短編 あほう
アホな友人が一方的にやってきてラーメン食って帰る話。
俺には友人がいる。
そいつは一言で言うと、アホだ。
もちろん良い意味でだ。
午後7時を回ったころだ。突然スマホが鳴った。
俺はカップ麺を一度啜ってから、誰からの着信なのかを確認し電話切る。
これでよしと。
再び箸を進めようとしたところ、今度はチャイムがなる。
俺はため息をついて箸を置く。誰からかは予想がつくあのあほうだろう。
「よっ! ラーメン食べに行こうぜ」
「……いままさにラーメン食ってんだけど?」
そう言うと奴は俺の後ろを覗き込む。
「夕食をカップ麺で済ますなんて身体に悪いぞ?」
「ラーメン屋のラーメンはいいんだ?」
「ラーメンは美味いからな!」
「あんたと喋ってると偶に頭痛がすることあるんだけど」
「それは大変だな、大丈夫か?」
あんまり大丈夫じゃないかもしれない。
閑話休題
少々奴はごねたが、俺がカップ麺を分け与える事で奴はラーメン屋は諦めてくれた。
「てか近くにいたなら電話する必要なかったじゃんか」
「いや、前に来る前にアポ取れって言ってたから」
「できたら、もっと早くにそんで家の前に来る前に電話してくれるか?」
「確かにそうだ!」と言いながらカップ麺を啜る奴の顔面を打ちたくなったが、ぐっと堪える。
「まあ、いいや。でまた相談か?」
「お前、まさかエスパーか!?」
ここ最近ずっと同じ相談されてりゃそりゃわかる。
「前も言ったけど、お前ら両思いだから早く付き合ってしまえ」
「ああ、それなんだがお前の言う通り告白したら付き合うことになった」
「相談すること、もうないじゃん。あんた何しに来たの惚気?」
「ああ!惚気に来た!ってのは冗談だから、追い出そうとしないで頼むから!」
「はあ。まあ、いいや。想像はだいたいついた。付き合ったのはいいがどうすれば良いかわからんとか言うやつだろ」
「やっぱりエスパーじゃん」
「ありがち過ぎんだ、このベタやろう」
俺は再びため息をつく。なんで俺はこんなアホの恋愛相談に乗ってやってるんだか。
「頼むよ師匠。俺はこれからどうすりゃあいいんだ!」
「くそめんどくさいな。そんなの適当でいいんだよ適当で」
「師匠!」
ああ、もうだるいな! いい加減追い出そうか? と思ってたら何やら眼を輝かせている。
「そうか! 適当でよかったのか! ありがとう、参考になったわ!」
そう言って奴は、帰っていった。
え、いや、なんかそれはそれで不安なんだけど? 頼むから彼女さんが不快になるような事だけはすんなよ?
なんだかんだで心配になり、俺はスマホを取り出し奴に電話するのであった。
結局電話はその日の内に繋がらず、なんやかんやで上手く行くアホな友人。
恋愛ゲームのお助けキャラてこんな感じに振り回されるんだろなと思った。