表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/15

『教会の最終兵器「天の雷」? ああ、あの「眩しい光」ならカーテンで防ぎました』

――地上、聖法教会・総本部。


そこには、数千人の神官たちが集結し、巨大な魔法陣を取り囲んでいた。

中心に立つのは、教皇その人だ。


「邪悪な魔王に、神の鉄槌を下すのだ!」

「「「おおぉぉぉ!!」」」


彼らが発動しようとしているのは、国の防衛結界すら一撃で貫く、対空殲滅兵器『天のケラウノス』。

本来なら、邪神が復活した時にしか使わない禁断の奥義だ。


「照準、天空の浮遊大陸!」

「魔力充填率120%!」

「放てぇぇぇぇッ!!」


教皇の絶叫と共に、魔法陣から極大の閃光が放たれた。

それは、空を引き裂き、雲を蒸発させ、一直線に俺たちの家へと迫る『死の光』だった。


   ◇


――天空、浮遊大陸。


「きゃああああ!! 何か来るわよぉぉ!!」

「お、終わりだ……! あんな光を食らったら、骨も残らない!」


移住したばかりの難民たちが、パニックに陥って逃げ惑う。

無理もない。

下から迫りくる光の柱は、直径1キロメートルにも及ぶ極太レーザーだ。

当たれば、この浮遊大陸ごと消滅するだろう。


「主様!!」


アイリスが血相を変えてリビングに飛び込んできた。

セラフィナも聖剣を構え、顔を青ざめさせている。


「敵の超長距離砲撃です! 直撃まであと10秒! 回避不可能です!」

「私の聖剣でも……あれだけの出力は相殺しきれません……っ!」


二人の最強戦力が、初めて『敗北』を予感していた。

それほどまでに、敵の殺意は強大だった。


だが。


「……んあ?」


ソファで昼寝をしていた俺は、瞼の裏を刺すような『眩しさ』に目を覚ました。


「眩しっ! なんだよ、西日か?」


「違います! 敵の攻撃です!」


「攻撃? ……あー、なんか光ってるな」


俺は窓の外を見た。

視界が真っ白になるほどの光。

熱量もすごい。

このままだと、せっかくの昼寝が妨害されるし、家具が日焼けしてしまう。


「チッ、安眠妨害しやがって……」


俺は不機嫌になりながら、アイテムボックスから『あるアイテム』を取り出した。

昨日のガチャで出た、インテリア用品だ。


【UR:神絶の遮光カーテン(全属性反射)】

説明:いかなる光、熱、視線、魔法も100%遮断する最強のカーテン。プライバシー保護に最適。物理攻撃も跳ね返します。


「とりあえず、これ閉めとくか」


俺は窓枠に手をかけ、バサッとカーテンを広げた。


「えっ……主様……?」


アイリスが呆然とする中、俺はただ無造作に、窓を覆った。


その瞬間。


カァァァァァッ!!!!


『天の雷』が、ログハウスに直撃した。

世界が白く染まる。

鼓膜が破れそうな轟音。


だが。


「……あれ?」


いつまで経っても、熱くない。

家も揺れない。


数秒後。

光が収まると、そこには無傷のログハウスと、欠伸をしている俺がいた。


「ふぁ……。よし、これで暗くなったな」


「…………は?」


アイリスとセラフィナが、口をあんぐりと開けて固まっている。

そして、窓の外を見たポチ(天竜王)が、『ワンッ!(ヤベェ!)』と叫んだ。


   ◇


――地上、聖法教会・総本部。


「……な、なんだと?」


教皇の手から、杖が滑り落ちた。


彼らの放った必殺の光は、天空の城に直撃したはずだった。

だが、その光は、城の表面にある『布きれ』一枚に当たり――


反射リフレクション


物理法則を無視して、180度反転して戻ってきたのだ。


「ひ、光が……戻ってくるぞぉぉぉ!?」

「退避ーッ! 退避ーッ!!」

「間に合わん! ぎゃあああああ!!」


ズドォォォォォォン!!


自分たちが放った極大魔法が、自分たちの総本部に直撃した。

大聖堂が吹き飛び、結界がガラスのように砕け散る。

神官たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。


「馬鹿な……! 神の鉄槌を……弾き返しただと……!?」


煤だらけになった教皇が、瓦礫の中で空を見上げる。

そこには、何事もなかったかのように悠然と浮かぶ、天空の城があった。


「あそこには……神でも住んでいるというのか……!」


   ◇


――天空、リビング。


「す、凄い……! あの極大魔法を、ただの布一枚で……!?」


セラフィナが震える手でカーテンを撫で回している。


「これこそ、神具『アイギスの盾』をも凌駕する、絶対防御の聖布……! 主様は、この聖布を『カーテン』と呼び、日除けに使われるとは……!」


「いや、カーテンだし」


俺は再びソファに寝転がった。

これでやっと安眠できる。


「主様」


アイリスが、どこか誇らしげに(そして少し恐ろしげに)微笑んだ。


「今の一撃で、地上の教会の戦力は壊滅したようです。……ですが、あの教皇という男、まだ諦めていない気配がします」


「えー、まだやるの? しつこいなぁ」


俺はうんざりした。

せっかくスローライフを送りたいのに、なんでこう、次から次へと邪魔が入るんだ。


「ポチ、ちょっと行って、脅かしてきてくれ」


『ワンッ!(任セロ!)』


俺が適当な指示を出した、その時。


【ピロン♪】

【システム警告:次元の歪みを検知しました】

【エラー:想定外の『上位存在』が召喚されようとしています】


また新しいログが出た。

今度はなんだ?


   ◇


地上。

半壊した大聖堂の中心で、教皇は狂気じみた笑みを浮かべていた。


「ククク……こうなれば、もはや人の手には負えん。……禁忌を犯すぞ」


彼は懐から、白く輝く『天使の羽根』を取り出した。

それは、かつて神が地上に落としたとされる、本物の聖遺物。


「いでよ、神の尖兵! 天空の魔王を討ち滅ぼせ!」


教皇が自らの心臓に短剣を突き立て、その血を羽根に捧げる。


ゴゴゴゴゴゴ…………ッ!!


空が割れた。

俺たちのいる浮遊大陸よりもさらに上。

本当の『天界』への扉が開く。


そこから降りてきたのは、背中に六枚の翼を持つ、光り輝く巨人――『熾天使セラフィム』だった。


「……人間風情が、私を呼んだか?」


天使の声が、世界中に響き渡る。

そのプレッシャーは、ポチ(天竜王)すらも震え上がらせるほどだった。


「あーあ……」


俺はモニター越しにその姿を見て、頭を抱えた。


「なんか、ヤバそうなのが出てきたな」


だが、俺のアイテムボックスには、昨日のガチャで出た【UR:神殺しのロンギヌス】が眠っていたりする。

……これ、使わないとダメかな?


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ