魔物狩り
まったく...どこに行ったんだ?
逃げ足だけは速いな...
私は黒髪の青年(?)を探して、森に入ってしまった。
とりあえず森を抜けよう...
しばらく歩いていると、池が見えてきた。
池っていうか、泉かな?
泉と勘違いしてしまいそうなほどの大きさだけど、水が湧き出ている様子はないので、やっぱり池かな。
「ちょっと休もうかな...」
池に近づき、手で水をすくい、少し口に含む。
...害は無いね。
もう一度水をすくい、一息に飲み干す。
そして、池のそばで仰向けに寝転がる。
さらさら、と木が風に揺られる音が聞こえる。
森の中だけど、池の周りには木がなくて、真っ青な空が葉っぱに邪魔されず目に映る。
.....
とても、落ち着く。
.....
空に手を伸ばし、先ほど黒髪の男を殺そうとした『光の剣』を別の空間から取り出す。
剣は太陽に反射して金色にまぶしく輝いた。
そして、この『光の剣』を見れば見るほど、
....悲しくなる。
私は剣を別空間にしまい、眠った。
いきなりだが、魔物について説明しようと思う。
まず、魔物は自然に発生する『物』で『生き物』ではない。
ある一定以上のダメージを受けると、消滅する。まあ、死ぬってことだ。
魔物は何も食べないと消滅する。まあ、ほとんど動物なのだ。
で、魔物は魔法を使ってくる。風、炎、水...魔物によっていろいろな魔法が使える。
が、知能が動物レベルなので、たいした脅威ではない。もっとも、力がある魔物は厄介だが。
魔物は人間を敵だと判断している場合がほとんどだけど、動物と同じで、なつかせている人もいる。例えば、オオカミ型の魔物や、鳥型の魔物、すごい人だとドラゴンとか。
魔物はさっき言った通り魔法が使えるので、なつかせれば戦力としても申し分ないし、農業なんかもはかどる。
さらに、魔物には寿命がない。
つまり、大昔から存在している魔物なんかもたまにいる。そういった魔物は珍しい魔法なんかを使える。そのような魔法を人間が学習して、使えるようになったりもしている。
さて、魔物についてはこれくらいかな。
次は魔族。
魔族は魔物と決定的に違う部分がある。
それは、『生きている』こと。
魔物のように一定のダメージを受けたら、消滅ではなく、その場に死体が出来上がる。
それは消えないので、どこかに埋めたり、燃やしたり...人間と変わらない方法で死体を処理する。
さらに、魔物と違って魔族は知能が高い。人間以下、個体によっては下手をすれば人間以上の知能を持つ。
もちろん魔族はなつかない。
まあ、ほかは魔物と一緒だ。
さて、そろそろ今回の依頼を始めようかな。
依頼内容は、『ウルフを十体退治』だ。
ちなみに、退治したかどうかが分かるようにほとんどの人は『魂の瓶』を持っている。
これは、魔物が消滅したときに残す『魂』を入れておくものだ。
これで、入っている魂の数で依頼を達成しているか判断する。
魔物は魂で判断できるので不正はできない、という仕組みだ。
さて、適当に森を歩いていると、真っ黒なオオカミが現れた。
全体が真っ黒で、瞳だけが真っ赤だ。
こいつがウルフ。
こいつの危ないところは普通のオオカミより動きが速い。それと、風の魔法で攻撃してくる。
まあ、あまり強くはないんだが。
俺は腰に掛けている刀を鞘から取り出す。
強くはないとはいえ油断は禁物。
相手の出方を窺うが、相手もこちらの様子を窺っているようだ。
先に痺れを切らしたのはウルフだった。
ウルフは口を開ける。口の中には風の魔法を使う前の緑の魔法陣が輝いている。
魔法は使う前に魔法陣が出現する。その魔法陣が魔法を繰り出す、といった感じだ。
ウルフは口の中からかまいたちを飛ばしてくる。
俺はそれを避けて、さらに出方を窺う。
次にウルフは俺の首めがけて噛みつきに来る。
勿論俺は躱す。
これで、相手の背後が簡単に取れる。
すぐに振り返り、着地したばかりのウルフに駆け寄り、一刀両断。
ウルフは黒い煙となって空に消える。
俺は魂の瓶をとりだして、蓋を開ける。
すると、瓶の中に何かが吸い込まれる。
瓶の中でそれは黒い光の塊になる。
これが、魔物の魂だ。
瓶の中に入ってやっと魂が見える。
魂の瓶から魂は逃げださず、取り出すときには杖が必要だ。
ちなみに、人間や魔物の魂は魂の瓶単体では回収できず、ほかのアイテムが必要だ。
とまあ、早速一匹目のウルフを退治したということになる。
さて、どんどん退治するぞ。
「よっと」
あれから三十分ほどだろうか。
十匹目のウルフを倒す。
そして、魂を回収する。
ふう...これで終わりか。
そして、村に戻ろうと歩き出す。
森を歩いていると、見覚えのある場所についた。
ここは、池か。
って、誰か倒れてる?
倒れているのは女性みたいだ。
近づいて意識があるか確認しようとする。
女性のそばに座って、顔を確認する。
そして、あることに気づく。
...ん?この人はもしかして、さっきの危ない女性?
どうしよう、起こすべきかな?
起こすかどうか考えていると、背後からガサリと音がした。
素早く刀を抜いて、振り返る。
すると、何かが飛びかかってくる。
刀で防ぎ、はじく。
立ち上がり、改めて飛びかかってきたものに対峙する。
こいつは、ウルフか。
でも、魔族のようだ。
魔族かどうか見分ける方法は二つ。
ウルフと外見はほとんど一緒だ。
でも、黒いオーラがこのウルフの周りにまとわりついている。
一つ目は、この黒いオーラ。
そして、もう一つは、
「!」
ウルフが口を開ける。
俺は横たわっている女性をお姫様抱っこして、その場を離れる。
刀を握りっぱなしなので、女性の首を拳で支えている。
次の瞬間、女性のいた位置にかまいたちが飛んでくる。
敵であり、武器を持っている俺には無意味と判断して、俺の仲間になりそうな女性を先に殺そうとするその知能の高さ。
間違いない。
魔族だ。
ちなみに、ウルフは魔族だと名称が変わる。
たしか、デビルウルフだったかな。
魔族はかなり厄介で、ウルフ十体が同時に来るよりも手ごわい。
さて、どうしようか...
「君って奴は...」
声がしたほうに顔を向ける。
お姫様抱っこの状態なので、ちょうど俺の右手にある女性の顔と目が合う。
女性が起きていた。
「とりあえず、首が痛いんだけど?」
「...すみません」
俺が女性をおろそうとすると、女性は、
「罰として、この状態であいつと戦ってよ」
と言った。
...は?
「いやいや、おろしますよ」
「いいからいいから。もしこの状態で倒せたら今までのこと許すから」
お?それは大きいな。
「じゃあ、頑張っちゃいます」
「うんうん。頑張っちゃって」
とりあえず、刀を鞘に入れて、女性の首を二の腕に置く。
デビルウルフはじりじりと近づいてくる。
ここからは、俺の武器は脚だ。
デビルウルフは口を開けて、魔法を使う。
それはかまいたちではなく、風の砲弾だ。
かまいたちよりも当たりにくいが、威力と弾速は数段上だ。
俺は反復横飛びのように砲弾を躱す。
すると、そこを狙ってデビルウルフが飛びついてくる。
すかさず俺は回し蹴りを叩き込む。
足の甲が空中のデビルウルフの顔にクリーンヒット。
デビルウルフは吹き飛び、地面に倒れる。
だが、また立ち上がる。
グルルル、と低い唸り声を上げる。
まあ、蹴りだけじゃ殺せないよな。
さて、どうするか。
「ねえ」
女性に話しかけられる。
「なんですか?」
「どうやってあいつを殺すの?」
「う~ん」
今それを考えているところだ。
「別におろしてもいいよ?」
「いや、これはもう意地みたいなものなんで、このままやります」
ここまで来たらこのまま何とかしてみたい。
それは本心だ。
「じゃあ、どうするの?」
「ちょっと残酷ですが、押しつぶします」
「...え?」
俺は、池から離れて森に入る。
「すいません。デビルウルフはついてきていますか?」
「うん。ついてきてるよ」
よし、この辺かな。
適当に木が密集しているところで立ち止まる。
そして、振り返る。
デビルウルフが追いつく。
俺は、適当な木のそばに立つ。
デビルウルフは口を開け、風の砲弾を繰り出す。
俺は素早く避ける。
木に大きな穴が開く。
木は倒れはしないがあとちょっとの衝撃で倒れるだろう。
デビルウルフが俺に接近する。
そして、飛び掛かってきた瞬間、俺は素早く避けて、
「よっこらせ!」
デビルウルフの着地しそうなところに木を倒す。
メキメキ、と音を立てて木が倒れる。
が、さすがは魔族。
音だけで判断できたらしく、振り返る前に走りだそうとする。
が、逃がさない。
意識をデビルウルフに集中させる。
一瞬、体全体の毛が逆立ったような感覚がする。
すると、
「うそ?魔法なんか使ってないのに...」
デビルウルフの体が動かなくなる。
そして、木が倒れる。
真っ黒な血がデビルウルフのいた場所に飛び散る。
ふう...
やっぱり使うと疲れるな。
「ねえ、今のは何?」
「ああ、今のは...」
一瞬答えるのを躊躇する。
「ねえ、教えてよ。
「...誰にも言わないでくれます?」
「うん」
...信じてみるか。
「今のは、『超能力』です」
俺はそう答えた。
こんにちは、こんばんは、たく侍です。
さて、今回は魔物についてでした。
分かりにくい文章だったかもしれませんが、見逃してください。
あと、ギャグ要素も入れていきたいと言いましたが、
どこに入れればいいんだ...?
ま、まあ最初のほうは説明が多くなってしまいますからね。しばらくはギャグなしでも大丈夫でしょう。
さて、次回は村に戻り、話を動かします。
それでは、また次回お会いしましょう。