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BAN VANISH  作者: るい
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こでまり

誤字脱字等ございましたら指摘していただけると助かります。また随時感想もお気軽にお寄せください。

 昔から整理整頓は大の苦手だった。乱雑に詰め込まれた押入れの中から、ようやくアルバムを取り出すことに成功した。アルバムは何冊もあって一度に持ちきれない量だ。

 ベッドの枕元のすぐ隣にゆっくり慎重に運んでいく。気がつけば時計の針は零時を指している。それだけ作業に時間が掛かっていたみたいで、窓から見える明かりは月と星だけになっていた。

 ベッドに足を投げ出しながら、アルバムを一枚ずつ捲っていく。最初のページは私が赤ちゃんの頃の写真だ。

「……おでこが広いわ」

 自分の額に手をやりながら呟いた。時々顔がぶれている写真も見つけてしまう。写真を撮ったのはきっとお父さんだろう。

 赤ちゃんだった私が次第に大きくなっていく。ハイハイする姿、立ち上がる姿、歩く姿。泣く顔、笑う顔、怒る顔、悲しい顔。過去の瞬間を切り取った数々の写真おもいで

 そしてたどり着く。幼稚園の入園式の写真だ。お母さんと手を繋ぎながら、お父さんが写真を撮った。たくさん撮った記憶がおぼろげにある。ここで、この幼稚園で私は『きょうちゃん』と会ったんだ。

 それからの写真はほとんど二人が映っているものばかりだ。背が小さくて、どこに行くのにも私と一緒だったきょうちゃん。小学校、中学校、高校とずっと同じ学校に通った。登校の途中で待ち合わせていたけど、私は時々遅れて。彼女はずっと待ってくれていて、一緒に遅刻した事もなんどもあった。先生にも怒られた。私はいつも謝ってたけど、お礼を言った事なんてあったのかな?

 一緒にいるのが当たり前で、見逃していたのかもしれない。きょうちゃんは優しいから……ううん、違う、彼女の優しさに私は付けこんでいなかっただろうか。違うと否定、できないかもしれない。私は案外卑しい性格なのかもしれない。

 クラスはずっと一緒で、すごい運の良さだと喜び合った。お互いに部活動は入ってなかったから、一緒に帰ってどちらかの家で遊んだり、どこかに遊びに行ってばかりだった。きょうちゃんは花が好きだったから、色々な所を探し回ったのを覚えている。家の庭にコデマリを植えているくらいだ。

 コデマリの丈は、きょうちゃんと同じくらいに成長し、春には毎年綺麗な花を咲かしている。

 私はいつもきょうちゃんに迷惑ばかりかけてきた気がする。きっとそうなんだろう。でも私は彼女に何かできたのだろうか?

 いつも一緒にいて、これからも一緒にいる。そんな風に、楽観的に考えていた。そんなはずある訳無いのに。

 私たちは春から違う道を進んでいく。

 私は地元の私立大学に。きょうちゃんは遠方の国立大学に。国立大学は遠いから家からは通えないみたいで、大学近くのアパートを借りることになる。

 離れ離れになったから親友じゃなくなるわけじゃないけれど、やっぱり会える回数が減ってしまうのは悲しい。でも私が我侭言ったってどうにかなることじゃない。それにこれはきょうちゃんの強い意志だ。専門的な勉強がしたい、はっきり告げた彼女の目には普段は見せる事の無い覚悟が宿っていた。

 応援したい、離れたくない、という二律背反の想いを、私はどう判断していいのか分からない。会えないわけじゃないんだから、そう自分に言い聞かせるしかなかった。

 きょうちゃんが進む大学に、地元の人は誰一人行かない。彼女は一人ぼっちになってしまう。信じていないわけじゃないけれど、それでも心配だった。

 私が出来るのは何か。

 連絡は今後出来るだろうし。長期休暇には遊びに行けるだろう。でも普段は忙しいに違いない。

 一つだけ当てがあった。その国立大学に昔進んだ一人の先輩。年は離れているけど面倒見の良い人だった。ただきょうちゃんは異性が苦手だからどうなるか分からない。人見知りだけど同姓なら何とかなるし、先輩に事情を話せば協力してくれるかもしれない。誰か先輩の知り合いを紹介してもらう方がいいかもしれない。

 私は先輩に早速連絡をとろうとして、時間帯を思い出し、手に持った携帯電話をテーブルに置きなおした。明日起きてからにしよう。

 きょうちゃんと別れるまで、もう二ヶ月を切っていた。 


この物語はフィクションです。作者の過度な妄想がふんだんに込められていますのでご注意ください。

いちおう、ジャンル分けに困ってしまったので恋愛物にはしていますが、正直どうなるか。

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