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115話「意思」

「なあ? あの娘怖すぎないか?」

「お前ね……あの耳は飾りじゃないから。声細くしても聞こえてるよ、きっと」

 盾になってくれたアーリンに思わず愚痴ってしまうバンパイア。

 その迂闊な行動を咎めなくてはならないアーリンは、思わずため息交じりになってしまう。

 これ以上話しが進まないと、アーリンでもマーファを抑えることができなくなってしまう。

 その前に肝心の話を聞かせろと促す。

 アーリンの影に隠れながら様子をうかがうと、あれほど警戒していたバンパイアの目を殺気のこもった目で睨むマーファがいる。

 下手な引き延ばしをすれば、いつ暴走するかわからない目を見てバンパイアは咳払いをして話に戻っていく。

「あ~……ゴホン! 先ず我らの栄養補給がそれほど周囲に影響を与えなくなった原因は、この大地の女神さまのお陰でしかない。我らは無意識で動物からしか元気を吸収できなかかった……そもそも元気って何だってレベルの認識でしかなかったわけだが」

「お前らは自分の摂取してる栄養源が何かすらわからなかったわけか」

「ああ。生命力に関係しているだろうとは予想できたが、今度は生命力って具体的になんだって話になるだろう?」

 バンパイアの言わんとすることはわかる。

 アーリンを含めてマーファ以外は頷く。

 この場にいる者の中で、アーリンの言う栄養源という概念すら認識できているものの方が少ない。

 生き物が活動するには、何かを摂取するしかない。

 だが、何故摂取するのかと問われれば、生き物はそういうモノだからと深く考えもしないだろう。

 アーリンすらも普段はそう言ったことに着目することは無かった。


 そう魔物が捕食していた時も魔物としての活動時間を長くするためとしか考えていない。

「女神さまは、それが何なのか解明してくれたのだ」

「なんだったんだ?」

「我らが捕食していたモノ。それは『元気』」

「だから!」

「簡単に言うと、動こう、働こうという意志や意識」

「……」

 簡単に。そう言った言葉の意味を理解できないでいた。

 少なくともタメエモンは、解説を求めるように周囲を見渡していた。

 フレットも意味を理解しようと考えを巡らせているようだが、答えに到達できていない。

 アディの眼も泳いでいる。

 アーリンとマーファだけが、驚愕の表情を浮かべている。


「……意思……精神作用系」

「アーリン!」

 マーファはそれが危険だからとアーリンへ警告を発する。

 だが、アーリンはそのマーファの声を制止して考えを加速させる。

 以前、水の大精霊から聞いた万素の性質。

 その未知の物質を自分なりに解釈して理解した気になっていた。

 その考えが一部でもあっていたとしたら、彼の言うバンパイア一族の能力弱体化も説明できる。

「……お前らは、万素で栄養をまかなっているのか?」

「すべてではないが」

「もしかして……万素が減ってきているのって」

 アーリンの言葉に今度はマーファが冷静さを取り戻す番だ。

 この旅の目的、この世界の重要な構成物質『万素』の減少。世界が破滅しかけているという大精霊の言葉から始まった旅。

 その原因とアーリンの生存確定のために旅に出たのだ。

 そしてその原因の先には、この世界の神様に戦争を仕掛けてきた神様の手先である可能性が高い。

 そう考えていたのは、誰でもないアーリンだ。


 アーリンの持つ魔石から吸い上げられた魔素が、アーリンの全身を覆う。

 フレット以外にも感じられるほど、膨大な闘気が発生していた。

 この先、旅の途中で苦労することがあったとしても、すべてを使い切るつもりでアーリンは最大の戦闘態勢に入っている。

 その闘気はアーリンの殺気となって、バンパイアに注がれていた。

 アーリンの虹色に光る眼が、バンパイアに向けられている。

 間違いなく自分を見ていると、相手がわかるほど。視線に道筋が出来ているのかと感じるほどの強い視線。

「待て! 本当に待ってくれ!!! たぶん違う、違うぞ! きっと!!」

「……何が違う?」

「我らがこの世界にいてもそれほど影響がないことは、女神様に確認している!! 我らが減らしているわけではないんだ!!」

「本当か?」

 さっきまで自分をかばっていた人物と同じ人物なのかと思うぐらい冷たく低い声。

 そして自分の言葉をまるで信用していない、会話する時間すら惜しいとアーリンがにじり寄る姿。

 恐怖そのものだった。


「それは本当よ、変革者さん」

 見かねた大精霊が間に入る。

 騙されているんじゃないかと、疑いの目を向けるアーリン。

「総量が減るほど大した力じゃないのよ。彼らの力」

 言い聞かせるように、大精霊は優しく言葉を紡いでいる。

「それに、ほら。もう一人の私だってわかっているじゃない」

 大地の大精霊が指し示した先にいたのは、もう一人の大精霊ハクだった。

 もし世界の敵がバンパイアであったのなら、ハクの毛は逆立っているのが正しい。

 しかし、いつも通り緊張感もなく身体を丸めてくつろいでいる。

「悪い……早とちりだったか」

 大精霊の言葉と態度を見て、ようやくアーリンの戦闘態勢が解除される。


「ふぅ~! ……本当に怖かった」

 胸を撫でおろしたバンパイア、抗議するようにアーリンとマーファ以外の人物に視線を投げる。

「ん? なんダ、戦わないのか?」

「その様ですね」

 話を理解していないはずの仲間たちも戦闘態勢だったことにバンパイアは、腰を抜かす。

「何……この人たち、……本当に怖い」

 つい数刻前までその怖い人物たちを追い回していたとは思えない感想がこぼれていた。

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