「……そう、なんだ。嬉しいよ。でも、その言葉、明日に聞きたかった……」


「えっ?」


「――っ」


 太陽が完全に沈み、辺りが暗くなったと同時に寧々子はずっと黙っている。

 冷めやらぬ俺の興奮とは正反対に、寧々子の表情は一変して暗く、ずっと下を向いたままだ。やっと声を出したと思ったら――


「……返事は明日。今日は一人で帰るね」


「お、おう。分かった。また明日な!」


どうやら俺の気持ちが伝わったみたいだな。本音を言えばいくら妹扱いしていたと言っても、アイドルでリアルに可愛い女の子をこのまま妹扱いにするとかありえないだろ。

夕方の帰り道の雰囲気はどう考えても、キスって感じがしたからしたまでだ。後悔はない!


俺への返事は明日する、か。楽しみだな。成人の日、俺と寧々子の運命が変わるはずだ――





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