ほおづき
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ついに、来るX dayが訪れてしまった。つまり後輩の入学式にして、僕たちの対面式となる4月1日である。いちおう顔写真は確認したけれど、実際にあったこともない後輩――内田みやこちゃんと会う約束をしているのだ。ここ最近は連絡を取り合ってはいたけれど、それでも会うのには覚悟が足りない。
いや、そもそも。一体どうしてこんな事になっているのか。僕の意思は置き去りにされて、トントン拍子で進行されてきたのだ。
「なんでだろ?」
呟いても何も変わらないのは分かっているし、そもそも一応納得した事でもある。
原因というより、切欠を作った張本人は分かってる。同じ研究室で友人の『翔』だ。あいつがあんな話を持ってこなければこんな事にならなかったんだ。あの憎ましくも恨めない友人の顔を思い出すと、自然と白く染まった溜息が零れ、空へ霧散していった。
大学の構内を歩いていて、先ほどが何人ともすれ違っているというのに、誰からも疑問に思われないのは、ある意味では助かっているけれど、本当に大丈夫なの?
何の根拠を持ってか、一年間の保証期間ありと豪語していた自称アーティストの彼女に、ばれたら保証も何も無いよと疑問に思いつつ、待ち合わせ場所に向かうことにした。
今日は対面式。
世間が嘘を吹聴するのに必死なので、僕も負けじと人騙しを慣行していこうと思う。きっと今日だけでは済まないのだろうけど。
時計で確認すると、まだ時間に少しばかりの余裕があるので、最終確認の為にトイレ……お手洗いに入ろうとするが、間違えて男子トイレに入りそうになり、慌ててストップ。
引き返し深呼吸。周囲を確認。
人がいなくて良かったー。
ゆっくりと挙動不審気味に女子トイレに、入る。入った。
節電に協力、という紙が張られたすぐ近くのスイッチを押し、明かりを灯して、鏡に映る世界を見つめた。
そこにいたのは、どこをどう見ても、立派な女の子である。肩口で切りそろえられ、軽くウェーブの掛かった艶やかな黒髪。ほっそりとした体型にスラリと長い足。背は女の子にしては少し高めでスレンダーである。
化粧なんて、自分がする機会は一生ないって思ってた。鏡に映る自分がまるで別人としか思えない。
……どこをどうみても男には、見えないよね。
それが良いことかは見ない振りをしておく。こんなことは今回限りにしたけれど、何から何まで手伝ってくれた彼女には感謝しないといけない。
本名、飯田隆、もとい貴子。見た目は置いて置くが、間違いなく男である。
なぜ、こんなこと――下手すれば犯罪扱い――になったかといえば、始まりは一ヶ月と少し前。少しは暖かさが感じられる日が増えてきたものの、まだまだ寒さが停滞する二月半ばのことだった。
この物語はフィクションです。作者の過度な妄想がふんだんに込められていますのでご注意ください。
区切りの関係もあって短めでの投稿になります。
ほおづきの花言葉は『嘘』です。