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警察とギャングの銀行前抗争は1vs1の殴り合いで

「ただいま戻りましたー。院長先生お留守番できてますかー?」


 メカニックでシートベルトを付けてもらい、安全運転で帰ってきました。


「院長先生ー?もしかしてカジノに行っちゃったんですかー?」


「そんなに呼ばなくても院長はここに居ますよ。って、あなたですか。シートベルトつけてもらいましたか?」


「ちゃんとつけてもらいましたよ。ところで院長先生はギャングのボスさんって知ってます?」


「ボスさん?あー、あのボスさんですか。仲間思いの良い人ですよね。確か、家族のために大きな家を買うのが目標なんだ!って張り切ってましたけど、そのボスさんがどうかしたんですか?」


 とてもいい人じゃないですか。家族のために家を買う、そのために懸命に努力するなんていい話。そのお金の入手方法さえ問題なければ。


「メカニックでボスさんに会いまして、いい人だなーと。院長先生との関係を勘違いしてましたけど、あんないい人が本当にギャングのまとめ役なのか疑問に思っちゃいました。」


「ボスさんですか。見た目は確かにボスって感じはしないですよねー。でも、あの人の指揮のもと、飛行場を襲撃したり、銀行強盗を繰り返したりしてるんですよ。」


 恋バナ好きのお姉さんじゃなかったんだ。人は見かけによらないって言うけど、あの人ほどこの言葉があってる人はいなさそう。


「大きな事件が起きるまで自由ってさっき言ってましたけど、その大きな事件って、ボスさんのギャングが起こすんですか?」


「そうですよ。さっきみたいな大きな施設を狙うときは、負傷者も一か所に集まるんで救急隊としては楽なんですけど、小さなコンビニなんかに複数一斉強盗とかになると、人員が必要になるので、大変なんですよ。今日はどちらになりますかねー。」


 ボスさんから何か聞いてませんか?って言われても、何も聞いてませんよ。ギャングのボスだって本当か疑ってたんですよ?どこに襲撃かけるんですか?なんて、聞けるわけないじゃないですか。


「場所は知りませんけど、時間ならそろそろじゃないですか?私がメカニックから帰るとき、既にボスさん帰った後だったんで。」


「それならそろそろ署長さん辺りから連絡来そうですね。」


 ギャングの襲撃が始まると警察から連絡が来るんですか?どういう経路でその連絡来るんです?


 その時院長先生に連絡が入る。


「もしもし、院長です。…そうですか、準備はしておきます。…はいはい、安くはしませんがちゃんと治しますから、頑張ってください。それでは。」


「今の警察からですか?」


「そうです。署長さんからですね。ボスさんの所のギャングが銀行に襲撃を仕掛けたようで、事件終了後の治療を頼まれました。」


「それじゃあ他の先生方を呼び戻した方がいいんじゃないですか?」


 銀行強盗って銃持った犯人が襲撃ってイメージがあるんで、警察とギャングの銃撃戦になるんじゃないですか?院長先生一人じゃ手が足りないでしょう?


「それは大丈夫ですよ。我々救急隊が行くのは事件終了後なので、襲撃始まったばかりの今は待機です。それに、怪我人が出たら救急隊全員に通知が行くようになってますから。銀行強盗なら怪我人も少なそうですし、あなたが手伝ってくれるなら、私とあなたの2人で対応できそうですけどね。」


「それは手伝って欲しいという事ですか?」


「手伝ってくれたら私たちで対応できそうなんですけどねー。」


 この人、自分から手伝ってって言わないつもりですか。


「あなたが私について現場に来て、軽傷者に包帯とか巻いてくれたら助かるんですけどねー。」


「他の先生呼んで一緒に行ってきたらどうですか?」


「軽傷とはいえ、治療の方法を知っておけばこの先役立つこともあると思うんですけど。」


 そりゃ治療方法を知って損なことは無いと思いますけど、手伝って欲しいって言えないんですかね。


「重軽傷の見分け方や、包帯の巻き方とか教えますから、手伝ってくれませんか?あなたが来てくれれば部下たちが休めるんですよ。」


 手伝ってって言えて偉いですねー!小声で点数稼ぎって言わなければ、休みを考える良い上司だったんですけど。これからも仕事サボってカジノで遊ぶために私を利用するんですか!


「そもそも医療関係者でもない私が、怪我の具合を見て判断し、治療するってやって良いんですか?」


「許可出してるの院長である私なんで問題ありませんよ。何せ私、この街一番の医者ですから。」


 そうでした。この人ギャンブル中毒者の面しかまだ見てないけど、誰からも院長と呼ばれる医者でした。署長さんも、この後の治療を頼んでくるくらい本物でした。


「それじゃあ手伝ってくれますね?もちろん、あなたが治療した患者の治療費はあなたが貰って構いませんから。それじゃあそろそろ行きますよ。怪我人を放置しすぎると、病院に文句が来ますので。」


 いつの間にか手伝う事になってる!?一言も了承をした覚えはないのに。これが、組織をまとめる長の手腕ですか。


「私の救急車で緊急走行していきますので、時間はかからないと思いますよ。」


 現場までの時間なんて気にしてませんけど!?


 院長先生の車に乗り北に向かう。署長さんの連絡が来てからちょっと時間経ってるけど、事件は終わったのかな?


「院長先生?救急隊は事件が終わってから現場に行くんですよね?事件が終わったってどう判断するんですか?」


「警察が犯人を全員捕まえる。もしくわ、犯人が全員逃走する。これが一番わかりやすい事件の終わり方です。まぁ、この終わり方はなかなか珍しんですが。だいたいの場合は、数人の犯人を捕まえるも、他は逃げられるって感じでしょうかね。署長さんの判断で犯人追跡中止になったらそれも事件の終わりになります。」


「今回は銀行強盗なんですよね?犯人が人質使って籠ったら長い間事件解決しないんじゃないですか?」


 私が知ってる銀行強盗って素早く犯人が金持って逃げる時と、人質とって警察に要求通そうとするときの2パターンなんですけど、銀行に向かってるってことは、人質とってるってことですよね?


「人質がいても事件解決に長い時間かかるとはなりませんよ。どちらかと言えば、その人質を解放する交換条件によって長くなるか決まりますよね。」


 人質を解放する条件によって事件解決までの時間が決まる?人質が解放されるのは決定事項みたいな感じで言ってますけど。人質の安全確保を優先するから時間が掛かるんじゃないんですか?


「警察とギャングの代表者で殴り合いとかなら短い時間で終わるんですけどねー。警察が勝ったらギャング全員逮捕。ギャングが勝ったらギャング全員逃走。救急隊である我々は負傷したほうだけ治して終わり。治療費は稼げませんが、一番早く終わるやり方ですね。」


 人質の解放条件で一対一を希望したらそうなるってこと?よっぽど力に自信があるか、人質はいるけど、逃げ切れる自信が無い時の一か八かみたいな状況じゃないとそんな要求しないでしょ。


「今回はおそらく追跡する警察の数を減らす、または、警察がアタックするまでの時間制限とかじゃないですかね。」


 人質で警察の数を減らすとか要求できるんだ。一対一を要求できるならそれも可能か(?)


「アタック禁止って何ですか?」


「逃げるギャングを警察車両で突っ込んで止めるってことです。ギャングも必死に逃げるますから。止まれと言われて止まるわけもないですし。ですから車で突っ込んで無理やり止めるんです。そのために警察は硬く、ギャングは速くメカニックで改造してるんですね。あなたが会ったボスさんもこのためにメカニックに行ってたんじゃないですかね。」


 大きな事件はボスさんの所のギャングが起こすって聞いたからそうなのかな?って思ってたけど、やっぱりそうなんだ。ギャングは逃げるための速さに振ればいいけど、警察はアタックの時の硬さに加え、追いつくための速さも必要だから、同数で勝つのは難しいよね。


「メカニックの人が警察側に寄ってくれないと、警察の人は勝てそうにありませんね。」


「車のもともとの性能差とかあるみたいですよ?詳しいことはメカニックに聞いた方がいいですけど。」


 性能差で警察の方が勝ってるってことなのかな?じゃないと、互角の勝負にはならないだろうし。それでも警察が勝てないのは、人数差か運転技術の差か。ギャングが上手なのか。


「そろそろ現場付近に着きますね。終結してるといいですけど。」


 銀行近くに近づくと重複するサイレンの音に人の怒号が聞こえる。銃の発砲音が聞こえないのが幸いかな。


「おや。まだ終わっていませんでしたか。大きな銀行ですから、人質の数も多かったんですかね?ボスさんたちは警察にどんな要求をしてるんでしょうか。もう救急隊強制突入して事件終わらせてあげましょうか。」


「発砲音は聞こえないとはいえ、こんな危ないところに突っ込めないですよ私!」


「冗談ですよ。ちょっと署長さんにどんな状況か連絡してみますね。」


 目が真剣だったんですけど…。

 院長先生は署長さんに連絡を始めたけど、電話越しなのに私まで怒号が聞こえるって結構忙しい状況なんじゃないの?なのに、からかうように話し伸ばしてるように感じるけど、あとでどうなっても知りませんよ?


「………はいはい。そんな怒らないでくださいよ。今日は勝てるか聞いただけじゃないですか。………えぇえぇ。分かりましたよ。カジノでことねさんを見たらあなたに連絡するようにしますよ。………はい、それでは。」


「忙しいときに話を長引かせたようですけど、どんな状況です?」


「あぁ、どうやらことねさんは今日はカジノで大勝ちしたそうで。ただ、その金で車を改造したら修理分を含めていなくて足りなかったそうですけど。なので、強制的に現場入りしたそうです。どんな経緯であれ、ギャン友が現場で活躍する姿を見れると思うと感慨深いですね。」


 ことねさんって誰ですか?ギャン友って言った時点で当たりがつきますけど。あれですね?カジノに行ったときに合ったパトカーの持ち主ですね?


「ことねさんの事は聞いてないです。事件終息にどれくらいかかりそうなのかを聞いたんじゃないんですか。」


「え?…あぁそうでしたね。ギャン友が珍しくちゃんと現場に来てると聞いてなんだか嬉しくなってしまいまして。事件終息に関しては、もう少しで終わるそうですよ。今回は一対一で決着付けるそうで、今勝負中とのことです。」


「一対一ってことは、相手はよっぽど力に自信があるってことですか?」


「力ですか?そんなことないと思いますよ?それに力なんてあっても関係ないですからね。今回の勝負は、運で一確ダウンするハッピー棒で勝負とのことですから。」


 力が関係ないハッピー棒?


「ハッピー棒を知らないんですか?これ面白い機能がついているんですよ。1%の確率でハッピー棒で殴った相手をダウンさせる面白い機能です。これで勝負という事で、警察もギャングも盛り上がってるようです。危険は無さそうなので、あなたも見てみますか?」


 1%の確率で相手をダウンさせるハッピー棒?いったい誰がどんな理由で作ったんですか。無駄に高度な機能な気がするんですが、何にも使えなくないですか?


「今回は治す人もやられた方の一人で楽でいいですねー。」


「その一対一ってギャングが負けた場合って大人しく従うんですか?全員捕まるんですよね?」


「そこは問題ありません。ボスさんがしっかりと言いつけますので。あなたはあの人を優しそうな人と言いますが、あの人はしっかりとギャングのまとめ役ですから。ボスさんに逆らう人はあの人の組織にはいませんよ。」


 ボスさんはボスとしての役目をしっかりとやっているわけですか。


「それに今回もギャングが勝つと思いますしね。」


 院長先生によると、ハッピー棒を使った勝負は警察とギャングの勝負としては定番化しており、もう何度目の勝負か分からないらしい。だけど、その勝負の結果ははっきりしているらしく、ギャングの全戦全勝らしい。一発目で決着つくときもあれば、何度も殴り合った結果勝つこともあるらしく、この勝負の時は警察の運が大層悪くなるらしい。それって、ネルさんがハッピー棒握ってませんか?警察じゃないですけど。


「警察は毎回今回こそはって意気込んでるので、声が大きくなるみたいですね。」


 なんで勝率悪すぎるのに、その勝負をするのか。あ、人質解放の条件でしたね。そりゃ、勝率の良い一対一を選びますね。


「一対一ってどれくらいの人質がいれば要求できるんですか?そんなに勝率が悪いなら、警察も受けたくないですよね?」


「勝率0%ですからね。負けると分かってる勝負は普通受けないと思いますよね?署長さんは違うようですけど。一回でも勝てば0%になることはもうないんだー!って言って、毎回申し込まれたら受けてますので、人質は何人でもいいんじゃないですかね?他の警察の人も面白がってるようですし。特に副署長さんは署長さんが叫んだ時から笑ってるようですよ。」


 あのお堅そうな副署長さんが面白がって笑うって、副署長さんは毎回負けると思ってませんか?


「どうもどうも署長さん。院長先生が来ましたよ。勝てそうですか?」


「院長てめぇ!要請したのは院長以外の医者って言ったじゃないか!」


 こちらの方が署長さんですか。副署長さんの赤いキャップも目立つなーとは思ったけど、署長さんはもっと目立ちますねー。なんか、ハロウィンの警察のコスプレのような恰好じゃないですか。それよりもだいぶ露出高い気がしますけど。よく見ると他にも同じ格好の人がいますし、もしかしてそれって警察の制服なんですか?


「そんな冷たいこと言わないでくださいよ。今他の先生方はカジノで休暇を楽しんでいますから、私しかいませんよ。それで、今回の勝負は誰と誰なんですか?」


「しょうがねぇな。うちからは山田が出てるよ。相手はボスだ。」


「山田さんですか…。今回も警察は負けですね。」


「そんなことない!山田だってやるときはやるやつなんだ!」


「山田さんがボスさん相手に勝てるとは思えないんですけどねー。」


「院長先生どういうことですか?」


 どうやら警察の山田さんという方はボスさんに弱いらしく、この対戦カードになった時点で勝つことは無いらしい。どうも山田さんはボスさんに憧れなのか恋慕なのか、とにかくボスさんを殴ることが出来ないらしい。そのため毎回ボスさんにタコ殴りにされ負けているらしい。警察がギャングに憧れか恋慕か持っていていいのか警察!


「個人の気持ちを強制することなんて出来ないだろ?警察の情報を他に売らないなら誰に恋しようが問題ない。ただし、他所に売った時点でそいつは敵だ。敵に容赦はしない!」


 格好は変だけど、台詞はかっこいいぞ!署長さん!!!


「山田さんの醜態から目を逸らしてはダメですよ署長さん。」


「醜態じゃない!勇姿だ!」


 ボスさんと山田さんの戦いに視線を移すと、現在進行形でボスさんにタコ殴りにされてる副署長さんと同じような格好の男性。でかいな。


「ガードもしないでタコ殴りにされてますね。」


「あれはどう見ても醜態ですよね?」


「警察としての職務よりも気持ちを優先するんですね。」


「ボスさん相手じゃなければ山田さん、取り締まり厳しんですけどね。私も何回取り締まりを受けそうになったことか。」


「院長は治療費ギャンブルなんてやるからだろ。別に私はそれを公認なんてしてないからな。」


 医療費ギャンブルって何ですか院長先生!いくらカジノ大好きギャンブル依存者とはいえ、仕事にギャンブルなんて絡ませないくださいよ!


「いつも儲けさせてもらってます。私は提案をするだけで、強制はしていませんので。それに、当たれば無料、外れたら2倍ってだけで、当たる確率も3分の1。カジノより当たりやすいでしょう?」


「だから逮捕が出来ないんだ!困ったやつだよ!」


 治療行為の多い警察に対してギャンブル交渉って。しかも3分の1の確率で無料になるかもしれないって、乗らない警察はいないでしょうよ。出費が減るかもしれないんだから!


「それにしてもボスさんの殴りっぷり。自分の事を好いてくれる相手に対して容赦ないですねー。」

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