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125話「何かある」

「フレット! そっちに何かあったか!?」

「何もないようです!!」

「こっちもダメです! 兄貴」

 毒ヘビとサソリの魔物を撃退したアーリンたちは、大地の大精霊が示した岩山を捜索していた。

 アーリンたちが魔物と戦っているうちに、ガーランドの姿はどこかに消えていた。

 それも仕方がないと、諦めて本来の目的に戻ったのだ。

 アーリンとフレット、アディの3人は岩山の捜索。

 タメエモンとマーファは、討伐した毒ヘビとサソリの解体作業を行っている。

「本当にあるんすかね?」

 疲れた表情のアディは、アーリンに疑問の声を投げかける。

「あると思うんだけどな」

 大地の大精霊を疑うことなどしたくはないのだが、もしかしたら見当違いのところを探しているのかもしれないとどこかで思ってしまうアーリンもいる。

 この周辺は、大地の大精霊が永らく観測できなかった土地だ。

 大精霊からみて異変に見えるモノも、もしかしたらもの土地特有の何かなのかもしれない。

 そんな疑いを持ってしまうほどに何も見つからない。


「……」

 アディは休憩がてら水の魔法の練習に勤しんでいる。

 自分の着ている鎧には、水分は必須。

 アーリンに何度も魔法で潤してもらっていたが、アーリンたちの手を煩わしたくはないと最近は魔法の練習に忙しい。

 そんなアディが、手元ではなくタメエモンとマーファに集中している。

「どうした?」

 アーリンはそんなに気にした様子もないが、アディは心配そうな顔をしている。

「信じないわけじゃないんですが……大丈夫なんでしょうか?」

「ん? ……ああ。大丈夫なはず」

 アーリンたちは、討伐した魔物が復活しないように魔物の体内で生成される魔石を取り除いている。

 魔石はアーリンたちが使う魔法に使用するだいじな資源でもある。

 だから、どんな魔物であっても解体作業というモノが必要になるのだ。

 もう一つ、アーリンたちが魔物を解体する理由がある。


 それは食するため。

 旅から旅の生活では、食料はいくらあっても足りない。

 何よりハクという大精霊が宿っているキツネは、自身の体重の何倍もの食糧を消費する。

 幸いなのは、ハクがあまり気わず嫌いをしないところだ。

 獣の肉も魚の身も、ほとんど何でも文句も言わず口にする。

 それはハクが必ずしもすべての食材を食べているからではない。

 ハクが口にする何割かは、食道には行かず歯を立てた瞬間に目には見えないほどの粒子に分解されてしまう。

 そして分解した粒子を万素に変換して取り込むのだ。

 だから基本的にはハクは好き嫌いをしない。

「でも……ハク様だって……」

 言葉を濁すアディが、指し示す先にハクの姿がある。

 マーファに抱きかかえられて、タメエモンが手に持った肉塊を押し付けられている。

 ハクは絶対に口にしないと顔を背けている。

 何度かマズルに肉塊を付けられ、怒ったようにタメエモンの手を噛もうとしている。

「まあ、見てくれがよくないからな。けど味は二の次なんだから潔く受け入れちゃえばいいのに」

 ハクが嫌がるのも理解はできるが、そもそもタメエモンの持つサソリの肉も傍らに転がっている毒ヘビの肉も生物には有害ではない。

 アーリンの万能眼で、可食部位は判別済みなのだ。

 ……何故かサソリの毒腺が可食部位だと判明したことは内緒だが。

 まあ、あっちはあっちに任せようとアーリンは探索に戻る。

 不安そうにしていたアディもアーリンの後ろをついていくが、時々不憫そうにハクのほうを振り向いている。


「アーリン! こっちに来てください」

 しばらく経つと、フレットがアーリンを呼びつける。

 何があったのだろうとフレットのもとに行くと、何もない岩肌を指し示すフレットがいた。

「何かおかしいんですよね。万素の流れがあるのに」

 そう言われて、アーリンは万素のチャンネルに視界を切り替える。

 そう言われてみれば、確かに隙間も何もない岩肌に万素の流れがあるのだ。

 しかも大精霊が暴走しているのかと疑うほど、大量に流れ込んでいる。

「確かに……この裏に何かあるのかな」

 岩肌を叩いてみても殴ってみても変化はない。

 わずかな突起に指をかけて引っ張ってみるが、動く気配さえしない。

「……ダメだ」

「ハク様に聞いてみましょうか?」

「そうだな。お~い! マハ姉!! ハク連れてきて」

 アーリンは気になる岩肌から目を逸らさずマーファを呼ぶ。


「どうしたの?」

「ハフハフ!!」

「……ハクは何食べてるの?」

「え? サソリだけど」

「ハフハフハフハフ!!」

 さっきの絵図を見ていたアーリンが呆れるほど、ハクはこんがり焼きあがったサソリに夢中だ。

「フゥゥゥゥゥゥ!!!」

 味が気になったアーリンが手を伸ばすと、威嚇しながら体で隠す程夢中だ。


「……うまいんだ?」

「うん! ちょっと味見してみたけど、すっごく美味しかったわよ」

 マーファもサソリをベタ褒めだ。

「……ちょっと気になる」

「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」

 ハクが威嚇すればするほど、アーリンはその味が気になる。

「ちょっと味見してこようっと!」

「キャウキャウキャウ!!!」

 マーファの腕の中から脱出してアーリンを妨害しようとハクが暴れている。

「こらハク!! 暴れないの!」

 最近のマーファは、ハクの扱いがうまい。

 何とかして逃れようと暴れるハクを巧みに腕の中に押し留めるのだった。

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