第二話 最後の願い
結構初っ端から重たいと思います。
スプラッタな場面があるので、気を付けてください。
バンッ
おじさんに突き飛ばされて私は壁に背中を打ちつけた。
「ゲホッ、ゲッホ、オエッ」
びちゃびちゃと胃に入ってたものが外に吐き出される。
「きったねぇなぁ!誰が掃除すると思ってんだよ?!」
服の首根っこを掴まれて、ベランダに放り出される。
ベランダに放り出されれば半日は締め出される。
お父さんが死んで、お母さんはほぼ強制的におじさんと結婚した。
それからおじさんに暴力を振るわれるようになった。
だからもうこれはいつも通り。半日も耐えれば中に入れてもらえる。
だからずっと待つ。
そんな生活を5年ほど送って、私は15歳になった。
幸いおじさんは世間体を気にする人で学校にはちゃんといけと言われたし、服も学校に行くためだけに買ってもらった。でも休日に外へ出たりすることも、部活に入ることもさせてもらえなかった。
母はいつも蹴ったり殴ったりされなかったが、おじさんを止めることはできなかった。でもそれは仕方がなかった。初めの方に母は私を庇ったけど庇った方が私も母も殴られたし、庇わない時よりも酷くなる。
それでも叔父がどこか出かけると私の傷を手当てしてくれて
「ごめんね瑠夏。守ってあげられなくてごめんね。こんなお母さんでごめんね」
と泣きながらそう言うのだ。
だから大好きな母が殴られるのは嫌だ。泣くのも嫌だ。私だけ耐えればば母は傷つかなくて済むのだから。
でもそんな生活も続けられなくなっていって、母と2人で夜逃げした。
それからは安心して幸せに母と2人で暮らしていた。
それなのに。
運悪く母があの男に見つかってしまったのだった。
家にまで付けられていたようで、インターホンが鳴った。
「こんにちはー、隣に越してきた山本でーす。ご挨拶しにきましたー」
そこから聞こえた声は忘れもしないあいつのものだった。
母は忘れていたようで鍵を開けてしまった。
私は止めたが遅かった。
扉を開けてズカズカ入ってくる
「あははっ、ざまぁw」
あいつはそう言って、手に握った包丁で母を殺した。
母は即死だった。
それなのにあいつはにっこりと笑っている。
私の中にものすごくドス黒い気持ちが生まれて目の前が真っ赤になった。
「………やる…」
「え?聞こえねぇなぁ?」
「……殺してやる!」
私は近くにあった出刃包丁を取ってあいつに向かって振りかぶる。
絶対に許さない。絶対に殺してやる
腹に包丁を刺されたけど痛くなかった。だからあいつの腕を切りつけた。
「ぅぅっ!」
切られた手を押さえて縮こまっていた。
人を殺すなら自分も殺される覚悟をしとけよ。
「死ねっ!」
「ひっ、ぎゃぁぁぁぁっ!」
そう言って私は刺しまくった。
冷静になった頃には血だらけで吐き気がしてしょうがなかった。
だんだん寒くなっていって、なのにお腹は熱かった。
「…おかぁ、さん」
返事はない、とても悲しくて悲しくて仕方なかった。
涙が溢れてくる。
どうして?どうしてあんなに優しいお母さんが死ななきゃいけないの?
どうしてあいつがお母さんを見つけたの?
どうしても納得できない、できるわけがない。
こんなふうに終わるなんて、そんなの許せない。
もし、願いが叶うなら、もう一度お母さんの子になりたい。
そして、あんなやつが居ないところに暮らしたい。
そんな願いを持ってわたしは息絶えた。
我ながら急展開すぎるだろと思いました。