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47話「コンニチワ」

 アーリンたちが街中で大立ち回りを行ってから、2カ月という時間が流れた。

 アーリンたちは件の街から北西に、霊峰を回り込むように移動を行っていた。

 途中の街々では、未だに動物たちの異変に気が付いている様子もなく、人々は平和に日々を謳歌していた。

 そんな旅路の中で、アーリンたちは密かに石を体内に持つ変異種を狩りながら旅を続けていた。

 理由は二つあった。

 一つはハクの食欲のせいだ。

 石を持つ動物たちの多くはその身を巨大に変化させ、その重量をもって他を圧倒する傾向が強かった。

 アーリンはおそらく単純な理由だろうと話す。

 身体が大きい、重量が重いとは単純な暴力を行うときに絶大な威力となる。

 まして技を持たない動物たちにとっては、絶対的な強者となるのだろうと。

 アーリンたちにとっては、ありがたいことこの上ない。わざわざ高い金を払って得た食料の目減りを防ぐことができる上、その皮や角などを好事家に売りつけることができれば路銀の補充もできるのだから。

 それを理解してか、ハクも最近はアーリンたちの食料には手を出すことも少なくなってきている。

 ちなみにハクの食べ残しが、アーリンたちの食事になることも石持ちを狩るメリットと言えるかもしれない。

 二つ目の理由は石持ちの動物たちが持つ石、魔石とアーリンが呼ぶもの。そのものをアーリンが欲しているからだ。

 アーリンが闘気術や魔法を使う際、魔石の重量を減らして使用してることが旅の途中で発覚したのが始まりだった。

 マーファの精霊術があるため致命的なデメリットはなかったものの、肝心の奥の手である魔法が使えないばかりか基本となる闘気術すらまともに使用できないとあっては旅を続けることすら危うくなる。

 そうした理由からアーリンたちは、人知れず石持ちの動物たちを魔石を消費しながら狩るという、自転車操業的な旅をしてきた。


 そして今日もとある集落からほど近い山で、わずかな情報を頼りに石持ちの動物を求めて狩りを行っていると、不思議なコエが聞こえてくる。

「ね、何か聞こえる」

 マーファが、聞こえてくるコエに誘われるように足を進める。

 どうやらコエの主は食事中のようだ。

 香ってくる肉が焼ける芳ばしい匂い。聞こえてくる歌のような弾んだコエ。

 マーファの警戒心が、ついつい薄れていく。普段であれば藪のなかで警戒心を解くことなど無いのだが、火で炙られる肉の匂いに安心感を覚えた。

 音など気にする様子のないマーファに不安を感じながら、アーリンはあとに続く。


 声が近くなった時マーファの足元で、パキッと小枝が音を立てる。

 火の元にいた者たちも、突然の音に一斉にアーリンたちの方を振り向く。

 その者たちの出で立ちは、腰ミノだけを巻いている。身長はアーリンたちの胸元程度、顔は表情筋が怒りで固定されたような眉間のシワ、睨みあげるようなつり上がった眼。何より特徴的なのは緑の肌だろうか。

 一目で人種でないのがわかる。アーリンたちが初めての出会った亜人種と呼ばれる種属。

 それはゴブリンと呼ばれる種属だった。

 ゴブリンたちは、アーリンたちをあからさまに警戒している様子を見せながら呟く。

「ギィィィ・・・・・・コ、コンニチハ? ギィィィ!」

「ギャァァギャ、コンニチハコンニチハ!」

 つんざくようなコエをあげるが、好意的な言葉にマーファが無警戒に近寄っていく。

「マハ姉、止まって」

 しかし、アーリンは先にいくマーファを引き留める。

「そこから先はダメだ、戦闘になる。彼らの警戒心が限界を越えるよ」

「だって……」

 そう確かに目の前の亜人たちはアーリンたちに友好的にあいさつをしていたかに見える。

 しかし、この世界の言語のすべてを視認できるアーリンの瞳には、全く違う言葉が映っていた。

(侵入者がいる! 警戒しろ! 警戒しろ! 取り囲んで追い返す!)

(身を隠しながら後ろに回れ! 取り囲め! 身体を出すな、早く集まれ!!)

 アーリンたちが見つけた他にもいた仲間たちを呼ぶ亜人たちの声。

 それに伴い次第に増えていく気配。その包囲が完成する前に、アーリンたちは亜人たちとの距離をとる。なおも警戒の声は聞こえるが、声の質に緊急性の色は少しだけ薄くなる。

 突発的な衝突は避けられたが、アーリンたちと亜人たちのにらみ合いが始まってしまった。双方とも動くに動けない。まったく違う種同士がどうすれば衝突を避けられるのか、お互いがお互いを観察する時間が流れる。

「ねえ、なんでこんなことになってるの? あいさつしてきたじゃない」

「きっと、鳥を同じなんだと思う。さえずりと地鳴きを変えながら会話をしてるんだよ。だから人間には彼らの警戒がわからない」

「訳は分からないけど、この状況はどうする? ハクが限界みたいなんだけど」

 アーリンたちの鼻にも亜人たちが焼いている肉の香りが届いてきている。獣の体であるハクの鼻にはアーリンたちが感じるよりも強烈な匂いとなり、食欲を刺激している。

 アーリンたちも旅立ってから分かったことではあるが、ハクは空腹の時間が長引くと極めて狂暴な一面を見せることがある。そんなハクがこのにらみ合いを許すはずもなく、今まさに亜人たちに飛びかかろうとするその直前。


「コブたちが騒いでると思ったら、あなたたちはいったいどなたですか?」

 今度はアーリンの目にも同じ言葉が映っている。

 アーリンたちと同じ言葉を発した人物。亜人たちと同じ肌の色をし、亜人たちよりもアーリンよりも立派な体躯をもつ

男。亜人たちと同じと思われる種族の男が、亜人たちの囲いの外から現れたのだった。

 

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