不死鳥
まさか久しぶりにフェニックスに会えるなんて...
それに私のために私の力を取り戻してくれた。
「...」
「どうしました?」
拓磨君が声をかけてくる。
私は今どんな顔をしていたんだろう。
きっと彼に心配されるような顔をしていたんだろう。
「ううん。何でもない」
「ならいいんですけど..」
私は今変なことを考えていた。
なんでフェニックスは私の力を取り戻してきたんだろう。
もしかして、私が彼と一緒に魔王を倒しに行くって決意しなくても無理やり行かせるつもりだったのだろうか?
それはちょっと...辛いかな。
「着いたみたいですね」
「ん、みたいだね」
私たちは改めて羽が燃えている巨鳥の前に対峙した。
「ようこそ、炎の塔の頂上へ...って言っても大したところじゃないがの」
俺たちが塔の中から長いらせん階段を上ると、炎の塔の頂上に着いた。
そこは屋上のような場所で周りが一望できる。
さて、早速だけど。
「サラさん、折角ですし、不死鳥とゆっくりお話でも...」
「やめてくれ、不死鳥なんて。フェニックスと呼んでおくれ」
「あ、すみません...」
なぜか謝ってしまった。
「まあ、のんびり話してきてください。僕は塔の外で待ってます」
「...うん」
「...」
フェニックスとサラさんの間に妙な空気が流れる。
「...?」
俺は少し首をかしげながらも、塔の外にいることにした。
「では、ごゆっくり」
「うん」
「すまんな、気を遣わせて」
「いえいえ」
俺はそういいながら塔の階段を下りようとする。
が、一番下に何かが五体ほどいるのを見つけた。
すると、その五体は階段を上り始めた。
塔の高さは五十メートルくらいで、階段が内側の壁に付いている。
頂上以外は床がなく、上から地面までも見えるというわけだ。
とにかく頂上にはいかせないようにしないと。
俺は一気に階段を駆け下りる。
途中で登ってきている奴もこちらに気づいたようだ。
その五体は五人ともいえるような人型の何かだった。
クリーム色のコートに身を包んでいて、顔をフードで隠している。
「すみません、不死鳥に用事があるなら後にしてくれませんか?」
もしかしたら、人間かもしれないから俺はすぐには斬りかからず、声をかけてみた。
五体は背中に手を回し、全員剣を抜いた。
つまり、戦闘開始だ。
敵の剣はブロードソードと呼ばれるもので、全長70~80cmくらいの剣だ。
俺は刀を抜いて、敵と対峙する。
ここは階段の一部なので、足を躓かせたりしないように気をつけて戦わないと。
敵が階段を駆け上がり、上段に剣を構え、斬りかかって来る。
俺は刀で剣を弾き、横っ腹に蹴りを入れる。
ここからなら落ちても死にはしないだろう。運が良ければ怪我一つないくらいだ。
次の敵は二人横に並んで斬りかかってきた。
俺はPSIを使って片方の動きを止める。
もう片方はもう一体の動きが止まったことに気づいてないようだ。
斜めに斬りかかって来る。
俺は刀と剣が十字にxに交わるように刀をぶつけ、次は後ろにいる敵にぶつけるように敵を蹴り飛ばす。
敵は後ろの一体とぶつかって、階段を転がっていった。
これで三人。
動きを止めていた敵の腕を浅く斬る。
空に黒い血が飛ぶ。
やっぱりこいつらは魔族か。
俺はそのまま首と思われる場所を斬り落とす。
階段の一部に墨汁のように黒い血だまりができる。
さて、残りも片づけるか。
そう思って残りの敵に意識を向けると、残った四人はもういなかった。
何とか追い返すことができたようだ。
...死体、どうしよう。
そんなことを考えていると、目の前の死体が燃え上がった。
なぜかクリーム色のコートだけ残っていた。
「すまないねえ、わざわざ気を遣ってもらってしまって」
上から声が聞こえる。
「もう戻ってきてくれて大丈夫だよ」
その言葉を聞いて、俺は階段を上った。
死体と黒い血だまりはもう階段に残っていなかった。
でも、俺は気づいていなかった。
クリーム色のコートの腕の部分に、真っ黒な星が描かれていることに。
「お主に聞きたいことが二つある」
階段を上り切り、頂上に着くと、いきなりそんなことを言われた。
「なんですか?」
「一つ目は、なぜ魔王を倒しに行くんだ?」
俺は少し考えて、
「自分のためです」
といった。
「それは世界が平和になることが自分のため、ということか?」
「いえ、誰かを助けるとかではなく、純粋に自分のためです」
「...」
フェニックスは少し考えるような素振りを見せた後、
「二つ目の質問だ。お主が魔王を倒しに行くのに、サラは必要か?」
と質問してきた。
サラさんを見ると、少し不安げにこちらを見てきた。
俺はその視線を受けながら、
「分かりません」
と答えた。
「なに?」
一瞬フェニックスから殺気が発せられる。
サラさんは不安げな表情をさらに曇らせていた。
「お主は人の命を預かる...という言い方は語弊があるかもしれないが、人の命を危険なことに巻き込もうというのに、分からないだと?」
「はい。分かりません」
「貴様...」
「でも」
俺は怒り始めたフェニックスに諭すように、
「一緒に来てくれたら嬉しいです」
と言った。
これは俺の本心だ。
綺麗ごとを言っているように聞こえるかもしれない。
クサイことを言っているかもしれない。
でも、本心だ。
すると、次の瞬間、フェニックスからは殺気も怒りも感じなくなり、サラさんは表情を明るくしてくれた。
「...分かった。サラ、この男に付いて行きなさい」
「うん!」
サラさんがこちらに駆け寄ってくる。
「よし、サラの力を返そう」
フェニックスがそういうと、空中に正八面体の赤い宝石が浮かび上がる。
それは太陽の光を浴びてまぶしい光を反射させていた。
その宝石がサラさんに吸い込まれる。
サラさんが手で触れると、宝石は割れてしまった。
「...なんか力がみなぎってきた」
サラさんが呟く。
「ふむ、これで力の一部が戻ったようじゃな。あと宝石は三つある。それを貰ってから魔王のもとに行くんじゃな」
と、フェニックスが教えてくれた。
「ありがとうございます」
「なぜお主がお礼を言うのじゃ」
俺がお礼を言うと、フェニックスは楽しそうに笑った。
「では、これからの旅も気を付けていくんじゃぞ」
「うん!」
「はい」
俺とサラさんは返事をして、『炎の塔』を後にした。
こんにちは、こんばんは、明けましておめでとうございます。たく侍です。
今回拓磨の過去に触れられなかったのが心残りですね。申し訳ないです。
さて、次回はちょっとハプニングが?というところですね。
それでは、また次回お会いしましょう。
今年も一年間よろしくお願いします!