悪魔の暇つぶし
一体のまだ若い悪魔が、退屈から地獄を抜け出して地上へと現れた。
「へえ、これが人間の作った文明かあ」
月に照らされて堂々とした姿を浮かび上がらせるビルを眺めて悪魔はそう呟く。そうして悪魔は人間の街を歩き始めた。
そうして人間やその文明を楽しんでいると、不意に悪魔の頭上でとてつもなく強い光が輝いた。そして次に悪魔が気が付くと、体を拘束された上で見たこともない器械に囲まれ、想像したことすらないような奇妙な生物に観察されていた。
なにかに捕まったらしいと気が付いた悪魔は声をあげる。するとその奇妙な生物が話しかけてきた。
「我々は別の星から来た、お前らの言葉で言うならば宇宙人だ。これからこの星で支配的な立場であるお前たちは、どうやったら殺せるのかを実験する」
そうして奇妙な姿をした宇宙人は悪魔の体を痛めつけはじめた。
しかしそこは悪魔である。どれだけ痛めつけられようとも死ぬことがなく、それどころか食料すらないのにまるで弱りもしなかった。
その内に宇宙人が音を上げた。
「もうダメだ、住民の一体一体がここまで生命力があるなんて。割に合わないな、この星を占領するのは諦めよう」
そして悪魔は地上に解放された。
地球から遠ざかっていく宇宙船を眺めながら、悪魔は一人でこう呟いた。
「まあ、ちょうどいい暇つぶしにはなったかな」
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