Level 0 (1)
他であまり見ない(需要が無いともいう)主婦をファンタジーの勇者にしてみました。
元とか転生とかではありません、現役です。しかも若くない。
かなり不定期でも少しずつ進めていきたいと思います。
お付き合いいただけると幸いです。
「やっば、金曜なのに週報出してないや。」
時刻は16:03。保育園のお迎えのために16:30までには会社を出発しないといけない。
私は思わず呟きながら急いで一旦閉じたノートPCを起動した。
育児のための短縮勤務で、勤務時間は6時間。以前ほど大した仕事は出来ていないが、週報の提出は必須だ。
普通の雑談なら大抵の冗談が通じる関西人のリーダーは、決められた提出物が遅れる事を何より厳しく評価する。
「うわー、今週なにやってたっけ?」
ようやく起動したPCでメーラーを開き、メールの送受信履歴を確認しながら、今週一週間の業務内容をメールにまとめ始めた。
「お客さん向けの資料作成ばっかやってたからなぁ、…うわ、うわっ。時間ないっ。ネタも無い…。」
こういう時に限ってメールのやり取りが少なく、週報の報告ネタをひねり出すのに時間を要してしまい、時刻は16:25。
作成したメールをリーダーとチームのグループアドレス宛に送信し、改めてPCをシャットダウンしてから机の引き出しに片付け、鍵をかけた。机の上は整理整頓、セキュリティ対策もしっかりとね。
「ふぅ…、それでは、お先に失礼します!」
「あぁ、お疲れさん!お迎え大丈夫?」
「ええ、はい。なんとかギリギリ間に合いそうです。」
チームのメンバーに挨拶して居室を出た、その時だった。
立ちくらみのような浮遊感と、全身に鳥肌が立つようなゾワゾワした感覚に襲われ、思わず目をつぶり、両腕で体を抱えた。
気が付くと、硬い平らな場所に仰向けで横たわっていた。
「え?もしかして倒れた??貧血?」
いやいや、貧血なんてか弱い乙女な体質持ってない。献血ルームでは『いつでもウェルカム、バッチ来い』な優良血液の持ち主だよ…、と起き上がって周りを見ようとしたが体が動かない。思わず額にあてようとした腕すら上がらない。
「うわ、貧血じゃなくて金縛り?!人生初体験じゃん。」
…と、目だけを動かして周囲を見て思考が一瞬固まった。そして周りを2度見3度見した。
「ん?、ココどこ?っていうか、会社じゃないよね、…で、誰か居る??」
現在位置は、冷んやりとした台?の上、かつ小学校の体育館位はありそうな広くて天井が高い部屋のど真ん中。
そしてその部屋はおおよそ日本では見ない石造りだった。窓はなく、照明も無い。代わりに壁がなんだか柔らかな光を発しているようだ。
そのだだっ広い部屋?の真ん中、私が転がっている台のすぐ側、頭上のほうに、日本人形のような艶やかな長い黒髪の、おばさんが居た。
…いゃ、私も四捨五入したら40。いわゆるアラフォーに属するから年齢的にも、そして子供から見れば確実におばさんに分類される…とは分かっている…のだが、気分は未だおばさんのつもりは無い、というか…お姉さんのつもりも無いんだけど……、脱線した。
で、その黒髪が美しい……年の頃は40、いや50は越えていそうだし「おばさん」で良いでしょ……おばさんは優しく微笑み、無理なく顔が見える私の横までゆっくりと移動しながら話しかけてきた。
「初めまして、勇者さま。突然お呼び出ししてしまい、驚かれている所かと存じます。わたくしは『時渡りの子』を取りまとめる『時を見守る者』、カスガ、と申します。…あ、起き上がらなくて結構です。未だ身体が馴染んでいないと思いますので無理をなさらないでくださいな。今はまず契約についてを簡単に説明させていただくだけですので、わたくしの話に耳を傾けていただけますか。後ほど少し身体を動かす時間を取っておりますので、身体の馴染み具合はその時にご確認くださいませ。…それでは時間も限られておりますので早速説明を始めさせていただきますわね。まず、契約内容を口頭にてお伝えします。これに同意もしくは同意しない旨の意思を示すものをこちらの世界に残る形で作成いただく事で契約手続きの完了になります。勇者さまの世界とこちらの世界で文字の互換性はありませんが、普段お使いになっている文字による書面などでも問題ございません。勇者さまのやりやすい方法をお選びください。そして、契約に同意いただけなかった場合は即座にお呼び出しした時へお戻しいたします。同意いただけない旨の意思の記録をこちらの世界へ残していただければ、今後二度とこのたびと同じようにお呼び出しする事はございません。また、これからお伝えする話の内容についてもお忘れになって問題ございません。もちろん覚えておいていただくのも一向に構いませんよ。元の時間へ戻す際に記憶を操作するような処置は行いませんので、ご安心くださいませ。また、契約に同意いだけた場合は契約同意の後、引き続き役割等について詳細の説明をいたします。その後になりますが残された時間を利用して、実際に身体を動かしてみていただきます。…それでは本題となる契約内容の説明に入りますね。」
…なんか、一気にしゃべられた。
まだ「お話」は続きます…
スマホからだと、長文の編集が大変です。PCから投稿したほうが良いかな?