勇者?
はあ...
最近面白いこと無いなあ...
「あのう...」
「ん?」
なにこの男、黒い髪にメガネ、冴えないなあ..
腰には一本の刀が着けてあり、さらにちょっと大きめのポーチを腰に巻いている。
この身軽な装備は獣でも狩りに来たか、近くの村にでも行こうとしているのかな?
なんせこの世界には一万を超える村があるらしいし。
「何だい?」
私が聞き返すと、男はこう答えた。
「魔王ってどこにいますか?」
...は?
俺は勇者だ。
魔王はこの世界を支配している。まあよくある設定だ。
だが、誰一人として倒そうとしない。
倒すことをあきらめているのだ。
魔王は気まぐれに村を壊しに来る。
魔王が直接壊すこともあれば、手下を送って壊すことも。
今日までにいくつか村が潰された。
みんながびくびくしながら過ごす日々を見てきた。俺もその一人だった。
だが今日からは違う。
俺は勇者だ!
自分の村を出た翌日。俺は平原にいた。
一日歩いても誰とも会わないとは...
...とりあえず、魔王の居場所をはっきりしないとな。
その辺に人がいたらいいんだが。
...お、木の下に座っている女性を発見。
俺は駆け足で女性に近寄って声をかけた。
「あのう...」
「ん?」
声をかけた女性は俺と同じか一つ二つ年上の雰囲気を持った女性だ。
髪型は肩にかかる程度の長さの黒髪をサイドテールにしている。
女性は少し俺を警戒しているような目つきだ。
さて、早速本題を話そう。
「魔王ってどこにいますか?」
女性はポカンと口を開けた後、まじまじと俺の顔を見つめてきた。
「一応聞くけど...何しに行くの?」
何しに行くの?ってそりゃあ
「殺しに行きます」
「...」
女性は黙り込んだ。
しばらくすると顔をあげ、
「やめておきなよ」
と、言った。
「どうしてですか?」
「君じゃ十秒も持たないよ。さっさと自分のいた村に帰ったほうがいいよ。遠かったら近くの村でーーー」
「やってみなきゃ分かりませんよ?」
「...」
女性は警戒心の含まれていた目線から、怒気を感じる目線を向けてきた。
あるえ?怒らせるようなこと言ったかな?
「えっと...」
「私はねえ!」
「はい!」
怒鳴りつけてきた!なぜ!?
「あんたみたいに確証もないのに、なんとかなるとか思ってるやつが大っ嫌いなんだよ!さっさと帰らないとーーー」
女性が空中に手をかざす。すると、
「光の剣!」
「え、何ですか?」
光り輝く剣を出現させた。そして、
「殺す!」
「Why?」
いきなり斬りかかって来る。
俺の頭をスイカ割りのように真っ二つにしようと剣をふりかぶる。
「あっぶね!」
おろされた剣を紙一重で躱す。
なな、なんだ?
「まって、話し合いません?」
「うるさい!」
意味が分からない。
こうなったら...
「逃げる!」
「あ、待て!」
なんなんだまったく。
「ここまでくればいいか」
しばらく走り、森に入ってしばらくのところで立ち止まる。
さて、また新しい情報を探さないとなあ...
そういえばさっきの人近くに村があるとか言ってたっけ。
「この森の近くならいいけど...」
とりあえず足を動かす。
しばらく歩くと、池を見つけた。
「少し水でも貰おうかな」
ポーチから竹で作られたコップをとりだす。
少しだけ水をすくって、口に含む。そして、少し飲み込む。
...うん。体に害はないみたいだ。
「これなら持ち運べそうだ」
でも、今は水を持っているし...
また今度来たら少し持ち運ぼう。
最後に一杯水をすくい、一気に飲み干す。
「ごちそうさまでした」
さて、早く森を抜けなくちゃ。
「お、あれは...」
木造の家が一軒目に映る。
「村だ!」
よし、情報を集めに行こう。
家に近づくにつれて、ほかにも村がちらほら見えてくる。
家の数を見ると、中規模な村のようだ。
家の中には物を売ってくれる家、まあつまり、お店もある。
その村の中心にひときわ大きい家を見つける。
その家の扉の前に看板があり、『集会所』と書いてあった。
集会所。
そこは色々な村から集まった情報を見たり、村の住人の依頼を受けることができる。
もちろん、依頼をこなせたら、書いてある報酬を受け取ることができる。
報酬は依頼によって様々。
食料、武器、防具、魔導書...もちろん、いいものならそれだけ依頼が難しい。
依頼の内容は、近くの魔物退治、農業の手伝い、子守りや家事なんかもある。
とりあえず、中に入ってみるか。
木製の扉を開き、中に入る。
「おお、旅の人か。ゆっくりしていきたまえ」
早速扉の近くにいた門番に声をかけられる。
門番は二人。片方は年配の男性。もう片方は、まだまだ少年といった感じだ。
中は広くて、カウンター、適当な長机が四個ほど並んでいる。
壁の一角には、『最近の情報!』と書かれた紙が貼ってある壁と、『依頼!旅人さんも是非!』と書かれた紙が貼ってある壁があり、その紙の下には何十枚もの紙がある。
門番は大きめの村なら集会所だけでなく、村の各場所にいるが、ここは中規模なので、集会所にしかいないのだろう。
門番は依頼とか関係なく、村の中に敵が入ってきたら退治する役目だ。
なので、村全体を守っている存在なのだ。
「今日は何をしに?」
「ちょっと情報でも集めようかとね」
「そうか。まあ、のんびり見ていけ」
「そうする」
早速情報を集めようと、壁の一角に行こうとすると、
「よ、ようこそ!」
少年に歓迎される。
「ありがとう。警備頑張ってな」
「うん!」
俺は、改めて壁の一角に向かう。
長机には何人か座っている。
「今度の依頼はー」
「先に魔法をー」
このように作戦というか、話し合いをする場でもあるのだ。
「さて、最近の情報は...」
...う~ん。めぼしいものはないなあ。
まあ、せっかく来たんだし、依頼の一つでもこなすかな。
少し移動して、依頼を見る。
...これかな。
依頼の紙を壁からはがし、カウンターに持っていく。
「依頼をしていただけるのですね?」
「はい」
「では、こちらの紙に記入のお願いします」
カウンターの女性から紙を一枚渡される。
これは誓約書みたいな感じで、名前を書き、指印を押す。
意味が無いと感じられるかもしれないが、大切な行為なのだ。
名前は、純粋に呼ばれたい名前を書けばいい。だが、指印はとても大切だ。
指印をすることにより、依頼を取り消すときも依頼を成功させて報酬をもらうときももう一度指印を押すことで本人と分かるのだ。
これは指紋から本人と判断しているわけではないのだが...割愛させていただこう。
他にも、宿泊の必要があるか、支給品は必要かを書く。
支給品や宿泊はお金がかかる。もちろんいらない。
そして、名前を書き、指印を押す。
書き終わった紙を渡す。
「では、確認します。支給品の無し、宿泊の必要なし。これでよろしいですか?」
「はい」
「この場合ですと、お金は必要ありません。気を付けていってらっしゃいませ」
それじゃあ、
「加藤拓磨、『森の魔物狩り』に行きますか」
口の中で小さく呟き、俺は集会所を後にした。
こんにちは、こんばんは、たく侍です。
はじめましての方ははじめまして、たく侍です。
別の作品から来たという方はいつもありがとうございます。
今回の小説はかなり丁寧に作っていくつもりですので、のんびりお付き合いいただけたらと思います。
それで、主人公の名前なんですが、どの作品も一緒なのは少し思い入れがありまして。
話すと長くなってしまいますので大体で言うと、かなり苦労して考えた初めての名前だからです。
まあ、気が向いたらあとがきで書かせていただきます。
感想、評価、お待ちしております。
それでは、これからも『なにもおこせない!?』をよろしくお願いします!
また次回お会いしましょう!