入学⑥
殺意のある声が後ろから聞こえてくれば、目的があって一直線に歩いている者だって気になり、声が聞こえたほうを見る。それは、立川だって例外ではなかった。
立川が振り向くと予想外の物体、青白く光るものが自分にもうスピードで向かってきていた。いったいこれはなんなんだ?――
――って、こっ、これは、魔法だっ!
それ以外は考えられなかった。
明らかに自然には存在しないもの。懐中電灯などの光でもない。
(だ、だが、いったいどんな魔法なんだ?)
立川は考えだすが、意味がないことに気が付く。
どんな魔法だかわかったとしてもどうするかは決まっている。
自分に向かってきている攻撃。ちゃんと防がなければ、怪我をしてしまう。
立川は魔法を使えない
だから、立川が魔法を使って魔法を防ぐ、なんてことはできない。
よって、立川が魔法によって攻撃されたならば、体をつかってかわすか――
立川自身の固有の能力によって防ぐしかない。できれば、固有の能力をまだ誰にも知られたくないから、こういった人がたくさん集まっている場所で使いたくないが――、体を動かして魔法から逃れるには時間が足りなくて難しい。まだ名前を名乗っていない先輩が魔法を放ったことに気が付くのが遅すぎた。
青白く光る物体は立川の目前に近づいている。
(くっ……、仕方がない……、)
と、立川は青白く光る物体に向けて、手を向ける。すると――、
青白く光る物体が、手の前で止まり、くすぶっている。
「――な、なに……!」
一番最初に驚いたのは、青白く光る物体を魔法によって作り出したまだ名前を名乗っていない先輩だった。
その驚きは当然だろう。
魔法を止めるというのは高度な技術を必要とする。それにもわからずまだ入学したばかりのなんの技術もない立川が止められるはずなんてない。
(って、二年生の中にもそんな芸当ができる奴なんていないんじゃないか……、)
自分自身にもできないことをやった立川に対して驚き、怯えるまだ名前を名乗っていない先輩。
(だが、いまさらあとには引けない。
訳のわからない現象が起きているが、どうせ偶然だろう。
あのバベルの塔からは日々得体のしれない道具が発見されているというからな……。
俺の魔法を止めることができたのは、どうせまだ一般的に知られていない魔法道具の類だろう。
だったら……、)
魔法を出すのをやめるまだ名前を名乗っていない先輩。
そして、木刀を振りかぶると、木刀自身が青白く光りだし――
一気に立川にまで間合いをつめ、振り落す――
(執念深い奴だな……、)
魔法によって加速し、今まで見たこともないスピードで迫ってくるまだ名前を名乗っていない先輩。しかたがないから、立川は自分の固有の能力を既存の魔法に見せかけて使う。
そうして、立川が止めた青白く光る物体が、まだ名前を名乗っていない先輩の体を包み込み、動きを止めた。




