表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

016:自白

叩き起こされた男はキョトンとした顔で俺たちを見ていた。

無力化したとはいえ、彼らも自分達が真田隊のメンバーだと思い込んで襲撃をかましてきたのだ。

それを思い出したらみるみるうちに青い顔になっていく。


「す、すまない……ど、どうか殺さないでくれ……」

「殺すも何も……まだ処遇は決めていないけど?」


俺としては殺すつもりはない。

危害を加えてくるモンスターであれば容赦なくやるが、相手は人間だ。

少なくとも会話できる相手であれば、事情を聴くのが筋だろう。

それに、目の前にいる人間は日本語を話しており、異世界語ではない。

眼鏡もしているし、見た目もサラリーマンのような風貌の純日本人だ。


「聞きたいことがいくつかあるが……アンタは元々安全地帯にいた人か?」

「あ、ああ……どうしてそれを?」

「見た目が他の奴と違うからさ……異世界人なら真っ先に異世界語を話すが、アンタはそうじゃない。それに顔つきも日本人だからね。大方事務方で働いていたと思うんだが、アンタ何やって追放されたんだ?」

「そこまでお見通しとは……情けない話さ。私は一年前まで信越州東部管区内にある資源エネルギー庁で会計責任者をやっていたんだが、そこで不祥事を起こしてしまったんだ。娘が……神経が硬化していく珍しい病気を患って……それで色んな伝手を頼った際に異世界の霊媒師が治せるって言ったんだが、その治療費があまりにも高額で……」

「それで省庁の金に手を付けて横領で捕まって追放ってわけか……横領罪での追放は1000万円以上だ……ってことは、アンタ相当その霊媒師に貢いだんだろう、難儀なものだな」

「ははは……確かに霊媒師の腕が良くて娘の病気も治ったが、ご覧の通り……私は財産を全て当局に没収されて離婚した上に、無一文で安全地帯外に放り出された後、色々あって「灰燼」のメンバーになったというわけだ」


俺が目の前の相手に話している間、ラウムは真偽を確かめるべく嘘を付けばすぐに分かる魔法をこっそりと詠唱していた。

男は目の前で語った話には嘘の反応が無いと耳元で囁いた。


「アリアケちゃん。この人の話はここまでは本当よ。嘘はついていないわ」

「そうか……じゃあこれから本題に入るわけだが……嘘を付けば容赦なく始末する。嘘を付かずに素直に話せば、しばらく拘束した後に安全な場所まで俺たちが行った際に拘束具が解くようにしてやる。それでいいか?」

「あ、ああ!構わない!何でも話すよ!」


嘘を言わなければ殺さない。

真実を話せば助かる。

この状況では、嘘を言いたくても言えないだろう。

余程空気の読めない奴か、嘘を真実として刷り込ませることが得意な奴だけだ。


「まず、なぜ真田隊を襲撃したんだ?回収屋への襲撃はご法度のはずだ。それも真田隊なんて信越州の自衛隊や米軍との付き合いの長い集団回収屋だ。武闘派だし、何なら地元の不良やヤクザですら手を出す事すらないんだぞ?」

「私もそれをボスに忠告したんだ……だけど、ボスは忠告を弱腰だと捉えて相手にされなかったよ……」

「ボス?ボスが真田隊への襲撃を取り仕切っているのか?」

「ああ……その通りさ。気性の荒い人でね……人への暴力を躊躇なくやる人だ。先々週も、奴隷の積み荷の輸送に失敗した運転手の手を切り落としたんだよ……ゴブリンに襲われて五体満足で帰ってこれた唯一の奴だったが……そんなボスだから失敗することは許されないんだ。だからみんな相手が手を出したらいけない相手でもボスの命令に従ってしまうんだよ。私みたいにね……」


灰燼のボスによる指示……。

だとしても、あのボスがそんな自殺行為に等しい行為をするのか?

半年前に灰燼のアジトである松井田インターチェンジに立ち寄った時には、確かに太っていて威圧的ではあったが……回収屋には襲撃を噛ますような脅しなどはしなかった。

そのような事をする奴ではない。


「あの太っちょのボスが真田隊への襲撃を命じたのか?」

「いや、その……前のボスは先月死んだんだよ」

「死んだ……?」

「愛人の女と一緒にな……二人とも、連邦で流行している違法な薬に手を出してしまったらしい。それからすぐに前のボスの右腕だった奴がリーダーになったのさ」

「……右腕だった奴がボスになってから、厳しくなったというわけか?」

「ああ、色んな事業に手を出しているし、何なら金に苦心しているようだからね……真田隊のメンバーも複数人身柄を拘束しているし、その真田隊のメンバーを使って交渉しようとしているようだが……私も詳しい話までは聞いていない、とにかく金を集めるのに必死だ」

「……なる程な……」


金に困って集団回収屋の真田隊に手を出した……。

それならこの襲撃も筋が通る。

真田隊を襲って連絡が入ってこないのであれば、追加の偵察隊を送り込んでくる。

そして、その偵察隊にも手を掛けているのであれば、金銭目的で襲撃したというわけだ。


……ギンがゴブリンたちに身柄を拉致されたのが二週間前と言っていたから、コイツの話も嘘ではないはずだ。二週間前に奴隷を積んだ輸送車が襲撃された事と、その直後に真田隊が襲撃された事を鑑みれば、真田隊を脅して身代金を掠め取ろうとしているか、もしくは資金確保のために手を出したのは十中八九間違いないだろう。

……真田隊のメンバーがまだ生きているとなれば、助け出したほうがいいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ