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あるものの生き様  作者: 柊秋人
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2.別離の春

 自分の前には高校生らしき二人組みの男女がいた。女は車椅子に座っている。



「待って、どうしてよ。どうして、どうして別れるっていうの?」



 女は涙を流しながら問いかける。それ聞いた男はこう返すのであった。


「簡単だよ。もうお前を傷つけられないからだ」

「まだ、あのこと気にしてんの? 私、もう気にしてないよ」

「だめだよ。俺はもう男として最低な事をした。俺はお前を傷つけたんだ。ごめんな、本当にごめんな」



 男は涙目で言った。女も涙を流しながらこういう。



「大丈夫、気にしてないよ」

「だって、だってあの時、俺はお前を助けようとして逆に……」

「もう、言わなくていいよ。大丈夫、大丈夫だから」



 女が男を抱きしめながらそういう。



「でも、振り返って整理したいんだ。俺の過ちを……」



 女は何も言わない。そして、男は過去の過ちを語りだす。



「あの時、精神が異常な奴がナイフを振りまわしていたよね。そこで、お前は男にナイフで切られようとして、そこで俺が代わりに盾になりお前を後ろへ突き飛ばした。だが後ろは車道で車がやってきてそれで、お前を傷つけた。お前の楽しみにしていた。一生に一度しかない高校の卒業式をダメにした」

「でも、一生懸命頑張ってくれたでしょ? ギブスの私を喜ばせるために、いい思い出になるように」

「ちがうよ、俺はなにもやってない。何もやってあげられてないんだ」

「やってくれたじゃん。卒業式のなかで、勝手にあなたから私への送る言葉とか、言葉の最後に花束渡してくれた。最後には、卒業式退場にお姫様抱っこ。恥ずかしかったんだからね。というか、そういうことはこういう帰り際にやってよね」

「あぁ、そうだね。でも最悪だろ。お前の人生の歯車狂わしちゃったんだから」



 そう男が言い終わると時間が止まる。自分が時間を止めたのだ。

 解決策が見えないこの二人の会話に自分が手助けしてやることにした。




 ―チリ~ン―




 鐘の音が鳴る。鐘の音は自分が人を幸せにする為の魔法の音である。再び時間は動き出す。



「でも、幸せだったよ。こんな私の事を思ってくれる彼氏がいるなんて、本当に幸せ」

「そうか、ありがとう。でも、別れよう。そして、俺がまたお前を守れるような男になったら告白する。だから待っていてくれないか? いつになるかはわからないけど……」

「………。いいよ」



 女は満面の笑顔で返した。




 これが最初の物語だ。お前は「どこが世界の終焉に繋がる物語だ」と思っただろ。だが、この物語も繋がっているのさ。何故自分がそんな事を知っているかだって? 簡単だよ。今、終焉の瞬間ときが近づいてるからに決まっているじゃないか。さぁ、もう自分もこの世界からいなくなる。時間がない。だが、何が起きたか後世に伝えなければならない。もし新しい生物が生まれこの言語が読めなくなっていても伝えなければならない。ふらついてきた。どんどん意識が朦朧としてくる。さぁ、急いで次の物語を語ろうじゃないか。


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