炎の塔
目が覚めると、隣のベッドには誰もいなかった。
結局あの後宴を楽しんで、もう一泊させてもらえた。
そして、医務室のベッドで拓磨君も私も寝ていたんだけど...
私は起き上がって、軽く身支度を済ませて、外に出る。
すると、集会所の横で拓磨君が俯いていた。
気づかれないように近づくと、拓磨君は手を合わせていた。
拓磨君の頭の先にはお墓があった。それには、
『英雄ダンーーーここに眠る』
と書かれていた。
石でできたお墓には花が手向けられていた。
私も拓磨君の隣に立ち、手を合わせる。
多分拓磨君も私が来たことに気づいていると思う。
でも、拓磨君は何も言わず手を合わせていた。
一分もしないくらいで私たちは顔を上げた。
「じゃあ、行きますか」
「うん」
拓磨君に返事をして、村を出ようとすると、
「待ってくれ」
声がかかった。
「...嬉しそうだね」
サラさんに声をかけられる。
「もちろんです。逆にサラさんは機嫌が悪そうですね?」
「なんでだと思う?」
サラさんに睨まれる。
あの後、村長が改めてのお礼として、この世界の地図をくれた。
地図にはところどころに重要な建物が書かれていて、その中には魔王の居る魔王城も書いてあった。
この地図の通りに行けば、魔王を倒しに行くのが一気に楽になるのだ。
「この地図の通りならあと少しで『炎の塔』に着くはずですね」
「...そうだね」
「?」
本当に機嫌が悪いみたいだ。話しかけないでおこう。
そうしてしばらく無言で歩いていると、石が円柱状に積み上げられた建造物が見えてきた。
「あれが炎の塔ですね。じゃあ、迂回しましょうか」
ここは平原だ。わざわざ塔の中に入らなくたって迂回して進めばいいだろう。
「そうだね。ここは迂回しよう」
サラさんの同意も得られたので迂回しようとすると、
「...なんだあれ?」
「うん?どうしたんだい?」
俺は塔の入り口に不自然な看板を見つける。
「あの看板...」
「...なんだい、あれは」
俺が指さすとサラさんも気づいたようで眉を寄せていた。
その看板は、灰色の石でできた塔とは違い色が真っ黒。
そして、その真っ黒の看板からは紫色の空気が流れ出ている。
もう読ませる気しか無いな、アレ。
「...行ってみますか?」
「...うん」
サラさんと俺で『俺を見ろよ!』と言わんばかりの看板に近づく。
二人でその看板を読むとそこには、
『サラ・マゼライトの力、ここに封印するーーーーーー魔王』
「「...」」
二人で顔を見合わせる。
この看板を信じるべきか、無視するべきか....
しばらく顔を見合わせていると、急にサラさんが顔を背けて
「ま、まあ入るだけ入ってみようよ」
と言った。
「そうですね。ちょっと確認してみますかーーーーってサラさん?」
「な、なんだい?」
なぜか顔を赤くして顔を逸らされる。
回り込んで顔を覗き込むとやはり顔を逸らす。
「いや、なんで顔を逸らすのかなーって。そんなに俺ブサイクですか?」
「い、いやそんなことはないよ?」
「じゃあなんでーーー」
「サラよ」
俺がサラさんと顔を合わせようとしていると空から年寄りの声が聞こえてきた。
上を見上げると、翼が燃えている巨鳥が空を飛んでいた。
「全く。お主のためにお主の力を秘めた宝石を手に入れたというのに...イチャついているとは」
「誰がイチャついているって!?」
サラさんが大声で反論する。
見たところ、あの鳥とサラさんは知り合いみたいだ。
「あれ?じゃあこの看板は...」
「わしのいたずらだったのじゃ」
「はあ...」
何とも言えない溜息を俺が吐くと、
「まあ要件は今言った通りじゃ。早く塔の頂上まで登って来い」
「分かったよ。行こう、拓磨君」
「はい」
こうして俺たちは『炎の塔』を登ることになった。
こんにちは、こんばんは、たく侍です。
今回かなり短い話になってしまいました。申し訳ないです。
言い訳になってしまいますが私生活が少々忙しく書く時間が少なくなってしまいました。
次回は主人公の過去に少し触れていこうかな、と思います。(過去編ではありません)
それではまた次回お会いしましょう