手作りの宝箱2
「近くで見るとなんていうか、本当に立派なレモンの木ですね。」
結子がレモンの木を見上げこの時期に珍しい木洩れ陽を右手て遮りながら言った。
「ありふぁとごふぁいます。」
ゆみこはまだトマトをかじったままだ。
「どうぞレモンをひとつお選びください。」
「えっ私がですか?」
その瞬間風がフワッと吹いて結子には1つのレモンが輝いて見えた。
「それではお言葉に甘えてあのレモンをお願いします。」
結子は1つのレモンを指差した。
「かしこまり、どうぞ椅子に腰掛けてトマトを食べていて下さい。」
結子は言われるままに椅子に腰掛けいただきますとトマトをかじった。
「甘くて太陽の匂いがするこのトマト、すごく美味しい。」
結子は二口目を口に運んだ。
こんなに食べ物を味わったのはいつ以来だろうと結子は思った。
「お待たせしました。温かいレモネードをどうぞ。」
「ありがとうございます。ほんと温かい。ところでこのトマトやあちらにある野菜やお米はどうされたんですか?」
結子はレモネードの入ったカップを両手で包んで暖かさを感じながら質問した。
「あのお野菜達は泰造じいちゃんの孫に頂きました、あっ孫の名前聞いてない。」
「泰造じいちゃん?」
「そうです泰造じいちゃんです。」
「その方はどういった方なんですか?」
「その方は泰造じいちゃんで農家のじいちゃんですよ。」
「農家さんなんですね、失礼ですけどその方とのご関係は?」
「泰造じいちゃんとはあちい、あちい夏の日に近くにある公園で出会いました。おぉぉいそこの娘っ子、ちょいとあちいすぎてのぉお前さんが肩からぶら下げてる水筒のもんを少し恵んでくださらんかっていうんで、私の魔法瓶に冷えた麦茶を上げた間柄です。」
ゆみこは一人芝居をしながら言った。
「へぇそうなんだ。」
「そして私がじいちゃんどっから来たんけぇと聞いたらあっちじゃって言うから、あっちは遠いんけぇって聞いたら、まぁまぁ遠いんじゃって答えたから、ほいだらオラのスーパー自転車で送っちゃろ〜となった間柄です。」
ゆみこはまたまた一人芝居で言った。
「はぁそうなんだ。なんであなたもななまってるのかなぁって、いや全然いいんですよ。その泰造じいちゃんの畑は大きいんですか?」
「畑も田んぼもデケェです。」
「そうなんですねぇ。」
「そうなんです。んでもって泰造じいちゃんがゆみこ〜おめぇ野菜っこしっかり食べてっかぁ?って聞くから、キャベツさぁちろっと食べてんでぇって言ったんです。そしたらそんなんじゃぁだみだぁ、おし、オラのとこの野菜ばもって来てやるさけぇしこたましっかりきっかり食べれぇとなって本当は泰造じいちゃんがいつももって来てくれてたんですけど今日は孫が来ました。」
「そうなんですかぁ、うらやま、あっといけないいけない。」
うらやましいと言いかけた結子はレモネードを一口飲んだ。
「わぁなんとも表現しにくいけどものすごく美味しいレモネード、癒されるなぁ。」
その時ゆみこは深く椅子に腰掛け少し空を見上げて目をつぶり、深呼吸を一回して目を開けて喋り出した。
なぜかゆみこの目の色が変わっている。
「結子ちゃんやっとばあちゃんに逢いに来てくれたんだね。嬉しいよ〜」
「はははっ真似るのが上手なんですね。???」
(私、彼女に名前なんて教えたっけ?しかも私のおばあちゃんの事知ってるわけないじゃない。)
結子はゆみこを見つめた。その時にゆみこの目の色が変わっている事に気付いた。
「結子ちゃん嬉しいよ〜何回も何回もばあちゃんは結子ちゃんを呼んだんだから。」
「お、おばあちゃん?なんで私の夢の中の話がわかるの?」