モロの神2
ハッと圭治は目を覚ました。どれくらい眠りについていたのかと圭治は思ったがまだレモネードは運ばれて来てなかった。
短い時間だったようだが圭治は頭がスッキリしていた。
「あ〜ここの空気はなんて気持ちよくて美味しいんだ。」
圭治は背伸びをしながら言った。
「お待ちどうさまでした〜。」
ゆみこは氷の入ったレモネードを運んで来た。圭治はほのかに香るレモネードの香りを嗅いだ。
「あ〜爽やかな香りだな、いただきます。」
圭治はレモネードをゴクリと一口飲んだ。
「あ〜濃厚で美味しいなぁ。それと喉の渇きが潤う。」
圭治はそう言ってゴクゴクとレモネードを飲んだ。
「これも一緒にどうぞ〜。」
ゆみこはそう言って駄菓子が入ったバスケットをテーブルの上に置いた。
「ほぉ〜駄菓子ですか。懐かしいなぁ。」
圭治はバスケットを覗き込んだ。
「はいどうぞ、はじめはこれですよね。」
そう言いながらゆみこはおにぎりせんべいの小さな袋を圭治に手渡した。
「あっはい。」
圭治は少しビックリしたが素直に受け取り袋を開ける前におにぎりせんべいパキッと2つに割った。
「君はいつもそうやって2つ割って半分を必ずボクにくれたね。」
「えっ?」
圭治はゆみこの顔を見た。
ゆみこの眼の色が変わっていた。
「君はお母さんから百円をもらうとそれを握りしめてボクと一緒に駄菓子屋さんへ走って行ったね。ボクは君と駄菓子屋さんに行くのが楽しくてたまらなかった。」
「君は何を言っているんだい?」
圭治が眉をひそめた。
「君はいつもボクと半分に出来るお菓子しか選ばなかった。ポテトスナックやビッグチョコにたこせん。そして僕らは小さな町が見える丘に行き少し危ないけどくぼんだ所で食べたんだ。君は絶対最後にモロッコヨーグルなんだ食べずらかったけど美味しかった。」
圭治はガタッと椅子から立ち上がった。
「モロ、モロなのか?あの丘のくぼみは僕とモロしか知らない場所なんだ。そして最後に食べるモロッコヨーグルもモロと2人の時しか食べなかったんだ。」
ゆみこは眼をつぶりゆっくりと頷いた。
「なぜなんだモロ!なぜ卓也を襲ったんだ!」
「やっぱりそう思っていたか。私はその事が気がかりでたまらなかった。」
「違うというのかい?」
「ああ、信じてほしい。私はあの日から君を守ると約束したんだよ。」
「約束?誰としたんだ。」
「君のお父さんだよ。私は仔犬の頃、捨てられていてもう意識失いかけていた。雨が凄く冷たくてね。一つの足音がつかずいて来たどまたその足音は遠くなって行った。とても暗くてね、私はもうダメだと思って目を閉じた。するとその足音は戻って来て私を抱き上げコートの中に私を包んでくれた。あの時の暖かさは今でも決して忘れない。」
「・・・」
「その後、君のお父さんは私を病院に連れて行ってくれて私は何とか回復した。しかし私は人間を信じていなかった。お父さんはそのまま私を家に連れて帰って君と対面したんだ。」
「ああ、その日の事は覚えているよ。」
「君は私を見た途端に小躍りするほど喜んでくれた。君達家族は本当に優しかった。しかし私はその時点ではまだ人間を信用していなかった。どうせすぐに飽き邪魔になり捨てる。私はいつ捨てられてもいいように覚悟は決めていたよ。」
「モロ・・・」
「でも君が6歳で小学校初めての夏休みに泊まりがけで海水浴に出かけた時、君は注意を聞かずに高い波のある方へと黙って行った。みんなが探したが見つからない。あの時初めて人間からお願いをされた 点 君のお母さん泣きながら君を探して欲しいと私は消えかけている君の匂いを感じて信じていない人間の為に走り出していた。
自分でもよくわからないが、岩に必死にしがみつく君を夢中で助けていた。
その後、初めて人間から感謝を言われた。そして君をずっと守って欲しいほお願いされた。何もかも初めてだったよ、感謝されお礼を言われお願いされそして必要とされた 。」
「そうだったのか。」
「それから私は君達の本当の家族になったんだ。」
圭治は椅子にもたれかかり、片手で目を覆い隠した。