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シスエン~妹怨~  作者: 遥風 かずら
超え始めた域
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妹EP【未来編(みらい)】


 彼は決してイケメンじゃないんだけど何だかすごく気になる人だった。たまたま廊下でぶつかった時、声をかけて来た時も感じていたけど、この人はとても変な……ううん、面白い人なんだ、と。


「きゃぁっ……」


 私は他の女子に比べて動作が鈍い。教室移動の時も、置いて行かれ、私なりの速度で急いで廊下を走っていた。そんなだから、前をよく見ていなくて見知らぬ男子とぶつかってしまうんだ。思わず声を出しながら、床に転んでしまった。


「うおっとぉ~~悪ぃ、大丈夫か? さぁ、俺の手に掴まってくれ! 遠慮はいらんぞ」


「――あ」


「んーー? どうしたのかな。お兄さんは怖くないよ? 遠慮なく、お兄さんを頼りたまえ!」


「――はい」


「もしかして急ぎかな? あぁ、教室移動ってことは下級生か。3年の廊下は来たことないよな。よぉし、それなら俺に乗りたまえ! 超特急で運んであげよう」


「……え。で、でも先輩……」


「ちがーーーーう!! 先輩などではない。俺の事は、お兄さんと呼んで欲しいなぁ……」


 あぁ、変な人に捕まっちゃったなぁ。それに、お兄さん呼びをされたいってことは、この人はきっと現実には妹なんていないんだ。きっと寂しい思いをしている人なんだ。私には姉しかいないからその感覚は分からないけど……でも、そんなことで喜ぶなら呼んであげてもいいかな。


「に……兄さん。教室へ急いで」


「おおおおおおおお! では、俺に乗れっ! 抱っこじゃなくて、おんぶしてやるぜ!」


 私は兄さんと呼び、先輩におんぶされながら教室へと運ばれた。途中、私の小さすぎない胸を彼の背中に押し付けていたせいか、走っている最中に何度も「萌える! 萌える!!」なんて、意味不明なことを口走っていたけれど、面白おかしくて優しい人。これが彼、中犬人さんとの出会い。


 私は、中先輩が卒業するまでの間、付き合うことになった。先輩は私のことを妹として接し、私も兄さんと呼んで付き合っていた。クラスのみんなからは、兄妹なの? なんて言われていたけど。


 兄妹と呼ばれるのが嫌だった私は、中先輩に会うたびに体を至近距離で密着させていた。彼が私の頭を優しく撫でてくれた後の、優しいキスは心も身体も彼に預けているような感覚に陥った。

 私は彼……兄さんに愛されている――幸せだった。


 学年の違う中先輩は卒業していく。そうすると自然と振る形になった。

 私もその後、学校を卒業して大学か就職かを悩んでいた。そんな時、中先輩が大学へ行ったことを知った。それなら私も彼を追って、大学へ行こうかな、なんて思っていたら、すでに彼女がいることを噂で知った。


 私はどうするべきなのか? 悩んでいると、突然、中先輩は倒れて原因不明で眠っているという恐ろしい噂が流れて来た。そんな、そんなのって……


「――兄さん、私を見捨てないで」


 夢の中で何度も、兄さんとの思い出が繰り返された。朝、目を覚まし陽の光を浴びると、違和感に気付いた。部屋のカーテンから差し込まれるわずかな光でさえ、熱く痛みさえ感じる。


 部屋の電気の明るさは何ともないのに、どうして陽の光がダメになったの? 医者ですら原因がよく分からないまま、私は昼間、太陽が出ている日中はそのまま外に出られなくなった。視力も問題なく、物が見えなくなったわけではないのに。


 夕暮れから夜にかけては問題なく、外に出れるのは夜ばかり。こうなってはとてもじゃないけど大学に行くことなんて出来ない。夜だけの仕事を探して、夜を活動のメインにするしかないなんてあんまりだ。それでも、昼に出れる方法はアレしかないかな……


 兄さんと別れてから10年の歳月が流れた。私の視界は相変わらずだ。そんな中、志久しく姉さんからあの人の話を聞かされた。


「えっ? それ、本当?」


「うん。私の職場に面白い新人君が入って来たんだけど、彼の名前、中犬人くん。何だか不思議な感じのする男の子だね。イケメンじゃないけど私、タイプかも」


「ねえ、お姉ちゃん――」


 もうすぐ兄さんに会える。待ちに待った時が再び、動き出すんだ。そして彼に打ち明けて、彼の元へ能力を返したい――


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