予定だらけのスケジュール帳2
「ガス欠ですな!」
その声に直子はハッと目を開けた。すると壁の上から顔を出している、ゆみこと目があった。
「とぉっ!あたっ。」
ドスンとした音が聞こえた。多分ゆみこは脚立から飛び降りたが着地に失敗したようだ。
門から少し恥ずかしそうに顔半分だけゆみこは出していた。
「あなたこの家の人?このあたりにガソリンスタンドはあるかしら?」
「ガソリンスタンド~ありますよ。ここをず~とまっすぐ5キロ位行ったところに
おじいちゃんがやってるガソリンスタンドがあります。」
「ご、5キロ・・・」
直子の顔が引きつった。
「でもおじいちゃんは耳が悪いから大きな声で話さないと聞こえませんよ。よく大工のおじちゃんがジィちゃん俺の車はディーゼル車じゃないからそれはいかん、いかんって言ってるのに、はぁ~ばあさんは漬け物をつけてるからここには来られんよ~昔は綺麗やったんやで~って違う話しますから、大工のおじちゃんが違う違うジィちゃん・・・」
「あの、よろしいかしら。ガソリンスタンドのおじいさんの耳が遠いのはわかりました。
この家に車、それか予備のガソリンはありませんの?」
「車ですか?自慢じゃないですがこの家に車はございません。なぜなら私は免許を持ってないからです。でもね、私はには黄色い自転車があるから何処へでもいけるんですよ~、この前なんてそのガソリンスタンドの横にある古本屋さんに行ったんです。私はその本屋さんの常連さん。おばあちゃんがしてるんですけど、おばあちゃんが「あんたはいつも来てくれるけど一回も買ったことないね~それでもようきなさった。おはぎでも食べんかぇ」って言ってくれるんです。」
「ちょ、ちょっと。」
「そのおばあちゃんがのおはぎが美味しくて~。おばあちゃん、このおはぎ余ってるなら持って帰っていい?ってもらって来たんですぅ、もう楽しみで楽しみで今日の晩ごはんの後にでも食べようかな?よし食べよう!」
「はぁ、わかりました。ここにはガソリンはないんですね。どうしようかしら・・・」
直子が携帯をポケットから出そうとした時。
「レモネードはいかがですか?」
ゆみこが直子に言った。
「レモネード?」
直子はゆみこを見るとゆみこは両手の人差し指を上に上げてレモンの木を教えた。
「まぁ、素晴らしいレモンの木。」
思わず直子が口にすほどレモンの木は大きく立派でしかも
綺麗な黄色い実を数え切れないほどつけている。
「入り口はあちらになっております。さぁどうぞ、どうぞ。」
ゆみこの手招きに直子はなぜか携帯をポケットに直してゆみこの後を歩い小さな門をくぐった。
そのレモンの木は近くで見てもやはり見事で美しかった。
「本当に見事なレモンの木ですね。」
「ありがとうございます。私もそう思います。ではではお一つ、レモンを選んで下さいませ。」
「えっ私が選ぶの?」
「そうです。どうぞ、どうぞ~。」
直子はゆみこに促されてレモンの木に近寄りレモンの実を見た。どれもすごく立派である。
直子はレモンの木に近づくと小鳥たりがハミングしているのに気づいた。
そのハミングに少し微笑むとなぜか1つのレモンの実が輝いて見えた。
「じゃぁ、あれをお願いします。」
そう言って直子は振り向くと、もうゆみこは脚立上に登っていて
直子の選んだレモンの実を取っていた最初から知っているかのように。
「ではでは、こちらに座ってお待ち下さい。レモネードを作って持って来ますから。」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。」
直子は椅子にもたれかかるとレモンの木を眺めた。
レモンの枝や葉っぱの間から溢れる太陽の光が直子を指していた。
また小鳥達がハミングを始めその音色を直子は黙って聞いていた。